1:旅立ち
「魔王」
それは人間が幼い頃に勇者や王様になる事を夢見るのと同じように、モンスターの子であれば一生に一度は夢見るもの。
これは1匹のゴブリンが魔王と呼ばれるようになるまでの冒険そして成長物語である...
「俺は魔王になるんだ!」
俺は今日も高らかに宣言する。
「リードのやつまーた言ってるよ。そろそろ諦めて家の手伝いでもしてやればいいのに。」
「そうさ。なんてったって魔王になるためには勇者を倒す必要がある。そんなもん、雑魚種族の俺達ゴブリンじゃ夢のまた夢だぜw」
「毎日毎日うるせぇなぁ。どうせ口だけだろ?」
この世界にはモンスターと人間が存在し、モンスターには様々な種族が存在している。ゴブリンはその数多くの種族の中でも最底辺の強さだ。
そんなことは分かってる。それでも俺は魔王になりたい。ゴブリンは雑魚だと笑って馬鹿にする人間を、ほかの種族を見返してやりたいんだ。
「よし...!」
ある日俺は村を出た。
そう。もちろん勇者を倒し魔王になるために!
「____とかなんとか勢いだけで村飛び出してきちゃったけど、どうやって勇者なんて倒すんだ?うーーーん...やっぱ強くなることからだよな!とにかく修行だ!修行!」
俺はその辺に落ちていた木の枝を拾ってぶんぶん振り回してみる。
ゴッ!
「ん?なんかにぶつかったぞ。なんだこれ?」
俺は生い茂った草木の中で地面に刺さったそれを見つけた。
「剣...か?」
俺はその剣らしきものを引っ張ってみる。
「んん〜っ…!抜けねぇー!!」
全力で引き抜こうとしてもビクともしない。
俺が諦めてその場から離れようとした時、声が聞こえてきた。
「ほんとにこんな森に昔の勇者様の剣があるってのかよ。」
「間違いねえって。俺はハルク様達が話してるのをたまたま聞いたんだよ。その剣さえありゃ俺だって勇者様みてぇに強くなれるかもしんねえ。こんなチャンス二度とないぜ。」
____人間だ。
全身が凍りつき、冷や汗が滝のように流れているのがはっきりとわかる。時間が止まったみたいだ。人間は魔物を殺して生計を立てている恐ろしい生き物だと母親から教えられてきたが、実際にこの目で見ると自身の2倍ほどの身長を持ち、鎧を着、剣を携えて武装されている。あぁ、なんて恐ろしいのだろう。
「逃げなきゃ...!」
はっと我に返り。俺は走り出す。
ガッ
蔓に足をひっかけ、あろう事か俺は転んでしまった。
「しまっ...!」
「誰だ!!!???」
気づかれた。こっちに来る。
やばいやばいやばいヤバイヤバイヤバイ。
心臓がはち切れんばかりの速度で鼓動する。
「ゴブリン...か?1匹じゃなんも出来ねえ雑魚モンスターの癖になんでこんな所に?まぁ。いい、ゴブリン換金可能モンスターだ。少しは金の足しになるだろ。一応殺しとくか。」
(あっ。俺死んだ...)
心の中でそう思う。目からは自然と涙が零れる。
甘かった。覚悟が足りなかった。
やっぱりゴブリンが魔王になるなんて夢物語に過ぎなかったんだ。激しく後悔する。
でも...でも...!
ブンッ
剣が振り下ろされる。
俺は不意に目を瞑る。
ガギイイイイイィィン
金属音が鳴り響く。
「あれ...?俺、生きてる...?」
涙で滲んだ目を薄く見開くと、何者かが俺の目の前に立っている。恐らく彼が俺を助けてくれたんだろう。
「なぜ、ただ殺されるのを待ちなんの抵抗もしないのだ。何かを成し遂げたいのならば行動しろ!剣を取れ!」
そして
「「「闘え!!!!」」」
そう叫んだかと思うとそいつは居なくなっていた。
俺は無意識の内に剣らしき物に手をかけて、力の限りそれを引き抜いた。
何故だろうか。さっきは全く動かなかったそれは、あっさりと抜けた。剣を手に取っているとなんだか力がみなぎったような感じがする。
「うおおおおおおおおおおおおお!!!!」
俺はただ無我夢中に飛びかかる。
「ひっ...でもよぉ。ゴブリンごときが剣を持ったところで人間様に叶うはずねえ!」
____ザンッ!ザシュッ...
気づくと俺の足元にはさっきの人間が2人ころがっていた。
石のようにピクリとも動かない。
「俺が倒したのか...?」
自分でも信じられない。けど、それ以外ありえない。
「うほおおおっ!やった!やった!ゴブリンだってやればできるんだ!この剣があればなんでも出来る気がする!俺は魔王になるんだーっ!」
こうして、俺、リードは魔王になるまでの長い長い道のりのスタートラインに立ったんだ。
初投稿なので色々アドバイスなど貰えると嬉しいです!