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第三回 『たかが世界の終わり』PG12 ー フランス現代劇の映画化。フランスの香りはいかがです? ー

前回に引き続き、今年の映画です。

『たかが世界の終わり』

2017年 カナダ・フランス カラー PG12

グザヴィエ・ドラン監督作品





 カナダ・フランス合作映画ということで、フランス映画の香りがプンプンする(←この擬態語オノマトペだとフランス感が伝わらない?)映画です。

 原作もフランス。ジャン・リュック・ラガルスの現代戯曲です。ちなみに、戯曲の邦題は『まさに世界の終わり』。

「たかが」と「まさに」って、日本語としてはだいぶ違うような気がするけれど、原題(フランス語)は同じなんだよね。てことは、英題は「just」で始まるのかな、と思いきや、

『It's Only the End of World』

 うーん、難しい……。



 さて、まずは筋の紹介を簡単に。


 作家のルイは家族と離れて暮らしていたが、自分の死が近いことを知らせるため、家族のもとを訪れる。

 家族構成は、ルイの母親、兄、兄嫁、そして妹。

 しかし、彼はなかなか本題を切り出せず……。

 そして、突然のルイの訪問に、家族は狂わされていく……。


 家族という特別な、しかしぎこちない関係を描いたヒューマンドラマ。




 ええと、筋の紹介はこの辺にしておいて、特筆すべきことを。



 まず、歌の使い方。


 この映画には、『Home is where it hurts』(カミーユ)を始めとする楽曲が効果的に使われています。


 ここで私が効果的というのは、「シーンを盛り上げるBGM」という意味ではないのです。

 もはやこれは、脇役じゃない。

 字幕で観る場合、歌の歌詞も日本語字幕として出てくるのですが、それぞれの曲の歌詞が、流れる空気を代弁しているのです。

 登場人物本人たちが語りにくい心の内や空気感。だからこそ、それを他人の「歌」で表す。これは、例えば登場人物が直接心情を歌にする場合ともまた違う、独特な効果があると思うのです。


 もちろん、エンディングにテーマとなる曲を流すという手法であれば、珍しいものでもない。

 けれどこの映画の劇音楽は、映画のテーマを盛り上げ、また、繰り返すためのテーマ曲とは違います(もちろんこの映画にも、そのようにエンディングで流れる曲もありますが)。歌自体が一つのシーンの要を担っていると言っても過言ではないのです。



 ……なんだか、この映画特有の珍しい手法、みたいな書き方になってしまいましたね。

 でも実は、フランス映画では、このような歌が効果的に使われるシーンのあるものも結構あって、例えば、第一回でご紹介した『女は女である』では、『のらくらもの』(シャルル・アズナブール)が使われていたりします。そう、だからこそ、「フランス映画の香りがプンプン」なのです(おわかりいただけた?)。




 さて、もうちょっとお付き合いください。


 これは前述の通り、家族の映画なのですが、マリオン・コティヤール演じるカトリーヌという役は少し事情が違います。彼女は確かに家族ではありますが、ルイの兄(原作では弟)アントワーヌの妻であり、ルイとは初対面でもあるのです。

 ルイの親・兄妹の様子を一歩引いた目で見ているカトリーヌ。そんな彼女だからこそ、ルイへの接し方も一味違ったものとなり、空気感に深みが増すのです。




 いや、空気感だのなんだのと、そんな曖昧な表現で申し訳ない。だけど、そういった繊細なふわふわとした言葉こそ、かえってこういう映画にはふさわしいのではないかな、と思ったりもします。ちなみに、戯曲のほうはもっと象徴的になっていますが、そちらもオススメです。



 今回はこれで。次回もお楽しみに。





なんだか、日仏を行ったり来たりしそうな感じだなあ……。


でもいずれ、アメリカ映画なんかも……、出てくる……、かな……?

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