第十二回 『のぼうの城』 ー 人物が素敵。こんな石田三成像、滅多にないよ ー
『のぼうの城』
2012年 日本 カラー
犬童一心・樋口真嗣監督作品
どうも、お久しぶりです。
「一ヶ月以上更新され……」みたいなのが出ると嫌なので、そろそろ更新です。
さてと。
前々回からフランス映画が続いているので、ここで日本映画を挟もうと思います。その名も、
『のぼうの城』
これはですね、17世紀末、豊臣秀吉の小田原北条氏征伐の一環として行われた忍城攻めにおける攻防を描いた歴史ものなんですね。主人公は忍城方の総大将・成田長親。
まあ、歴史ものというのは、史実を基にしたフィクションであり、また忍城攻めに関する資料にも最近になってようやく出てきたものもあるため、そういう心づもりで観てくださいね、って、それくらいわかるか。
具体的に申しますと、石田三成の水攻めへのモティベーションとか、そもそもあの城を水で囲んで……なんてことが可能だったのか、など。って、それくらいわかるか。
え、わからない? まあいいや(笑)
ええとですね、どこから話そう……
そうそう、私、石田三成という人物が好きなんですよ。
豊臣政権におけるトップ官僚で、太閤秀吉の死後、徳川家康と関ヶ原で戦って破れ、処刑されたあの石田三成です。
ドラマや映画で観る石田三成というのは、悪役と善良な役と二種類あるのですが、私はなんだか、どちらにも共通する魅力があるように思えるんです。「切れ者」という雰囲気だったり、何かを為そうという意志だったり。とにかく、バイタリティーに溢れたイメージがあるんですよね。
で、この映画の石田三成は、上地雄輔氏の役所となるのですが、これがまたおもしろい。
忍城攻めというのは、三成が豊臣勢二万を率いて、わずか五百の兵で守る敵城を落とせなかったという、三成にとっては非常に外聞の悪いエピソードなのですが、この映画はそんなことは感じさせない、不思議な映画なのです。
あの……、第一の主人公は野村萬斎氏の演じる成田長親(領民からの愛称 のぼう様)なのですが、三成側から語っていきますね。
長親の魅力に関しては今回は語りませんが、観て、存分に感じてください。この二人の人物、両方そろってこその『のぼうの城』ですから。
ええ、三成は、軍勢を率いて手柄を立てたという話があまりなかった武将なのですが、今回に限っては大軍を任されることになるわけです。
けれど、真っ直ぐな性格の持ち主である彼は、大軍に怖気づいて当然のように降伏してくる敵を見るのがおもしろくなかったのですね(たしか、忍城の前に他の北条氏支城が降伏を……というシーンがあったはず)。
そこで三成は一計を案じます。敵方がすんなりと降伏を申し込まぬようにと。まあ、何をしたかは、映画を観てのお楽しみということで……
とにもかくにも、挑発に乗ったのぼう様率いる忍城方は、開戦を決意してしまうのですね。
三成にしてみれば、自分が戦をしてみたいという気持ちもあったでしょうし、何よりも、豊臣方の力と専横に屈することなく立ち向かってきた敵方に真の人間を見た心地がして、本当に嬉しかったことでしょう。
まあ、忍城というのは東国にありますから、数には劣れど、初戦から坂東武者の強さを見せつけます。おー、こりゃ強い。
そこで三成は、水攻め(かつて主君秀吉が備中高松の城を大量の水で囲んで孤立させるいう大掛かりな戦法を取ったことがあり、若き三成はそのときの感動を鮮明に覚えていたのです)にて忍城を落とすことを決意するわけです。
本当にこの映画の三成は、戦に対して意欲的で、でもそれは弱き者を蹂躙したいという残酷な心からではなく、さあさあ立ち向かってこい、というような、人間に対する愛にも似た興味からなのです。
まあ、結果から見れば、多くの血が流れたという点でなんともいえないことなのかもしれませんが、それでも、そういう三成の真っ直ぐなところに観客である私たちは惹かれるわけで……。
まあね、結果的に水攻めは失敗して忍城は落ちることなく、肝心の主家・北条家が豊臣方への降伏を申し入れたことで戦は終わったのでした。豊臣方の攻めた北条家の支城で最後まで持ちこたえたのは、忍城のみ……。
でも、三成は満足です。そればかりか、嬉々としてと敵城へと乗り込み、総大将成田長親と対面したのでした(あ、落ちなかったとはいえ、主家が降伏したわけですから、忍城としても自然、降伏して城を明け渡すことになるわけで、その際の豊臣方からの条件を伝えるための使者として、彼は乗り込んでいくわけなのですね。本来は総大将の三成が自ら行くなんてことはしなくていいのですが、それでもこの人は行っちゃうのです。どこまでも無邪気なお人……)。
さてと。
そんなこんなで、二人の総大将の対面があって、戦後の忍城のシーンがあったりして、エレファントカシマシ氏の歌うエンディングが流れて、この映画は幕を閉じるわけですが……
いや、まだ語りたいことが残っているのです。
のぼう様と三成、この二人の作り込まれた人物像というのも魅力的なのですが、この映画、脇役がまた魅力的なのですね。複雑に作り込まれた主役級の人物と違い、シンプルでキャラクターがはっきりとしている。
忍城方では、勝気な乙女・甲斐姫や、猛将・柴崎和泉守、軍略の知識を書物で身につけた若武者・酒巻靱負など、
豊臣方では、三成の理解者・大谷吉継、専横さの目立つ長束正家など。
シェイクスピアでいうなら、『オセロー』のキャラクター造形がそうですね。シンプルではっきりとした役所。非常にわかりやすい。キャラが立っている。
まあ、そんなところもあり、非常におもしろい戦国エンターテインメントに仕上がっています。
この映画はね……、本当に好き。
では、また。




