9 曲の解説
1曲目の「生き急いだ頃」はエウレカの存在が世間に広まったターニングポイントの曲と言っていい。終始アップテンポでライブでは1曲目に歌われることが多い。
歌詞からは、10代の少女達の勢いや葛藤が感じられる曲である。
暗闇に何度も飲み込まれそうになる
それでも必死にもがいて前へ進みんだ
僕は特にこの部分が気に入っている。どうしたらアイドルとして輝けるのか、当時のエウレカのメンバー達の心情がそのまま曲になっているように感じられるからだ。
2曲目の「息吹き」。エウレカの春ソングといえば、この曲である。騎械氏の解説によれば、アイドルの成長とは花の一生に似ているとのこと。
メンバー達がアイドルの階段を駆け上がっていく過程を冬の間に眠っていた種が、春に芽を出し、そして花を咲かせるまでの過程になぞらえて、1曲に仕上げている。
ライブDVDでこの曲のダンスを観ると、確かに花を表現していて、曲、歌詞、ダンス、演出が見る側に向かって統一させていることが分かる。
とてもポップな曲で、聴くとテンションが上がる。
3曲目は「カナカナ」。デビューして間もない頃のファンの間の人気曲である。アイドルとしてまだどういう方向に向かっていくのか試行錯誤していたであろうことがこの曲でもうかがえる。
タイトルはカナカナと鳴くのでかなかなぜみとも呼ばれている蜩を指している。自分を蜩に例えた主人公の目線で物語が進行する。タイトルにかけて所々で「~かな?」と語尾が付き、ラップの韻を踏んでいるような乗りを作り出している。
4曲目の「青と白で構成された夏」は、定番の夏ソング。夏に開催されるライブでは、必ずといっていいくらいセットリストに中盤あたりで入っているアップビートチューン。PVが沖縄で撮影されていて、メンバー達が波打ち際ではしゃいでいる姿が印象深い。
5曲目の「アドレッセンス」は「生き急いだ頃」と並ぶエウレカの代表曲で、この曲により人気を不動のものとした。
序盤から終わりまで疾走感の溢れる曲で、昨年の9月に行われたテレビの音楽番組では日本の四季の美しい景色をバックにメンバー達がステージ狭しと駆け回って踊る姿は圧巻で、ファンの間で伝説となっている。雨音もエウレカに加入したばかりであったが、最後列で選抜入りしており、彼女のキレッキレのダンスが映されてあの子は誰だとネットで話題になっていた。
あの頃は夢や希望が宇宙のように広がっていた
脇目も振らず、夢中になって過ごした日々
目を閉じて聴くとシンセの音とともに入ってくる言葉が心地良い。まさにエウレカを代表する名曲だと思う。
6曲目の「あいまい・ME」。王道のアイドル曲。歌詞の内容は、主人公の10代の女の子が隣りのクラスの気になる男子に告白しようかやめとくか、どっちつかずの曖昧な心情が綴られている。
サビに入る前に「アイ・マイ・ミー」とファンのコールが入る所が曲のアクセントになっている。
7曲目は「ユートピア」。エウレカの曲の中にはテクノ調のものがあり、この曲がその中で一番人気の曲である。騎械氏が邦楽、洋楽問わず80年代の曲に多大な影響を受けているため、当時流行したテクノポップへのオマージュと思われる。
音はシンセがメインで全体的にどこかノスタルジックを感じさせる曲。エウレカの歌詞の多くはプロの作詞家に任せているが、この曲は珍しく騎械氏が作詞も担当しており、メトロポリタンとナポリタンで韻を踏む等、遊び心が感じられる。
8曲目は「籠の中の鳥はいつ飛び立つのか」。社会性やメッセージ性のある曲で、エウレカの楽曲の中では異彩を放っている。歌詞の中では、周囲の大人に対する反抗心や将来に対する不安がうかがえる。
騎械氏のボカロP時代から温めていた曲で、その頃から何度も修正を重ねた結果、アレンジが10通り近くもある。
曲の終わりで明るい曲調に変わるのは、籠の中にいた鳥達が大空に向かって自由に飛び立っていく様を表しているのだと騎械氏がweb雑誌のインタビューで当時答えていた。
僕はこの曲が、演劇の劇中歌みたいなものに向いているなと初めて聴いた時に感じた。
9曲目は「夕立」。珠玉のバラードでファンの間では隠れた名曲と語り継がれている。僕はこの曲がエウレカの中で最近のお気に入りになっていて、今まで何百回聴いたか覚えていない。夏から秋に変わる季節の黄昏時に降る激しい雨。
そしてその後、きれいな虹がかかる・・・
はかなくも美しいと形容される景色をこの曲が見事に表現している。
この曲は、元々シングルのカップリング曲に過ぎなかったが、ファンの根強い応援で、後でPVが制作された。そのPVも曲に劣らず素晴らしく、サビから終盤まで夕暮れの雨の中をメンバー達が全力で走っているところが大変だったろうけれど映像がとても美しい。
いつか雨音にセンターで歌って欲しいと密かに願っている。
10曲目は「SAY A NIGHT PRAYER」。夜をテーマにした曲でライブの終盤に披露されることが多い。
シンセで始まるイントロが幻想的に響き、サビの壮大な雰囲気がとても心地良くて何度も聴きたくなる。
歌詞のテーマはタイトルのとおり、ある一人の少女の広大な夜に向けての祈りとなっている。エウレカ版の星に願いをと言ったところか。
メンバーやファンの間では、タイトルを省略してセイアと呼ばれている。
そしてラストの曲「終幕が下りるまで」。
歌詞は、まだ公演を終わりたくないから、最後の最後までもう少しこのままいようという内容。ライブの最後は大抵この曲か前曲のセイアが選ばれる。ライブの最後を締めくくるのにふさわしいゆったりとしたバラード。
以上11曲。仙台から東京までの約6時間、全曲を合計6回繰り返し聴いたが、全く飽きない。人生で初めての体験となる握手会に向けての期待がどんどん高まっていくのを感じた。