68 3曲目
3曲目の楽曲制作に取り掛かった。
実際のやり方はこうだ。
ルーパーで石森の作ったドラム音を鳴らし、でたらめにコードを弾く。
そこから何となく浮かんでくるメロディと言葉を録音した上でノートの余白に書き留める。
先にメロディを考えたり歌詞を考えたりとルーパーを使った色々な方法を試したが、これが一番作りやすい。
1作目の"Aitai"ではシンプルに雨音に会いたいという気持ちを歌った。
2作目の"Strong in the rain"は雨音への応援ソング。
そして今作では雨音に対して僕が日々抱いている思いを綴ることにした。
まず最初に浮かんできたのはサビのメロディと詞だ。
まだ思いは 届かないかもしれないけれど
伝え続けたい
同じ学校にいながら何度かすれ違う程度。唯一目が合ったのは横浜の握手会の時―
それでも、あの去年の高校受験の時の心奪われたその日から―
彼女のことを思わない日は1度たりともない。
この歌声が あなたの心に響く日が
来ること信じて 歌い続けたい
これにコードをより違和感無いものに当て直せばサビはOKだ。
今回は歌いやすい方が良いという理由でキーはCで使えるコードを探した。
Em Am C Em Am Em Dm C
これがサビのコード進行。
続いてAメロに着手した。歌詞はやっぱり雨音に対する気持ちだ。
手を伸ばしてみても 届かない存在だって分かっている
それでもどこかで 期待をしてしまう自分もいる
今の僕には高嶺の花過ぎてとても届かない。
だけど、登校時の通学路、休憩時間の渡り廊下、放課後の階段―
雨音が僕を見つけて笑顔になる―この場面を今まで何度頭の中で描いたことだろう。
この夏休みはやりたい事を存分にやって過ごした。
部活、アルバイト、エウレカの推し活、時間はあっという間に過ぎて行く。
その合間で曲作りを進め、夏休みの終わる2日前にこの3曲目は完成した。
それでもルーパーで録音したものを再生してみると、ギター音が変な所で途切れる、各パートの歌い出しが楽器とずれていることが分かった。
結局その修正のために兄貴に1日時間を作ってもらい、PC上のDAWでミキシングの最終修正をしてもらった。
そして夏休みの最終日。この日は今まで全くしなかった夏休みの課題を死に物狂いでやっていた。
夏休みが明け、初日の部活動で石森に3作目の楽曲とその手書きの歌詞を渡した。
「いや、あれは仮タイトルって意味でつけたんだけど・・・」
明らかに困惑している石森。
きっとそういう反応をするだろうと思っていた。
でもタイトルはこのままでいいんだ。
何度も書きなぐっては
破り捨てた言葉たち
どんなタイトルにしようか
あれこれ考えている間に
街は黄昏時
これがBメロの歌詞。
この曲にこれ以上のタイトルは見つからない。
石森がドラム音源につけた"No Title"がそのままこの3作目の楽曲のタイトルとなった。
作中のToh Souma名義の楽曲「No Title」のサンプル曲&ギターコード譜はこちらです。
music track 「No Title」
サンプル曲(知人にサンプル曲をアコギ演奏で歌ってもらいました)
http://musictrack.jp/musics/98372