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貴婦人は優雅に微笑む  作者: violet
本編
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予期せぬ再会

レイゼラは王宮に着くと、舞踏会の広間に向かう前に、王太子執務室に向かった。

エイドリアンに、着飾った姿を見せたかったのだ。

執務室にエイドリアンがいるかと思うと、心が弾む。

急ぐ足取りだが、気を引き締めて執務室の扉を叩く。


執務室の扉を開けた見慣れた事務官が、レイゼラを中に招き入れ、エイドリアンを呼んできてくれる。


「これは、綺麗ですね。」

エイドリアンの言葉にレイゼラは、心の中で大興奮である。

やったわ、誉めてもらえたわ。

「舞踏会を頑張れば、いいことをしてあげましょう。」

いいこと?

「エイドリアン様?」

首を少しかしげて聞いてみる。

「ダメですよ、帰ってからです。」


後ろで、ヘンリクが事務官に、エイドリアンってあんな奴だっけ?と聞いている。

私も、それをお聞きしたいです、と答える事務官達も、あり得ないもの見ている、と言っている。

「では、カデナ様のお部屋に行って参ります。」

そう言って、レイゼラがカーテシーをすれば、ヘンリクが答えた。

「カデナが待ってますよ。」

レイゼラは、公爵邸からの護衛に警備されて、カデナの部屋に向かった。





ヘレン妃の誕生日を祝う舞踏会は、盛大なものだった。

王とクレドール王子も臨席し、他国からも使節団が来ていた。

王の機嫌を取るには、ヘレン妃だとわかっているらしい。


王とヘレン妃がダンスを始めると、人々がホールに注目した。

ヘレン妃は、格別の美人ではないと思っていたが、ダンスも目を見張るほどほど上手いというわけでもない、というのがわかった。

いったい何が、これほど王を惹き付けるのか、レイゼラにはわからなかった。


カデナとレイゼラが、二人でいると端によっていても目立つ。

カデナは王太子妃であり、絶世の美女である。

レイゼラも磨かれ、かなりの美女だ。


見慣れない美女だ、王太子妃の侍女にしては、衣装が豪華すぎる。

王太子妃とかなり親しいようだが、誰だろう。

社交に出ていなかったレイゼラを知る貴族は少ない。

噂好きな貴族達の注目を集める。


「レイゼラ、ここで待っていて。

少ししたら戻って来るから。」

「はい。」

カデナは少し離れた場所から、レイゼラ鑑賞を決めたようだ。もちろん、レイゼラは気が付かない。


カデナが離れると、レイゼラの周りに男性達が寄って来た。

「お嬢さん、王太子妃とは、どのような関係で?」

「お名前をお聞きしていいかな?」

「僕と一曲踊りませんか?」


あらあら、とカデナは横目でレイゼラを見ながら、他国からの来客に探りを入れる。

この中に、賭博場にいた者がいるかもしれない。

美しい王太子妃に声をかけてもらおう、と人が集まる。

レイゼラとカデナに男達の視線が集まる中に、場をわきまえない声が響いた。



「どうして、お前みたいな田舎者がここにいるんだ!」

セルディ・ドランがシフォンヌ・ポートダムと共に、レイゼラの前に立っていた。

レイゼラの護衛が前に出て、セルディとの間に立とうとしたのを、レイゼラは視線で止める。


クスッと微笑みを浮かべて、レイゼラはセルディを見た。

子爵領にいた頃は、セルディがステキに見えていたけど、改めて見ると、たいしたことない。

婚約解消されて、あんなに泣いたのに、顔を見ても全然ときめかない。

「招待状を頂いたからですわ。」

そっとネックレスのアメトリンを触る。

エイドリアンが用意してくれた宝飾品、レイゼラに勇気をくれる。

周りの者は、そんなレイゼラの仕草にさえ見とれながら、様子を見ている。


「王妃の舞踏会の招待状なんて、簡単に手に入る物じゃない。

僕に会いに来たのか!?」

セルディの言葉に、一瞬耳を疑う。会いに来た?誰が?

「貴方の元婚約者の田舎娘?わからなかったわ。

それなら、しつこいわね。

それに何よ、これ見よがしな豪華なドレス!」

シフォンヌも、レイゼラには理解できそうにない事を言う。


セルディとシフォンヌはツテを頼って、舞踏会に入れてもらった。

ベッシーニ伯爵からの催促を、王妃に陳情してゆるめてもらう為だ。

ポートダム伯爵家には大きな資産はなく、屋敷を売っても全額払えない借金なのだ。


「言っている意味がわかりませんわ。

このドレスも宝飾も婚約者からの贈り物ですもの。」

フフ、と笑顔のレイゼラは、周りにいる男性に、変かしら?と聞いてみる。

「とてもお綺麗です。レディ。」

予想していた通りの答えが返ってくる。


「なに男を(たぶら)かしているんだ!

子爵の娘のお前が、こんな場所に来れるはずないだろう!

お前は1ケ月前に、僕に婚約解消された、つまらない女のはずだ!」

興奮したセルディの声は広間に響き渡った。

何とか話を聞いてもらおうと、王妃を探しているうちに、レイゼラを見つけたのだろう。

緊張とレイゼラを見た事で、この場がどういった所かも忘れてしまうほど驚いたのかもしれない。


つまらない女、そうずっと思っていたのね。

自分達より身分の低い子爵の娘。

それが、こんな場所で自分達より豪華な衣装でいるのが我慢できないということか・・・

アメトリン、私に勇気をちょうだい。

レイゼラは、少し頭を傾け微笑みを浮かべ、アメトリンの上に指を重ねる。



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