表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Close to You  作者: Tohma
4/102

2 名前、そして音楽

 僕の名前、相馬そうま とうには、何度か名付けた両親を恨んだことがある。


音だけだと"走馬灯"と聞こえるからだ。


 小学校の頃からこの名前で授業中にさんざん周りからいじられた。中学3年の国語のテスト中でなんか

―これまでの出来事がそうまとうのようにかけ巡る―


なんてどうぞ僕をいじってくださいと言わんばかりの漢字の問題が出てくるものだから、その時はクラスメイト達の失笑に耐えなければいけなかった。


 そんな僕の名前は当然、高校の初日のホームルームでもクラスメイト達にえ~やアハハという声とともに紹介された。


でもこの高校で名前のことでみんなに笑われたりすることがさほど嫌ではなかった。


 生徒を介して巡り巡り、雨音に自分の存在を知ってもらえるのではないかと思ったからだ。


 雨音のいるクラスと合同の授業なんかがもしあるならば、そこで自分の名前が呼ばれる、そして雨音がクスッとでも笑ってくれるのなら、これ以上の幸せはないとさえ思っていた。


 朝起きて雨音に会えることを願い、会えなくても下校時に明日は会えますようにと祈る―


そんな繰り返しの高校ライフは特に何が起こるわけでもなくても、雨音のおかげで満たされたものになっていた。


 学校で会えなくてもエウレカのテレビやラジオでのレギュラー番組に雨音が出演する時があった。

雨音のSNSも毎日欠かさずにチェックした。


 テレビやネットで彼女を観る度に、こんなに有名な人がこんなに近くにいるなんて、とやっぱり思ってしまう。



 まあこんな感じで雨音の強烈な推し活動を行っているが、もう1つ高校に入学してから始動したことがあった。


それは、音楽制作(作詞と作曲)だった。


 僕には4つ年上の兄貴がいた。兄貴は今の専門学校でも学んでいるくらい音楽にかなり詳しかったが、新しいものを買うからとアコギのお下がりをもらった。


2,3年くらい使い込まれていて、ギター本体に傷やネックの歪みはあったが、演奏には十分な代物しろもののようだった。


 まずはこのアコギで曲を作り、それに作詞してみることにした。


 なぜ高校に入って音楽を始めるのか、それにはやっぱり雨音の影響が大きかった。


 中3の受験勉強の合間に映像で観た雨音の歌やダンスに頑張っている姿、自らも高校に入ったら勉強以外にも何かに打ち込んでみたい、雨音に対する気持ちを何か形にしたい、とその時強く感じたからだった。


 そんな理由で高校での部活は軽音楽部に入部した。


ギターについての知識はゼロ、チューニングの仕方やコードの弾き方など、兄貴に聞いてもよかったが、全く最初からいろいろ聞くと煙たがられそうだったので止めた。


 入部してみると案の定、1年生には自分と同じように高校で初めてギターに触ったという人達がほとんどで彼等と一緒にまずはギターの弾き方から無理なく始めてみることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ