三題噺第12弾「黄色」「PSP」「憂鬱なメガネ」
ミーン、ミーン、ミーミーミー。
セミの泣き声がうるさい夏の日、そこに自分はいなかった。
でも、いないという表現は少しおかしいかもしれない。
姿が投影されて、そこに映し出されているのだから、ある種の幻影としてそこにいる。
『この映像を見ているということは、自分は日本に帰ってきてないのだろう。そのためにこのビデオメッセージを残しておく。
今自分は、ある調査のためにアメリカ沖にいた。それは重大な密約を結ぶという情報を得て潜入したのだ。
その決定的証拠を提示し、今度こそまともな契約じゃないことを示す必要性があった。
全ては日本のために行うものだった。
しかし、邪魔だては来るもの。自分は帰ってこれない。
そのときは、みんなに自分の願いを叶えて欲しい。
どうか、日本をよくしてくれ。あとは、たのんだ』
薄暗い狭い部屋の中、ビデオメッセージは終了した。
「隊長……」
部下の一人目。背が低いが、筋肉ががっしりついている人物が呟いた。
「隊長は死んだものと思え!」
部下の二人目。背が高く、“憂鬱なメガネ”をかけていた。
「隊長……あんたはいい人すぎたんだ……」
部下の三人目。“黄色”のハンカチを目にやり、優しそうな目をしていた。
「これから作戦行動に移るぞ! 隊長の意思を継ぐ!」
部下の四人目。副隊長が指揮を取ろうとした。
「まず、隊長のいたアメリカ沖に潜入して、情報を探る!」
「そのあとは、どうするんです?」
部下の一人目が訊く。
「“PSP”で各自連絡を取り合う。そして、隊長がなし得なかったことを、われわれの手で実行に移す!」
「おおーー」
「隊長、必ず成し遂げて見せますからね!」
「正義のために!」
「ーー正義のためにーー」
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