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貴婦人は優雅に微笑む  作者: violet
番外編
50/65

公爵家の僕

スマホアプリ「まいどく」にて『貴婦人は優雅に微笑む』配信記念として、番外編を追加いたします。

まいどく版は修正・加筆されて配信となっております。こちらは削除しませんので、楽しんでいただけましたら嬉しいです。

公爵夫人の朝は優雅に始まる。


普通ならば。


「おはようございます、エイドリアン様」

「ああ」

応えるエイドリアンはレイゼラを見下ろしている。

レイゼラがベッドから落ちて、上を見上げているからだ。

「すごい音がしたぞ。ケガはないか?」

「なんとか」

笑ってごまかすレイゼラだ。寝相が悪いにしても、ベッドから落ちるのは久しぶりである。


夫婦の寝室を覗く趣味はないけれど、大きな音でビックリしたんだ。

レイゼラが寝ぼけてベッドから落ちたらしい、僕は覗いた部屋から出ていった。



厨房に行くと、朝のミルクが用意されている。

朝ごはんを食べたら、ヘンリクと遊ぼう。僕の予定は気ままなんだよ。

ヘンリクは王宮に住んでいて、ちょっと遠いんだ。

チビッ子の時は、レイゼラが馬車で連れて行ってくれたけど、今は一人で行ける。

遠出の散歩コースだ。


最近は、レイゼラの絵を描きに、じーさんが来るからそれまでに帰って来ないとならない。

僕は、レイゼラの膝に乗って絵を描かれるんだ。

じっとしていると、眠たくなってくる。



食堂に行くと、レイゼラがエイドリアンと朝食中だ。ひょいとテーブルにあがる。

僕の席は、レイゼラの隣だ。

エイドリアンが僕を見たが無視してやる。

あいつ邪魔なんだよな、僕のレイゼラなのに。

レイゼラが、メイドに何か言うと、僕の朝ごはんのお皿が出てくる。


ふー、お腹いっぱいになったら、王宮に行くかな。

テーブルから降りると、しっぽでエイドリアンの足をはたいてやった。




王宮に着くと、最初に行くのは、クラリッサの部屋だ。

この前の秋に生まれたヘンリクの娘で、ミルクの匂いがする。

レイゼラの次に好きな女の子だ。

まだ歩けないけれど、僕がわかるんだ。

クラリッサは僕のしっぽが大好きなんだ。

小さなベッドの端に飛び乗ると、クラリッサの小さな手が僕に伸ばされる。

しっぽを振ってやると、声をたてて笑う。

クラリッサは、僕が守ってあげないといけない気がするんだ。



おい、ヘンリク。

ヘンリクの執務室に入っても僕に気づかないようだ。

執務官に囲まれて、朝から疲れた顔しているぞ。

「みゃー」


やっとヘンリクが顔をあげて僕を見つけた。

「クー」

ヘンリクは眼鏡をはずして机に置くと、僕を抱き上げ無造作に頭をなでる。

馬車で僕より先に来ているはずのエイドリアンは、今日は自分の執務室にいるので、ここにはいないようだ。


「少し休憩しよう」

僕を抱き上げたまま、ヘンリクは足早に執務室を出る。

行くのは林の中だ。


途中で王宮の庭園に咲いている花を、無造作に千切って手に持つヘンリク。

むやみに千切ると、またカデナに怒られるぞ。カデナの大事な花が混じってないだろうな。

サクサク、枯葉を踏む足音が林にこだまする。

ヘンリクは僕を地面に置くと、大きな石の前に置いてある古い花を片付け、持ってきた花を飾る。

ヘンリクは何も言わない。

僕は蝶々を見つけて、追いかけている。


「さあ、やるか。戻るぞ」

おい、僕はまだ遊び足りないぞ、抱き上げるな、懐にいれるな。

がさつに頭をなでるな!

侍女のお姉さんが毎日ブラッシングして、サラサラが自慢の毛並みだぞ。

女は僕の白銀の毛並みと青の瞳にメロメロなんだぞ。


仕方ないな、お前、僕を好きだからな。

もう少しだけ、なでていいぞ。

ちょっとは顔色よくなったか。お前、忙し過ぎるんだ、カデナが心配していたぞ。

僕が来ないと、息抜きさえしないのは感心できないな。



「みゃー」

僕は帰るよ。レイゼラが待っているからね。

それに、絵描きのじーさんが来ているかもしれない。

レイゼラの膝の上は、ほんわかして気持ちいいんだ。

なでるのも、ヘンリク、お前より上手いぞ。


また来て遊んでやるよ。

クラリッサを守ってやらないといけないからな。

お前の娘だからな。


ヘンリクが執務室に戻って、床に僕を置くと、僕は扉に向かって走り出した。



僕の名前は、クー。

レイゼラ・デーゲンハルト公爵夫人の猫。

群青に近い深い青色の瞳の猫。


お読みいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 群青に近い深い青色の瞳の、、、クー! 命名は誰でしょう?
[一言] 久しぶりに読み返しました。 前回読んだときは、クラリッサを守る対象と捉えていたり、想いが受け継がれてるなと感じていました。 今回読んでみて、親とか何の柵もなく好きな人を好きと素直に思える毎日…
[良い点] ヒロインのほんわかした雰囲気で楽しく読めます でも小説読もう で一番泣きました ヒロイン誰とくっつくのかなぁとモヤモヤしてるよりスッキリでも… [気になる点] 個人的にはエイドリアンは6番…
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