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Close to You  作者: Tohma
20/102

18 待ち望んだ残り1枚

 思った通りに上手くいった。いかにもエウレカードのコレクターといった20~30代の男の人は、(こころよ)くカードの交換に応じてくれた。


1期生の譜代と2期生の釜井の2枚で2期生の矢巾1枚だから向こうにとってもお得な交換をしたと思っているだろう。


 僕は2度と同じ過ちは繰り返すまいと今年度の矢巾のエウレカードであることを何度も確認した。そして、再び輪になってカード交換をしている人達の所へと戻って来た。


あの男の子の手札を後ろから覗き込むと、まだ雨音のカード1枚を所持したままだった。僕はその男の子の右隣りのさらに右隣りに掛け声とともに飛び込んだ。男の子のすぐ右隣りだと雨音カードの受け渡しに間に合わないかもしれない。移動の時間的な余裕を稼ぐための行動だった。


そしてカードをもらう。3期の葛巻(くずまき) (かえで)だった。僕は左隣りの人に矢巾はるかカードを渡すやいなや、直ぐに輪を抜けて、例の男の子の左隣りに入った。


 カードが渡る。ついに待望の雨音カードが僕の手中にやって来た。葛巻カードを左隣りの人に渡し、輪を抜けた。



 本当に間違いないだろうな。嬉しさを一旦よそに預けてカードを天井にかざし、入念にチェックした。間違いない、今年度の雨音カードだ。


大げさな言い方かもしれないけれど、しばらく会っていなかった初恋の人に会ったような感覚だった。


(ふう、疲れた・・・)


 僕はまた、交換所のベンチに腰を下ろした。目的のカードを手に入れるのにずいぶんと動き回った。やっとカードを揃えた達成感がじわじわとこみ上げてくる。


内ポケットに入れていた残りのカードを取り出して、現在所持しているカード全部を眺める。



 雨音カードが3枚、喜多上カード3枚。



 僕に1つの考えが浮かんだ。


当初は雨音とだけ握手できればいいと思っていたが、結果的に喜多上 渚とも握手できる権利を得ているのである。


ブースを見るとどちらも待ち時間が45分。2人と握手できる時間は十分にある。


最初に喜多上と握手してその後に雨音と握手しよう。1分間の握手会がどんな感じか知っておきたい。喜多上には悪いが、予行練習の相手になってもらおう。


でもそうか・・・あの喜多上と今から握手するのか。


(喜び多くて気分上々!!)


 さっきのフリートークのような明るくて面白い人ならきっと楽しめるに違いない。僕は気分アゲアゲで喜多上のブースの最後列に並んだ。

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