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Close to You  作者: Tohma
24/102

22 帰りのバスの中にて

 僕は、仙台に向かう高速バスの中にいた。


まだ興奮が収まらない。あの雨音と初めて目が合った。天に昇るような気持ちとはこういうことなのだろう。


雨音との握手会でのやり取りが、脳内で何度もリピートされる・・・



 ドアを開くと、雨音は一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐにいつもの優しい顔に戻った。僕のことを知っているのだろうか。いやまさか。


「こんにちは」


「こんにちは」


「今日は、来てくださってありがとうございます」


「会えて嬉しいです」


手を差し出すと、両手で包み込むように優しく握手をしてくれた。先程の喜多上との握手で痛めた手をまるで(いや)してくれているかのようだ。


「トーマと言います。雨音さんをずっと応援しています」


「ありがとうございます。今日はどちらから」


「と、東京です」


雨音はまさか僕が同じ高校に通っているとは思っていないだろう。後日、学校で会って警戒されても嫌だし・・・


この場で同じ高校に通っているなんて言ったら、物理的にも心理的にも途端に距離をおかれる可能性もある。とにかくファンであること、そしていつか「夕立」でエウレカライブのセンターに立つ姿を見たいと伝えた。


「そんなに見て考えてくれていたなんて、すごく嬉しいです。これからも頑張りますので、応援よろしくお願いします」



そして、1分が経過した。


はがし役の人に(うなが)されて出口のドアノブに手をかけた時、自分でも何であんなことを言ったのか理解できなかったが、言わずにはいられなかった。


振り返って、僕はこう言った。


「僕、雨音さんの頑張っている姿に感化されて、今曲を作っているんです!そのほとんどが雨音さんに(ささ)げる歌です!いつか聴いてください!」


雨音は驚いていたが、すぐに笑顔に変わり、


「ぜひ、機会があれば」


「約束ですよ!」


そして僕は、はがし役の人に押し出されるように雨音ブースから退出した。



 最後に雨音に伝えた事は・・・


まあ、このくらいなら言っても良いだろう。これで良かったんだ。僕は自分に何度も言い聞かせた。(ただ)し、曲はまだ1曲しか完成していないが・・・


約束したんだ。彼女に捧げる曲をこれからどんどん作ろう。


バスは仙台駅に到着した。

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