猫は人の道を通らない
通学路を歩く途中で、ふと遠回りをしてみたくなった。
ライトグリーンのフェンスで挟まれた横道に入る。
細長く伸び切った雑草が膝をくすぐり、砂利道が足元を不安定にさせ、青々しい臭いで早々にも後悔が募る。
けれど教室に漂う透明な不快感より、触覚に直接伝わる自然の不快感はどこか郷愁的でいい感触だ。
ゾクゾクした道を抜けて、曲がり角に差し掛かり、視点を下に降ろし道の安全を確認すると、出会い頭に猫がいた。
目が合いじーっと立ち止まる猫とぼく。
黄茶色、かわいい、触りたい、狂犬病?、しっぽ上がってる・・・
「・・・あっ・・・そうかここは君の道だったのか、ごめんね」
飛び込んできた雑念をくぐり抜け、猫の前足が動くより早く振り返り、引き返す。
そそくさとクシャクシャ鳴らして獣道を戻る。臭いには慣れてきた。
猫のことを思う。
伸びたしっぽはお散歩でご機嫌だったのだろうか。
面と向かうとさしあたり『そこをどいて』と言わんばかりの困り顔は愛らしかった。
舗装されていない道の感触も含めて、野性の世界は分かりやすい。
ふと顔を振り向く。
猫はまだ、遠くの方で、じーっとこちらを見ていた。