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Close to You  作者: Tohma
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1 雨音(AMANE)

―彼女の足音は雨音の調べ―


 現役のアイドルが同じ高校のしかも同学年だなんて、なんて夢のような話だと思った。


森丘もりおか 綾音あやね


 雨音(AMANE)という芸名で国民的アイドルグループ、エウレカ1984に1年前から在籍している。


それ以前も宮城県内では地元のアイドルとして活動していた。


 3ケ月前の冬、地元のテレビ局で彼女の特集番組が放送されたのだが、その時の彼女を今でも忘れられない・・・


 小学5年生から始めた地元のアイドル、そして念願だったエウレカのオーディションに合格するまでの軌跡―


歌やダンスのレッスン、泣いたり笑ったりと彼女のひたむきで真っ直ぐな姿が画面越しではあった

が、今でも鮮明に憶えている。


 僕はその時に高校受験を控えていたけれど、雨音の事で勉強どころじゃなかった。


あの番組は、きっと県内の同年代の人達なら誰もが観ていたはず。


僕の居た中学校では、嫉妬に近い感情からか穿うがった見方をする人も居たけれど、


僕は彼女の同年代であんなに一生懸命な姿に無条件で心を撃ち抜かれた。


もちろん応援したし、好意も抱いた。


 4月から県立仙宮せんぐう高校に合格できた時は2重に嬉しかった。


合格発表のプレートに自分の受験番号があったこと、そしてその後に中学のクラスメイトからの情報で雨音も仙宮高に合格していたからだ。


 確かに前述の雨音の特集番組でも、アイドルと勉強の両立で大変ですけれど頑張ります、みたいな

ことをインタビューで話していた。



 初めて彼女を間近に見たのは入学式の時だった。


上級生や保護者のたくさんの視線を集めながら、彼女は終始、凛としていた。僕は彼女に一度視線を


定めてしまったら、そのまま動くことができなかった。理性はやめろ、あまりジロジロ見るなとはや


し立てるのだが、本能はかたくなに抵抗してしまう。そんな経験初めてだったので、衝撃だっ


た。


それだけ彼女の容姿、たたずまいは完璧だった。今までの誰よりも・・・



 高校に入学して2週間が経った。


 朝起きて一番に思うこと―


 今日は雨音に会えるだろうか―


 あいにく彼女と同じクラスではなかったが、これまで学校で1度だけすれ違うことができた。


朝のホームルームが終わり、次の体育の授業のために教室を出たところで―


彼女はクラスメイトらしき女子と仲良く話しながらこちらに歩いて来た。


テレビで観ていたあの雨音が、こんなに近くに―


彼女を発見した瞬間、心臓の鼓動が悲鳴に近い音を立て、だんだんと加速する。


(やばい、見るな見るな・・・)


 彼女から目を逸らす瞬間、彼女がこちらを見る―


ことなど、あるはずもなかった。それでもあの雨音をあんなに直ぐ近くで見れただけでも自分の心は十分に満たされた。


その日は、それ以外のことはほとんど記憶にない。


それだけ自分の心に彼女のイメージが深く刻み込まれた。

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