8 バスの中にて
握手会の当日、僕は早朝に仙台駅前から高速バスに乗り、東京へと向かっていた。雨音のエウレカードは現在2枚。
雨音と会場で握手するためにはまだ1枚足りない状態だが、僕には目論見があった。
前にも言ったことだが、同じ高校に通っているにもかかわらず、何時間もかけてわざわざ横浜まで行くなんてナンセンスだろう。
それでも雨音に近づくきっかけが欲しい。それだけ雨音は僕にとって近くて遠い存在だ。
バスが東京駅に到着するまでの間、前日にスマホに入れておいたエウレカの代表曲をイヤホンで聴いていた。
目を閉じて曲を一通り聴くと、これまでの彼女達の活躍がいくつも思い浮かぶ。
そもそもエウレカ1984とは、どんなアイドルグループなのか。その始まりは、3年前に音楽プロデューサーの一ノ瀬 騎械という人が開催した新人アイドル発掘オーディションからだ。
騎械氏は大手機械制御メーカー、一ノ瀬グループの御曹司で元々は高校生の頃からボカロPとして活躍していた。
大学に進学後もボカロ曲を配信し続け、動画の再生数やカラオケで稼いだ富を使って、大学卒業後により大々的な音楽プロデューサー業を広げるべく前述のオーディションを行ったようだ。
そこで後にリーダーとなる透野舞衣やエースの宮内理沙、その他第1期生が選ばれた。その時はまだグループ名は決められていなかったが、その1ケ月後のデビュー時にエウレカ1984と発表された。
エウレカとはギリシャ語で見つけたというような意味らしく、これまでに居なかったアイドルを世に送り出したいという意味が込められていて、1984は騎械氏がその年の音楽や文学、カルチャーに多大な影響を受けているからというのを何かのインタビュー記事で知った。
メンバーの高いルックスとパフォーマンスに加えて、騎械氏の天才的な音楽センスが相乗効果を生み、矢継ぎ早にヒット作を世に送り出して行った。
その結果、現在の国民的アイドルグループの地位を築いた。
その数々のヒット作が今僕が聴いている以下の11曲だ。
1「生き急いだ頃」
2「息吹き」
3「カナカナ」
4「青と白で構成された夏」
5「アドレッセンス」
6「あいまい・ME」
7「ユートピア」
8「籠の中の鳥はいつ飛び立つのか」
9「夕立」
10「Say A Night Prayer」
11「終幕が下りるまで」