10 会場到着
バスは東京駅に到着した。
高速バスで仙台から直接会場である横浜まで行くこともできたが、その途中で知り合いに会ったら気まずいということ、そして何よりせっかく東京を通るのなら高層ビルやおしゃれな建物が立ち並ぶ都会の雰囲気を堪能したいという理由で東京に降り立った。
人でごった返す東京駅の改札を潜り抜け、横浜に向かう電車に乗り込む。
電車の窓から見える高層ビルの光景は、何度見ても高揚感を覚える。
地方に住んでいる者にとって、東京はやっぱり憧れだ。大学に進学したらこっちで暮らそうかな。
途中の駅ビルで昼食を済ませ、電車の中でまたエウレカの曲を聴きながら横浜駅に向かった。
握手会会場に到着するとまるで混雑時の空港の搭乗手続き所のようにたくさんの人が複数の列になって入口で並んでいる。いかにもガチそうなファンから友達同士で連れ立ってやって来たファン、兄弟姉妹、親子、家族連れ等いろんな人達が集まっている。僕はここでこそ知り合いがいても気づかれぬように帽子を目深にかぶり、1つの列に並んだ。
エウレカードを1枚でも持っていれば、それが入場券代わりになる。列に並んで20分程待って、駅の改札みたいなところで持ち物検査を行い、カードをかざして会場の中へと入った。
会場は真ん中にステージがあり、7つの握手会ブースがその周りを取り囲んでいる構造になっていた。
入場者が全員会場に入ったのをスタッフが確認すると、アナウンスが流れた。
「本日は握手会イベントにお集まり頂き、ありがとうございます。まもなく開始しますので、ステージ前までお進みください」
スタッフに誘導されながら、大群に飲み込まれたままステージ前に到着した。エウレカファンの群衆の中、僕は3列目の端の場所に落ち着いた。いよいよ始まる。
眩しいくらい明るかった会場の照明が一斉に消え、皆静まり返る中、唯一照明の光がこぼれているステージの幕がゆっくりと上がっていった。