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Close to You  作者: Tohma
51/102

49 アウトドア

 高1の夏休み直前を迎えた。


僕の所属する軽音楽部では、この時期に週末の2日間で合宿を行うことが恒例(こうれい)行事となっていた。


合宿先には海か山のどちらかに行くことが慣例化されていて、去年は海だったので、今年は山に決まり比較的近くの山の(ふもと)のオートキャンプ場へ行くこととなった。


 僕は今、軽音楽部の部員達とともにバスでその合宿先へ向かう最中(さなか)だ。


バスに揺られながら1時間30分。この間、部員達はスマホで音楽を聴いたり、ゲームをしたり、動画を視聴したりして暇をつぶしていた。


 僕はというと先週末に見逃したTV番組「惑星エウレカ」の配信を観ていた。偶然にも惑星エウレカでも番組の内容がキャンプだった。



 「本日、諸君にはカレーを作る任務を与える。特に辛いやつをだ。まずはあのお店で食材を調達して来てくれ」


ロケバスの中でそう話すのは1期生の済田(すみた) 梨央(りお)だ。エウレカ1のアウトドア通として知られている。他の参加メンバーは、2期生の前沢(まえさわ) 千尋(ちひろ)、3期生の小祝(こいわい) 陽向(ひなた)雫井(しずくい) 詩帆(しほ)、そして雨音だ。


 済田1人が迷彩服を着ていて、それ以外のメンバーはジーンズにパーカーという出で立ちである。


「君達3期生は初めてなので、何か分からないことがあれば、鍋奉行(ねべぶぎょう)異名(いみょう)を持つこの前沢君に聞きたまえ、それではレッツゴー」


 4人は済田に押し出されるようにロケバスから飛び出し、目の前のスーパーへと入って行った」



「梨央さんってあんな隊長っぽい人でしたっけ?」

とは雫井。


「ううん、あたし達が加入した頃は普通にアイドルしてたよ。半年ぐらい前かな。メンバーで今回みたいなキャンプをしたら、梨央さん突然リーダーシップを発揮しちゃって・・・それ以来あんなキャラになっちゃった」

と前沢は返す。


「今まで眠っていたものが覚醒(かくせい)しちゃったってやつですか。アウトドアの得意なアイドルって今まであまり居なかったから貴重な存在ですね」

と雨音が続く。雨音はなんだか楽しそうだ。日々多忙なスケジュールをこなしているので、こういう自然の中で過ごすのが気分転換になっているのだろう。


「梨央さんはいったいどこに向かって行こうとしているんでしょうね。まあ正統派を目指しても芽は出そうになさそうですけどw」

と舌を出す小祝。他の3人は何とも言えないような顔をしている。小祝よ、そんな憎まれ口を叩いて大丈夫なのか。このオンエアは済田だって観るだろうに。


「それじゃあ、各自買い物カゴを持って好みの食材を買うわよ。1人5千円以内。どさくさに(まぎ)れて自分用のお菓子なんて買っちゃダメよ」


前沢は説明しながら小祝を指差す。小祝はカメラの前でチェッと悔しそうに指を鳴らしている。


「それとこれは助言だけど、梨央さんは無類(むるい)の辛い物好きなの。できるだけピリ辛のカレーを目指すといいわ・・・と言うのも前回のキャンプでもカレーを作ったけど、水沢(みずさわ) (ゆい)の大量に生クリームを入れた激甘カレーを梨央さんが食べて、それが余程口に合わなかったみたいで体調を崩して一週間くらい寝込んじゃったのよ」


確かに去年そんな企画を観たような気がする。済田は水沢の作ったカレーを食べた時にアイドルらしからぬものすごい形相(ぎょうそう)をしていたと思う。


「その反動からか身近にいるあたしにやれ激辛鍋を作れだとか激辛料理を色々注文してくるようになったのよ。おかげで料理の腕は上がったけどね」


 済田と前沢はともに都内の芸能コースのある某高校に通っていて年齢も1才差の先輩と後輩という間柄なのである。そういう理由で済田は前沢に何かと言い易いのだろう。


「それでは3期生の皆さん! 健闘を祈ります」


前沢が済田の物真似で敬礼をし、にっこりと笑うと小祝、雫井、雨音も同じようににっこり笑い敬礼した。


 そして4人は食材を求めて店の自動ドアの奥へと入って行った。

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