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貴婦人は優雅に微笑む  作者: violet
本編
38/65

別れの予感

アイザフ・サルダトーレ、暴徒制圧に向かったはずの第2司令官がそこにいた。


キーン、剣と剣がぶつかり合う。

オーツがアイザフの剣を受けて、ヘンリクを守っていた。

第2部隊が王太子執務室を襲撃してきたのだ。

警備兵達も同じ軍である第2部隊と応戦している。



「王太子に刃を向けるとは何事だ!

剣をひけ、サルダトーレ!」

ヘンリクが大声を出す。

「笑止!

私は陛下直々の命を受けているのだ!」

アイザフがうすら笑いで剣をかまえる。


それは父王が息子を討てと命じたということだ。


ヘレン妃の暴挙を王が止めない事から予想はしていたが、実際に言われると、息子であるヘンリクには辛いものがある。

ヘンリクは全盲を装う為に閉じていた瞳をあけた。


エイドリアンは、神の頭脳だが、武術は人並みで、我が身を守れる程度だ。

反対にマイケルは、武神と言われる程の剣豪だが、知力はいい程度である。

王太子ヘンリクは、武術も知力も極めて秀でている。クレドールもそうである。


「王太子、目が!」

アイザフは叫び、戸惑った。


「残念だったな。」

ヘンリクはそう言って剣を手に持つ。

目が見えるヘンリクは戦力になるのだ。


エイドリアンも車椅子から立ち上がり、剣を持つ。

(たばか)ったな!」

アイザフは、エイドリアンの姿を確認して、甘い考えを捨てたようだ。

エイドリアンが身を守れるなら、警護兵が自由に動けるのだ。


狙うはヘンリクの命。

総司令官は精鋭兵を数多く残して、暴動制圧に向かったが、第2部隊は数が多い。


軍の本隊は、王宮に向かっているはずだ、彼らが間に合えば、ヘンリクの勝ちである。




第2部隊の一部は、カデナの暗殺にも向かっていた。

カデナの扉の外では、戦闘の音が聞こえる。

「扉を死守するのだ、王太子妃を守れ!」

いくら精鋭兵でも、数でむかってくる第2部隊には、苦戦しているようだ。


外の血の匂いが部屋の中まで漂ってきている。

ガン!!

部屋の扉がこじ開けられ、第2部隊の兵が中に飛び込んで来た。

部屋の中にいた兵が、カデナ達を背にかばい応戦する。

部屋の外でも戦闘が続いており、カデナの部屋は戦場となった。


ザン!!

第2部隊の兵が後ろから斬られて、倒れこんだ。

そこに立っていたのは、クレドールだ。

「レイゼラ!!」


レイゼラが護衛の兵士の後ろから、顔を覗かせると、クレドールの顔に笑顔が浮かぶ。


「この部屋に立ち入る者は、僕が斬る。

立ち去れ!」

クレドールが、扉の所で立ち塞がるが、第2部隊兵士達は引き下がらない。

数では、圧倒的に第2部隊兵士の方が多いからだ。


だが、元々精鋭兵を集めているところに、クレドールが加勢したことで、状況は精鋭兵達の有利に大きく傾いた。

次々と第2部隊の兵士達が、斬られて倒れていく。


クレドールの服も返り血を浴びて、赤く染まっている。

レイゼラは、クレドールの服の袖が切られているのに気がついた。

そこに、傷を負っているとわかる。


「クレドール様。」

レイゼラの声が聞こえたのだろう、クレドールが嬉しそうに笑う。

だが、この部屋まで駆けて来て、たくさんの兵士と対戦しているクレドールは肩で息をしている。


レイゼラにはわからない。

クレドールと襲ってきた男達とは、仲間のはずなのだ。

それが、自分達を守って戦っている。


最後の一人であろう敵兵士が倒れた。

クレドールが振り返ってレイゼラを見る。

けして、それ以上近づこうとせず、ただレイゼラを見ている。


「クレドール様、おケガを・・・」

「大丈夫だ、大したことない。」

レイゼラが心配するのが、嬉しいのだろう。クレドールの声は弾んでいる。

「君が、無事でよかった。」


「クレドール様、助けていただき、ありがとうございます。」

はにかむようにレイゼラが、クレドールに微笑む。


クレドールは目を細めて、眩しいものを見るかのようにレイゼラを見る。

「今、死んでもいいな。」

誰にも聞かれない様に、クレドールは小さく呟き、胸に手をあてる。


クレドールは、いつものようにレイゼラに背を向け去って行く。


庭の東屋で、ダンスの練習で。

クレドールは突然現れて、背を向け去って行った。


舞踏会でも、今も、レイゼラを助けてくれる。


クレドールの去って行く背中を見つめて、レイゼラの瞳から涙がこぼれる。


「カデナ様、私・・・」

それ以上の言葉が続かず、レイゼラはカデナにすがりついて泣くしかない。

「何も言わなくていいのよ。」

カデナがレイゼラの背を優しくなでる。



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