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貴婦人は優雅に微笑む  作者: violet
番外編
59/65

たった一つの純情 デーゲンハルト公爵家

「フランセットが攫われました!」

先輩侍女ロノアの叫び声で、屋敷は騒然となった。

すぐにパーミラとオスカーが玄関に駆け付けた。

侍女は急いで屋敷に戻る為に、体力も気力も使い果たして玄関に倒れるよう座っているからだ。


「奥様、申し訳ありません。私がついていながら」

前公爵夫人付きの侍女とはいえ、将軍の顔を知るはずもなく、フランセットを攫った男の素性を知らない。


「ロノア、落ち着いて、思い出せることを教えて」

パーミラは侍女の名前を呼んで、興奮しているロノアを落ち着かせようとする。


「フランセットと二人で街を歩いていたら、通りかかった馬に乗っていた男性がフランセットを攫ったんです」

嗚咽にむせびそうになりながら、ロノアが状況を語る。


「その男性は何か言ってた?」

わざとゆっくり、パーミラは問いただす。


「僕だ、マイケルだ、と言ってました。

エリス、生きていた、とかも言っていた気がします」

ロノアは思い出そうと手を頭にあてる。

「大きな馬で、軍服でした。勲章や飾り紐がたくさん付いていました」


マイケル、エリス・・・


似ていると思った。


ガタンとパーミラがよろけながら動くと、オスカーが支える。

「すぐに・・」

ただ似ているだけだ、そうに違いない。

「本邸に行ってギュンターを呼んで来て。

シュトラスは、王宮のエイドリアンに連絡して、マイケル・ストラトフォード将軍の屋敷の場所を調べて来てちょうだい」

パーミラは家令のシュトラスに王宮へ向かうように指示をする。


「お祖母様、フランが!?」

バンッ!!

力任せに開けられた扉が大きな音を立てて、ギュンターが飛び込んできた。

パーミラが玄関に来る前に、使用人がギュンターに知らせに走ってあったのだ。


「落ち着きなさい、ギュンター」

パーミラが戒めるが、ギュンターはそれどころではない。

「どうして、フランが!」

床に座りこんでいるロノアにギュンターが詰め寄ろうとして、後ろから肩を掴まれる。

「落ち着け、ギュンター」

ギュンターの兄である、デーゲンハルト公爵家長男ユリウスだ。


「シュトラスに王宮に向ってもらいました。

ストラトフォード将軍の屋敷にフランがいると思うの」

ギュンターが何か言おうとするのを、ユリウスが止めてパーミラに尋ねる。

「お祖母様は、現場にいなかったのにわかるのですか?」


「確信があるわけではないわ。

フランセットを初めて見た時に、エリス・イスデニア嬢に似ていると思ったの。

そう、マイケル・ストラトフォード将軍の亡くなった婚約者で、今も妻にと望む令嬢。

街で、エリスと呼んで、マイケルと名乗るなら、マイケル・ストラトフォード将軍の可能性が高いと」

オスカーは侍従に椅子を用意させ、パーミラとロノアを座らせる。


「ストラトフォード将軍の屋敷なら王都の外れにあります。

王都の中で、エリス嬢のお墓に一番近い場所です。

直ぐに警備の兵士を集めましょう」

ユリウスが指示を出す間に、ギュンターはパーミラの側に寄る。

「お祖母様、ここで待っていてください。

必ずフランを連れ戻ってきます」

それは自分を落ち着かせるための言葉でもあった。

状況が分からない今、焦ることは禁物だ。

誰よりも先頭に立って、フランセットを助けに行きたいが、経験者である祖父のオスカーを中心にした方が確実であることも分かっていた。


「ギュンター、お前の大事な女性だ。

どんなことをしても探し出すのだ」

ユリウスが言えば、フランセットが平民であることで反対されてはいない、と心強くなる。

デーゲンハルト公爵家は、エイドリアンの方針で子供達に婚約者を決めていない。

自分で探すのが鉄則だ。




王宮からエイドリアンが戻ってくる頃には、オスカー、ユリウス、ギュンターが公爵家の私兵を引き連れてストラトフォード将軍家に向かっていた。



「オスカー・デーゲンハルトである。

マイケル・ストラトフォード将軍にお会いしたい」

ユリウスとギュンターを後ろに控えて、オスカーはストラトフォード将軍の屋敷を訪れていた。

普段は閑静な一角に、物々しい兵士の一群を率いた男達の姿は、異様な雰囲気であった。


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