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貴婦人は優雅に微笑む  作者: violet
本編
14/65

王の謁見

レイゼラはエイドリアンの期待を裏切り、王の前で優雅に挨拶をした。

付け焼刃とはいえ、公爵夫人のパーミラと王太子妃のカデナの指導を受けたのだ、覚悟さえ決まれば怖くなくなる。

この場合の覚悟は諦めにちかい。

謁見の間には、王、ヘレン妃、王太子夫妻、クレドール殿下が台上に並んで座り、数多の護衛に守られている。

エイドリアンの車椅子を押して参内したレイゼラが、ドレスの裾を持ち、綺麗なカーテシーをしたのだ。



「まぁ、可愛いご令嬢だこと。ねぇ、陛下。」

にっこり微笑むのはヘレン妃である。

レイゼラのヘレン妃の印象は、美人というより普通?

王太子の隣に立つカデナの方が美女で、悪役ポジだ、と思うばかりだ。

きっと人畜無害に見えるから、騙されるんだ、と結論づける。


この人が毒を盛り、エイドリアン様を不自由な体にしたんだ。

本当の悪女って悪い人に見えないんだ。そう思うと背筋がぞっとする。

そして王太子は、自分の命を狙っている人間の横にいる。証拠がないとはいえ、確定したも同然の人物だ。

優しそうな風貌の王太子も見かけとは違うのだろう。


そっとエイドリアンの頬のこけた顔を見れば、悪役顔で安心する事に気づき、自分でも馴染んだと思う。


「結婚式は2ヶ月後、と届けが出ておりますが、急な事ですのね?

レイゼラ嬢は、婚約解消なさったばかりですのに、公爵家に輿入れとはお幸せですわね。」

誰が聞いても、どこから聞いても嫌味だが、レイゼラは感心している。

さすが悪女だ、遠まわしに男好きのように言っている。どこかで使えるかも、と頭の中にメモしておく。

本人にダメージを与えられないので、嫌味は不発に終わる。


セルディに婚約解消というメガトンパンチをされて、まだ数日だ。

泣きながら立ちあがったレイゼラは見かけより強い。


「私もそろそろと考えていた時の話でしたので、時期を待つ必要もないと進めております。」

返答するエイドリアンは眉ひとつ動かさない。

「宰相から聞いているよ、おめでとう。」

王がそう言うと、ヘレン妃も引き下がらざるを得ないが、捨て台詞を残していく。


「公爵家が地方の子爵家と縁を結ぶとは、驚きましたわ。

王都の令嬢より気もつくし、良かったですわね。」

エイドリアンの介護の為の結婚と言わんばかりだ。

言われているレイゼラは、頭の中にメモメモと忙しく、パンチは効いてない。


王とヘレン妃が退席するとクレドールが声をかけてきた。

「エイドリアン・デーゲンハルトの婚約者だったのか。

僕も興味あるな。」

意味深な言葉に、エイドリアンとクレドールの視線がぶつかり合う。


王が退出したことで、いい意味での緊張が途切れ、機械人形のように、ギギギと首を動かしたレイゼラが、涙目でカデナを見る。

あらら、私を頼って可愛いこと、とカデナも満更でもない。

「ど、どういうことですか?」

レイゼラの言葉に答えたのはカデナでなく、クレドールだ。

「君が可愛いすぎるんだよ。」

ゾゾゾと悪寒が走って、レイゼラが身体を縮こめる。


「あれ、女の子が喜ぶ言葉なのになぁ。」

クレドールがおかしいな、と言う。


「申し訳ありません、あの・・意味がわかりません・・」

ビクビクしながら、レイゼラが生真面目に答える。

女の子の喜ぶ言葉ってどういうこと?

婚約者が横にいるんだよ、それで言う?

レイゼラの頭の中に?が並んでいく。

そうか、エイドリアンにケンカを売っているんだ、とやっと気づく。


反対に真面目に答えられたクレドールは意表をつかれ、返す言葉を見失ってしまった。

「こんな娘、初めてだ。」



その夜はベッドの上で、レイゼラはエイドリアンにお説教をされていた。

「挨拶はよかった、合格点をやろう。

それが、何故キープできない?」

「え!

挨拶合格点!やったー!」

ベッドの上で跳ねるように喜ぶレイゼラ。


「クレドール殿下の言葉など、適当に流せばよかったのだ。挨拶代わりの言葉だ。」

エイドリアンは、クレドールが本気でレイゼラを気に入ったのではと感じていた。


「はぁ、公爵夫人と認められるレディになるのは遠いです。」

がっかりしたレイゼラが、ワイン工場の再生が遠ざかると言う。

「昨日の再建案か?」

あのね、とレイゼラが瞳を輝かせる。

「立派な公爵夫人と認められたら、ワイン工場と販売の立て直しをしたいの。」


「ほぉ?」

それで、とエイドリアンがレイゼラに尋ねる。

「何をもって立派な公爵夫人と言うのだ?

誰が認めれば、認められた事になるのだ?」

「エイドリアン様かな?」

レイゼラが自信なさげに答える。


「私が認めたと言ってないのに、もう再建計画を出していたな?」

「案です!

準備だけはしといた方がいいでしょ?」

「フライングだな。」

ニヤッとエイドリアンが笑いながら言う。

「エイドリアン様?」

「可愛いな、レイゼラ。

今夜は何の勉強がしたい?」

プルプルと首を横に振り涙目のレイゼラは、エイドリアンを楽しませるばかりだ。

「お前が立派に公爵夫人をつとめたら、私も手伝ってやるよ。」

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