戻ってきた理由は?
久しぶりの投稿。相変わらずの五年生の頃のペースでございます。
あり得ない。あり得ない。
何で加奈先輩が帰ってくるの。
帰ってこなくても、いいのに。その方が、あたしの恋、叶うかもしれないのに。
何で加奈先輩は、帰ってきたの……?
ガラガラ。
教室のドアを開けると、皆の目が一斉にこちらに向く。
ぎくり、と顔を強張らせ、皆の視線が集中する中で、あたしは席に座る。
どうか、加奈先輩が戻ってきたこと、想太君だけには、知られませんように!
「お帰り夏鈴! 大丈夫だった?」
帰ってくるなり三雪ちゃんは、あたしの机に駆け寄ってくる。……え? 駆け寄ってきていいの? と思い、時計を見ると、なるほど、下校時間、帰りの会の途中か。
あたしは「うん」と頷き、席に座る。五年三組では、帰りの会立ち歩きOKだから、結構自由なんだよね。
「もう、授業まるまる二時間ぐらいサボっちゃったね」
「そうだね~。ってか、教科係、あたし、何になったの?」
「算数。……あ、大丈夫だよ、夏鈴、算数苦手だもんね? 計算ドリルとか集めるだけで大丈夫だから」
あたしの顔が曇ったことをいち早く察してフォローしてくれる三雪ちゃん、さすが三雪ちゃん。
「計ド集めるだけで、あとは大丈夫だよね?」
「うん。基本的に「国語、社会」「算数、理科」でまとめられるからね。……ウチ、理科だから、一緒に行動しよう?」
……ほっ。
想太君と四六時行動することにならなくて、ホッとした。もしそうだとしたら、心臓がいくつあっても足りないぐらい破裂しちゃいそうだ。
「でも、名塚じゃなくてよかったじゃん。あいつ、あぁ見えて目立ちたがり屋だから、夏鈴、すごく疲れると思って」
「まぁ、確かにね。名塚さんは、疲れるかも……」
名塚さん、と言えば、結構大暴れしてもおかしくないパターンの人だ。
一学期の終わりのお楽しみ会の「このチャイムは何でしょうクイズ」で、学校のチャイムやらLINEの音楽にまぎれて「国家非常事態宣言(大東亜戦争、もしくは太平洋戦争開戦のチャイム)」を流した一時伝説となった生徒である。
「あっ、今、想太君じゃなかったって、ガッカリしたでしょ」
「え~? してないよ~」
「嘘つけ。絶対した」
「も~」
何故だか、この時間が続いてほしいと思った。
どうかこの状況がずっと続いてほしい。加奈先輩のことなど気にもせずに、想太君とまた笑い合っていたい。
そんな時間が続かないことは、分かり切っていたはずなのに。