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貴婦人は優雅に微笑む  作者: violet
本編
37/65

策略

マイケルの率いる第一部隊は、農民達の中に突入していた。

北部地帯は寒冷地とはいえ、決して貧しい地域ではないはずなのだ。

気候に適した野菜を栽培して、干ばつなどの被害もない。

問題は、男爵領の税金である。

長年にわたる高い税金は、農民を苦しめ、不満を蓄積していた。


そこを逆手にとり、危険分子の排除と、ヘレン妃への貢献と両方をサランダー男爵は狙ったのだ。


軍本隊が来る頃には、暴動を主導したヘレン妃が集めた男達は王都に向かい、王宮を攻めている人員に加勢する手筈である。

最初から、軍本隊により、農民蜂起は鎮圧される予定で、男爵領での被害は最低限で抑えられるはずだった。


それが、第一部隊の急襲により、農民蜂起は大きなものとなる前に抑えられ、逃げるので精一杯の状況だ。

農民の中の危険分子の排除という、サランダー男爵の思惑に乗る形だが、それは仕方ない。


武器を手に持つ男達を狙って、軍が制圧していく。

訓練を積み統制された軍に、寄せ集めの部隊では、対応する術もない。

先頭に立って突破するマイケルが一番危険だが、右手も使えるようになったマイケルには、敵になる程の者はいない。




その頃、王都の軍本隊は、総司令官が率いてサランダー領に向け出発していた。王都を出たら途中で引き返し、王宮警備に戻る予定である。

軍が出発するのは、ヘレン妃側に思惑通りに進んでいると思わせる為だ。

第二司令官には、引き返すことを指令せず、サランダー男爵領での蜂起制圧だけを指令してある。



王宮の中で、王太子執務室は、たくさんの男達が出入りし、騒々しい場所となっていた。

クレドールがいる王の執務室もそうであろう。



反対に、カデナとレイゼラがいる王太子宮は、静かなものだった。

ものものしい警戒体制をしかれているが、レイゼラの緊迫感も使命感もほぐれていた。

私が王太子妃とお腹の御子を守る!と意気込んで来たのに、平和なのだ。

もちろん、王太子達が平穏に過ごせるようにしているのだが。


「それで、葡萄の実がなったら、収穫が始まるのですが、もう忙しいなんて言葉で言い表せないぐらい大変。」

何故か、レイゼラがワイン作りをカデナと侍女達に話している。

カデナ自身も、不安がなくなったのだろう。表情が穏やかになってきた。

まるで、いつものお茶会のような雰囲気だ。


「妊婦も大事にしてばかりいては、ダメなのです。

多少の運動も必要です。」

産んだことのないレイゼラが、講釈をしている。ワイン作りで領民達と接するレイゼラは、豆知識が豊富である。


夜が更けて来ると、それはお泊まり会の様相になっていく。

「今夜は、レイゼラも一緒に寝るのよ。」

カデナが当然のように言う。

「とんでもない、私は寝ずの番をします。」

早寝のレイゼラは無理な事を言う。

「女同士、お話をして過ごしましょう。

手を繋いで寝るのが、王都の女の子の常識よ。」

カデナは、レイゼラが知らない事をいいことに、ベッドに引き込もうとする。


赤くなりながら、レイゼラが白状する。

「寝相が、とても悪くって・・・・

お腹を蹴っては大変なのです。

朝、エイドリアン様の顔に足を乗せていたこともありました。」

レイゼラは自覚なしに、エイドリアンと寝ていると言っているのだ。


「まぁ、それで?」

「お前は、一晩に何回転するんだと、ネチネチ言われ。」

あの男はわかっていて、レイゼラの寝相を()でているんだわ、とカデナは察する。

「それで?」

カデナの言葉に、可哀そうなぐらいレイゼラが赤くなっている。

「お仕置きされたのね?」

赤く固まったレイゼラは、返事しているのと同じである。


「大丈夫よ、私はお仕置きなんてしませんから。」

問題はそこではないが、カデナにとってどうでもいいことだ。


結局、ベッドに引きずり込まれ、カデナに鼻や頬をつつかれて起きるという事を繰り返し、無事に朝を迎えた。

「レイゼラが転がってくる顔は、可愛かったわよ。

起こすのが可哀そうで。」

そういうカデナは満足気である。

しかも、今日のレイゼラのドレスはピンクの花柄ね、と選んでいる。

レイゼラが目指す立派な公爵夫人とは違う気がするが、王太子妃に粗相をしないで安心したレイゼラである。

完全にカデナの策略にはまって、今夜も一緒に寝ると約束させられていた。





それは、突然だった、軍本隊が出発して1日が経とうかという頃である。

王宮に響きわたる爆音に、誰もが緊張を高める。

王太子妃室を守る警護達が、絶対に外に出ないようにとカデナ達に言って、剣に手をかけて立つ。


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