信頼
「別にそれはいいんだ。仲間に入ってくれるなら俺もすげぇ助かるし…。でもお前ら本当にいいのかよ!」
友が仲間に入れてほしいと言っているのはすごく嬉しい。だが急すぎだし言うのが遅すぎる。
冒険者試験は3日後だよ?
「入っていいんだな?良かったー!」
俺が頭を必死に回転させているのをよそにゼニスは喋り続ける。
「さっき言った通りなんだが俺二刀流やりてぇんだよな!すげぇかっけぇし」
ゼニスは運動神経がとても良くて喧嘩は負け無しだった。
だが冒険者はそんなレベルではない。油断すれば…死んでしまう世界だから。
「本気なんだよな?」
俺はゼニスとヒナにそう問いかけた。
ゼニス達は俺の過去を知っている。遊び半分なら絶対に許せないとわかってるはずだ。
俺の父がどうなったかを。
「本気だよ!私はアルマ君とゼニス君の役に立ちたい!」
力強い声はヒナの真剣さを物語っていた。
「そうか。」
俺はゼニスとヒナの本気の言葉を聞いた。それ以上はもう何も考えることはない。
あとは友の覚悟に答えるだけだ。
「ようこそ俺のパーティーへ。ゼニス、ヒナ」
「おう。」「よろしくね!」
これから仲間をどうしようか毎日考えていたがそんなことも考えなくて良さそうだ。
「話はまとまったようだな」
その時カクちゃんがそう言った。
「まさかアルマだけだと思っていたがゼニスとヒナまでもが冒険者になろうとしてたとは…お前らにも話がある」
角田先生は今まで見せたこともなかったような顔で俺らを見ていた。
俺は思わず目を背けゼニスの方を見てしまった。
ゼニスは俺と目をあわせ少し笑ったあと角田先生の方を向いていた。
「いいよカクちゃん。どこで話すの?時間内無いから早くしてくれよ!」
ゼニスは明るくそう答えていた。
………いや、かっこいいな!俺より勇気がよっぽどあるしパーティーリーダー取られちゃうよ!
てか俺ってパーティーリーダーだよね?
今まで勝手にそう思ってたけど俺じゃなかったらどうしよう…。
聞きたいけど言えないよな。
4人あれ以降一言も喋らず廊下を歩いていた。
少し歩くと指導室が見えてきた。
「ここに入れ」
カクちゃんの一言は重みがすごかった。
「さて…と。お前ら、本気で冒険者になるつもりなのか?」
誰もいないところで聞いてくれるあたり角田先生はよっぽど俺らのことをわかってくれている。
角田先生になら話してもいいかもな。
「先生…俺は絶対に冒険者になります。父との約束なので」
俺は角田先生には話すことを決意した。
「アルマ…」
横を見るとさっきまであんなに明るそうなゼニスが心配そうに見ていた。
大丈夫だ と目線を送ってつらい過去を話す。