24 ラジオの時間
「皆さん、こんにちは。エウレカ1984です。本日の担当は私、1期生の譜代 美穂と」
「2期生の矢巾はるかです。そして、」
「3期生の頼旗すずです」
「この3人でお届けします。最後まで聴いてくださいね」
番組がCMに入る。
この3人の中で特に身近に感じるメンバーは、矢巾はるかだ。彼女は華巻あおいや喜多上 渚と仲が良く、一緒にバラエティ番組で活躍しているイメージがある。
先日の握手会でも矢巾のエウレカードのおかげで難局を乗り切ることができた。
譜代と頼旗は、TV出演等の表に出てくるタイプというよりはエウレカを影で支えているイメージだ。ともに自身の公式アカウントのSNSで活動を熱心に行っていて、撮影の合間のメンバーの様子だとかをそこで報告している。
譜代は以前、宮内 理沙の楽屋で彼女の寝ている様子をSNSに勝手にアップして本人に怒られていたのが印象的だ。その時の宮内ファンの反応はというと対照的に彼女の貴重なオフショットに歓喜し、譜代にとても感謝していた。
頼旗もSNS用の写真を撮るのがお好きなようで、よく雨音や喜多上達同期と私服で一緒にいる姿が公開されている。
ラジオのライブ中継に話を戻すと、CMが流れている間、譜代達3人でスタジオをバックに写真を撮っていて、なんだか楽しそうだ。
CMが開け、譜代が番組ディレクターのキューに気づき、慌ててマイクをONにする。他の2人も急いで自分の席に戻る。こういう彼女達の素の表情が見れるのもラジオでの生放送の醍醐味だ。
「それではエウレカネットワーク始まります!本日の放送内容ですが、これまでお伝えしてきたエウレカ カラオケ大会の関連企画です。今回で3回目となるこの大会がいよいよ来週の日曜日に生中継で開催されます。はるかとすずは上位5名を予想して来ましたか?」
「はい!」
「もちろんです」
エウレカのメンバーによるカラオケ大会が不定期イベントとして開催されるそうだ。開催時期は毎回、エウレカのプロデューサーである一ノ瀬 騎械氏の一存で決まるようだ。運営側がメンバーの歌唱力を調査するのが狙いで、この大会で上位5位以内に入ると次のシングル曲でメインボーカルを任せられる。そのためメンバーは皆、この大会への意気込みが半端ないらしい。
雨音を含めた3期生は今回が初参加となる。
「リスナーの皆さんも上位5名を予想し、公式HPにご応募ください。1位から5位まで全て的中された方にはもれなくエウレカの限定グッズをお送りします」
僕がエウレカにのめり込んだのは、1年前の夏に雨音が加入して以降なので、1回目と2回目の大会はリアルタイムで観ていなかったし、もちろん上位5名の予想もしなかった。
メンバーも大勢いて厳しいとは思うが、なんとか雨音には上位5位以内に入って欲しい。
「参考までに昨年の上位5名とその時のカラオケの得点をランキング形式でおさらいしますね」
譜代は滑舌がよく、声がとても落ち着いていて、夜に似合う。聴いているととても心地良い。
「第5位 1期生の西根 萌夏 91点、第4位 2期生の久坂 依楽 92点、第3位 1期生の宮内 理沙 93点、第2位 1期生の透野 舞衣 95点、そして第1位は・・・」
まあ、あの人だよな。それもダントツで。
「第1位 1期生の志波 樹 98点」
「5人の内、4人が1期生ですか・・・。1期の壁は高いですね」
頼旗は、前回は1期生がほぼ独占していた状況について溜息をつきながらつぶやいた。
「今回は3期が参加するからどうなるか分からないわよ」
矢巾の言う通りだ。3期には1年前のオーディションの時から歌唱力に定評がある雨音や葛巻 楓がいる。彼女達なら志波、透野、宮内達と互角に戦えるのではないだろうか。いや、そのはずだ。