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小学生の恋物語。 第二部  作者: けふまろ
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想う人特有の言い争い。

 加奈先輩を保健室で見かけてから、数日が経ったある日のこと。


 ついに知られてしまった。

 加奈先輩が転校してきたことを、想太君に。


 初めは美咲先輩が「今日マジで大変なことが起きたのよ~」と莉以君に喋ったのが原因だった。加奈先輩側の都合で、学校に「転校して、またこっちに戻ってきました」という説明をしないでほしい、と言うのを取りやめてほしいと連絡が入ったらしく、以降、六年生だけしか加奈先輩が戻ってきた事実を知らないのだが、美咲先輩が「誰にも言っちゃ駄目よ? 特に想太君には」と莉以君に口止めしていた。

 だが莉以君というものは素直であり、加奈先輩が好きだったことから、めちゃくちゃ嬉しそうな顔をしていたのである。それを想太君が「莉以、何かあった?」と問いかけることになり、莉以君は「何でもない」と必死に隠すのだが、想太君が懇願すると、「誰にも内緒な?」と莉以君はヒソヒソと話を始めたのだが……。


 もちろん、大好きな人が戻ってきたとなると想太君が大人しくしているわけでもなく。

 授業の合間の五分休み、しかも終了まで一分しかないのに、ダッシュで六年生の教室まで行くことになって。

 皆大騒ぎで、想太君の後をつけていくことになり、そこで六年生の教室で加奈先輩を見付けるまで至ったのです。


 はい、まさに今、その状況ですね。


 想太君は「加奈、いるかーっ!?」とお目当ての人を探している模様。


 想太君は果たして気が付いているのかな。

 加奈先輩の髪型は、もう愛らしいツインテールではなく、ショートカットなのだということを。

 可愛らしい笑顔が、戻ってきたときにはもう、冷めていたということを。


 十月に会った加奈先輩とは、全然違う人だということを。



「えっ、加奈だって」

「大丈夫かよ、砂月」

「あれって、砂月が付き合ってるって噂の森川だよな?」


 もちろん、六年生の人達は、話しあう訳で。

 そこに、ツカツカと歩み寄ってきたのは、二人の女の子、紗枝先輩と、想太君に知るまでに至らせてしまった当の本人、美咲先輩。

「想太君? 六年に何の用?」

 初めに声をかけたのは美咲先輩。その顔にはしっかりと「絶対莉以何か言いやがったな」という表情が貼り付いている。そうです、莉以君がしでかしましたよ。

「委員会の話かな? それともクラブの話?」

 紗枝先輩が穏やかな口調で言う。優しげな瞳が想太君を見つめているが、その顔には、一つの可能性がせわしなく動いている。

「加奈が帰ってきたことを、想太が勘付いたかもしれない」という可能性が。

 勘付くどころか、既に知られちゃっていますけどね。

 そのことを知ってて、二人は言っているんだよね?


「違います、加奈に会いに来たんです。加奈、戻ってきたんでしょう?」

「はぁ? あの野郎莉以あのクソ野郎……」


 美咲先輩は舌打ちをしている。それを紗枝先輩がなだめる。

「まぁまぁ、莉以君も嬉しかったんだよ、きっと」

 紗枝先輩、貴方も結構冷や汗垂らしていますけどね。


「それで!? 加奈、どこにいるんです!? 女子トイレですか?」


 想太君が美咲先輩や紗枝先輩に惑わされずに叫ぶと、二人は途端に困ったように顔を見合わせて、「それは……」と口ごもった。

「加奈、戻ってきたんですよね? なら何で俺に顔を見せないんですか? 全校朝会で話さなかったんですか? 転校生、普通紹介されますよね?」

 詰め寄る想太君に、二人は何も言えずに黙りこくっている。



「加奈さん、君に会いたくないんだって」



 遥先輩が二人の後ろから現れて、冷めた表情で言う。

「……は?」

「だから、会いたくないんだよ。彼女、こっちに戻ってきたとき、すごく元気なさそうだったんだよ。こんな姿、想太には絶対見せたくないって、泣いてた」

「はぁ?」


 想太君に会いたくない、と言われて、想太君はショックを受けたのか、かすれた声を出すしかなかった。

「……本当に、転校前の加奈さんと今の加奈さんは、変わり過ぎている。僕らが下手に口を突っ込むことじゃない。美咲さんや紗枝さんも、口を突っ込むべきじゃない」


 恐らく、それは今の加奈先輩の髪型のことを言っているのだろう。

 遥先輩は神妙な面持ちで想太君を見据える。

 六年生しか知らない加奈先輩の異常に、想太君は「何だよ、俺だけのけものみたいに……」と独り言を呟いた。

 それに気付いた遥先輩は、想太君を睨みながら言った。


「もちろん、お前もだよ、想太君?」


「……あぁ?」

 まさかの完璧で才能あふれる遥先輩から、「お前」という呼び方が出るとは、誰も想像は出来なかった。

 もちろん想太君も、まさか「お前」と呼ばれるとは思わなかったため、反応が数秒ほど遅れた。

「……加奈が嫌がることはしないよ。でも、変わり過ぎているって何だ? 何で俺に教えてくれないんだよ」

 どうやら、先輩の前で怒る気にはならなかったようだ。顔がクシャッと歪んだだけで、それ以上何も追求することはなかった。



「もうちょっと後になってから知った方がいいと思う。加奈さんが戻ってきただけで大騒ぎする奴に、今の加奈さんのことは教えられない」



「はぁ?」

 顔が歪むだけでは物足らず、想太君は足を踏み出す。

 殴りかかろうとしているみたいだ。

「教えられないって何なんだよ!」



「ちょっと!」



 あたしは思わず、想太君を止めようと、想太君の腕を掴む。

「……は?」

「あ」

 今更自分がした恥ずかしい出来事に気付き、頬を赤らめる。

 美咲先輩や紗枝先輩、更には遥先輩、そして想太君までもがあたしを見つめていて。

 恥ずかしくて死にそうだった。穴があるなら入りたい。

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