47 楽曲制作2
帰宅した僕は自室に入るや否やケースからアコギを取り出し、楽曲制作に取り掛かった。
まずは6本の弦のチューニング。クリップ式の電子チューナーをギターヘッドに取付け、ボ~ンと1弦目から鳴らしてゆく。
もう何10回も行っている作業なのでだいぶ手慣れたものになっていた。
チューニングを10分程で終えると、サビの出来ている部分の歌詞を歌いながら手元に置いたコードブックを見て1音1音ふさわしいコードを探し当てていった。夕食まで家には僕以外誰もいないので、誰に遠慮することなく、ギターを弾きながら大声で歌える。
音楽を作る上で快適な環境、状況ではあるが、このコードを探し当てるという孤独で地道な作業は15分もすればだんだん飽きてくる。
合間にスマホで人気曲のコード表を探して弾き語りをする等息抜きを入れながら、なんとか持続させた。
そして2時間後にようやくこの曲のキーはDにすれば、サビの歌詞とメロディ、両方に合うことが分かった。
その後はDのキーで使えるコードを組み合わせ、コード進行を生成G→A→F#m7→Bm→A→D→D7、そこに合うメロディ、歌詞をつなぎ合わせてサビの残りを完成させた。
作詞する上での必携アイテムは、国語辞典、英和辞典、スマホだ。日本語でこんな表現を使いたいなという時はまず国語辞典で調べて、その意味や例文などをヒントにメロディで制約された歌詞を埋めていく。
国語辞典で調べきれない時はスマホでのネット検索を補足的に使う。
歌詞に英語を使いたい場合は逆にスマホの方を先に使う。例えば日本語で"何も残らないだろう"という文章を英文にしたい時はキーワードに"何も残らないだろう_英訳"で検索をかければ、Nothing will remainと候補が出てくるので手軽で早い。
英語辞典は英単語の意味をより詳しく知りたい時やネットで出てきた英文が正しいか等さらに調べたい時に活用している。
同様のやり方で翌日の土曜日にAメロも作った。コード進行A→D→Em7→A→Em7→A…。
イントロについては最近のJ-POPの流行で極端に短かったり、無かったりするらしいので今回は作らないことにした。
そして最後に作ったのがBメロなのだが、これに思いがけずてこずった。
最初はAメロ、サビと同様にDのキーで使えるコードで作曲していたが、これではあまりにAメロの続きといった感じでサビに至るまでの間の盛り上がりに欠けてしまうのだ。
そのため曲の雰囲気がガラッと変わるメロディを試行錯誤の末、なんとか作ったのだがそうするとDのキーで適当なコードが見つからないというジレンマに陥ってしまった。
そうこうしている内に日曜日の午後を迎えた。
このままでは埒が明かない。困った僕は奥の手を使うことにした。
こういう専門的な話ならOKだよな。
自室を出た僕は真向かいにある兄貴の部屋のドアをノックした。
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