ヘッジホッグ@ガール:03
お久しぶりですライルです、と言うか通称、師匠です。
え?あんた誰だって?イカンね~、何でも聞くより調べる習慣を身に付けないと!
それにしてもうちの家主は人使い粗いよなぁ。
だって昨日まで自分が管轄してた国まで定期便の書簡を届けさせといて、休ませる間もなく帰ってこい、とか無茶苦茶言いやがるし……。
こちとらやっとこ時間と金の余裕も出てきたから、たまにはラクシャ誘って街の服屋にでも買い物しに行こうかと思ってたのにさー。
あー、しんどい。
……この世界に流れてきて、もう七年か。
早かったような、短かったような。
でも、まぁ、今は、
……、?
なんだ?悲鳴……?、
この声……、
まさか、いやいや、
え?に、日本語!?
あんま久々に聞いたから思い出せなかったけど、こりゃ、確かに日本語だよな!
てかあそこ、土煙上がってるよな。
どう聞いても若い女の子の声……だよな。
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「マリ!落ちる!早く逆噴射!!」
「いやーッ!この身体にバーニアなんかある訳無いよッ!!」
「落ち着いて!パラペラントボックス……じゃない棺桶ん中に緊急用パラシュートある!!」
一緒に落ちる棺桶には、気付けば繋がるロープが腕に絡み付いてるから、これをこう、手繰り寄せて……
「早く!早く!横のボタン……あった!それ押して!」
ロープを腕に巻き付けて、横にあるボタンを押した瞬間、棺桶の後ろから白い帯がビュッ、と延びていき……
……ボンッ!!と音を出しながら広がるパラシュート。
ホッとしながら棺桶にしがみついてたけど、気付いたら大地にみるみる近付いていく。
風に流されながら、緑濃い草原のまっただ中に落ちていき……
「マリ!脚揚げて!あんた120キロなのよ!?そのままじゃ地面に」
「や!何コレ!?爪先めり込んじゃう!土が柔らか過ぎてありゃりゃりゃ?」
わーわー言いながら横倒しになり、パラシュートはそのまま風に流されて風下に、そして私は風上に。
はー、ここどこなんだろ?
「マリ、誰か人が近付いてくるよ!?あんた服がまだよ!!」
「あ~!どうしよどうしよ!!てか人って敵!?味方!?」
「うぉ!!パラシュート!て、ことはあ!!」
「あ、日本語!!」
風下から日本語を話す男性が近付いてきた。
しょーがないからとりあえずしゃがみながら、片手で何とか胸を隠しええっわわわ……
「ちょっとちょっとマリ~!、面白いもん見られるわよ♪」
私は必死になってあたふたして、でもラミの言葉を不思議に思って何がなのよ……それどころじゃないんだけど!と見てみると、
その男のヒトは正座しながら、後ろに倒れながら、……器用に失神してました。
なんでなのよッ!
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「いやそりゃこんな野原のど真ん中で、懐かしい故郷の言葉を聞けばホイホイ行っちゃうのが人情ってもんでしょ?」
それはそーなんどけどさー、
「だから、こっちもなんというか、その、あれだ。服を着て欲しいのですわ。」
うん、そうしたい。
この男のヒト(ライルと名乗ってるけど日本人にしか見えないや)が後ろを向いてる間に、野営用シートを折り畳んで胸元から巻き付けて、最後は箱の中にあったカモフラネットの網目を少しほどいて紐替わりにして……
「丈以外は問題ないと思います、ハイ。」
振り返ったライルさんに言われなくても長過ぎるのは判ってますよ、えぇ。
「ま、町まで行けばなんとかなるから、さっさと向かいますか!」
多少変わってる人だけど、たぶん悪い人じゃないと思うな、私。
「あんた、相当に用心が浅いじゃないの?」
ラミ、疑い出したらキリがないわよ?それにもし乱暴されそうになっても、
「ハイハイあなたは戦闘サイボーグ、生身の人間になんて、遅れをとることは有り得ないわね。」
そーゆーこと!さて、当面の目標が出来たよ!
「ん?当面の目標?」
そう。この世界がどんななのか、まずは知ることが先決でしょ!
「はいそーですね正論ですねそーですね。」
むっかつくわぁー何か。まぁ、今は先行くライルさんに付いていきましょ!
「しっかしマリさんだったか?アイドルも霞む位カワイイけど、なんで裸で落ちてきたんだろ。不親切過ぎだろ童貞相手に……。」
因みに上着は貸してくれました。町についたものの面倒だったからそのまま店に向かいました。
女物の服なら山程あるしね。