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貴婦人は優雅に微笑む  作者: violet
本編
11/65

レイゼラの決意

「ぎゃー!」

今朝もレイゼラは、エイドリアンに乗り上げていた。

「叫びたいのは、こちらですよ。」

身体を起こしたエイドリアンの雰囲気が違う。

髪をかきあげるしぐさが、色っぽい?

けだるげな身体が薬の影響か、と思ってレイゼラは気が付いた。

こけた頬が少しだが肉がついて、血色がよくなっているのだ。


「エイドリアン様、体調はいかがですか?」

「すこぶる良いですよ。昨日は食欲もあったし、身体が軽い。

すごい薬ですね、あのキノコは。」

「でしょ!」

エッデルブルグのキノコです、と大声が出そうになる。

「2年という長い間、動けなかったので訓練が必要でしょうね。」

不思議そうなレイゼラにエイドリアンが説明する。


「下半身が動かなくなって、生活の為の訓練が必要だった。

今度は、動かす為の訓練が必要という事ですよ。今朝は昨日より、足の感覚があるのです。

まだまだ、動けるという程のものではありませんがね。」

時間はかかるが、大きな希望が見えてきて、レイゼラに笑みが浮かぶ。

「食事に行きましょう、車椅子を押してください。」

「はい!」



食堂には、機嫌の良いパーミラが待っていた。

レイゼラは、早速、昨日カデナに指導を受けたことを話し出す。

「王太子妃の作法は洗練されてますからね、いい先生だわ。」

言いながらも、パーミラはレイゼラをチェックしている。


「今日は、クチュールを呼んでますからウェディングドレスの採寸よ。

日取りは公爵とエイドリアンで決めるでしょうが、2ヶ月後ぐらいと聞いてます。」

そうなんですか?とレイゼラはエイドリアンを見るが、片眉を上げただけだ。


「まずは、マッサージが半日。」

半日もマッサージって、すごいんですけど・・・

「歩き方、話し方の矯正もありますからね。」

やはり、そこはチェックされていたのですね・・・

「公爵家の系譜と、社交の勉強。」

パーミラが楽しそうに、あれこれと予定を話すのを、レイゼラは覚悟を決めて聞いている。


「あんな楽しそうなパーミラは久しぶりに見たよ。」

公爵がエイドリアンに耳打ちする。

「レイゼラは素直ですからね。気に入ったのでしょう。

父上、内密な話があります。

登城前に時間をいただきたい。」

エイドリアンはエッデルブルグ領を公爵家で管理するつもりでいる。

ジャクランがアカザサと同じとなれば、万能の毒消しということだ。

昨夜、エイドリアンも服用したが、明らかに身体が違う。効能も速効性も抜群である。




痛い、ベッドでうつ伏せのレイゼラは声が出そうになるのを抑えていた。

さっきから香油とマッサージの繰り返しで、身体中揉み込まれている。

痛いけど気持ちいい、畑を回り、赤字になったワイン工場のやりくりでレイゼラの身体には疲労が溜まっていた。

うつつ、と寝かかったレイゼラが目を覚ましたのは、激痛が走ったからだ。

「奥様、レイゼラ様の足裏は時間がかかりそうです。」

「まぁ、お昼の後はクチュールを呼んでいるのよ。」

横目でレイゼラを見ながら言う公爵夫人の姿は、エイドリアンと同じ横顔、やはり親子だ。

レイゼラが痛みにもんどりうって耐えているのを、楽しそうに見ている。

「少しは姿勢の矯正ができたかしら、この娘ったら手入れが全然なんですもの。」

ウェストは後2センチ細くしましょうね、と声をかけられ、レイゼラはガンバリマス、と返事するしかない。


お昼に行くのもレッスンが続く。

「いいですか、私の真似をするのです。

歩くのに上半身は揺らさず、優雅に。

レイゼラは跳ねているみたいで、可愛いけど、それは公爵邸の中だけね。」

人差し指を立てて口元に持っていくパーミラは妖艶である。

「はい、お義母様!」

「でも、私の前では跳ねていていいのよ。」

どうやら、公爵家では、レイゼラはペット枠のようだ。


ウェディングドレスのドレス選びでは、パーミラの力の入りようがすごい。

「女の子がいて良かったわ。」

息子の結婚式だが、気分は花嫁の母なのだろう。

「いくらかかってもいいから、2ヶ月で仕上げてちょうだい。」

ドレスの裾に真珠を散りばめると言うのを、レイゼラが丁寧に断る。

公爵家恐ろしい、値段の桁が違う。裕福な子爵家で育ったとはいえ、レイゼラは労働を知っている。

事件のあと、ワインの発注がなくなり、清貧な生活をしたので、尚さらである。


セルディは、自分とワイン製造をしてくれるつもりでいたのかな?

エイドリアン様は絶対にしないと思う。

「お義母様、私、ゆくゆくは実家のワイン製造を引き継がねばならないのです。

弟は幼い頃になくなったので、子供は私一人なのです。」

「貴婦人のワイン、ステキね!」

でもね、とパーミラが付け足す。

「公爵夫人として認められてからよ。」


私は考えてなかった。伯爵家に嫁いでもワイン製造が続けていけると思っていた。伯爵家の領地収入よりワイン収入の方が多かったから、(おご)っていたのかもしれない。

そのワイン収入も今は微々たるものだ。

エッデルブルグの両親はまだまだ元気だから、私が立派な公爵夫人になるまで頑張ってもらおう。

公爵夫人と認められるようになったら、ワイン工場の立て直しの許可をもらおう。

よし!と手を握るレイゼラを、パーミラは、あらあら可愛いと見ていた。


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