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Close to You  作者: Tohma
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38 樹(ITSUKI)

 最終決戦の最後の歌手である志波 樹がステージに立ち、マイクを構えた。


その顔には(わず)かだが笑みがこぼれている。


雨音が98.999点を出している現時点で決して余裕など無いはずだ。


きっと志波は嬉しいのだろう。過去2大会では志波が断トツで1位、歌においていわば無双と言っても過言ではないだろう。


そこに雨音と葛巻 楓、志波と互角かそれ以上の逸材(いつざい)が今回は現れた。


ライバルが強敵であればあるほど自分もボーカリストとしてさらに成長でき、さらなる高みへと運んでくれる。


志波 樹の人となりを考えるとそれがこの笑みへとつながるようだ。



「それでは頂いたメールについて紹介してゆきます。ラジオネーム、緑の街に舞い降りてみたいさん」


高校受験の時、金曜日の夜はエウレカネットワークを聴くのが楽しみになっていた。


翌日は学校が休みなので、遅くまで起きていられるというのもあって、長い夜を満喫(まんきつ)できるこの時間帯がまさに至福のひとときだった。


このラジオ番組では毎回エウレカのメンバーが交代でパーソナリティを担当する。


大抵は3,4人のメンバーが出演し、最近あった出来事やエウレカのイベント告知を

わいわいと(にぎ)やかに行うのだが、


2ケ月くらい前のある時、志波がただ一人で担当したことがあった。



「樹さん、はじめまして。私は都内に住む高2女子です。英語がとても好きなので部活は英語サークルに所属しています。


今度都内で開催される英語スピーチ大会に初めて部を代表して出場することになりました。けれど私はとても緊張しいで人前に出ることが苦手で、上手くできるか正直自信が無いです。

どうしたら樹さんみたいに大勢の人の前で堂々とパフォーマンスできますか?」


志波は数秒の沈黙の後に口を開いた。


「メールありがとうございます。英語のスピーチ大会ですか、すごいですね! 人前で何かを披露するのはやっぱり緊張でドキドキしますよね」


志波は続ける。


「あいにく英語のスピーチ経験が無いので、納得してもらえるアドバイスになるか分からないけれど、英語を歌に置き換えてみて私の話をしますね」


志波はエウレカの中でもしっかりした姉御(あねご)タイプなので、こういう助言を求められるメールが多い。


根っからの真面目な性格のため、毎回メール主の立場に立って真摯(しんし)に答えている。

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