ヘッジホッグ@ガール:00
16才の戦闘サイボーグは果たして何を見て、何を感じるのか。
「マリ!チャフの陰から出ちゃダメ!!」
頭の中にキンキンとしたラミの声が響く。
視界を覆う煙の尾を曳くフレアが放射状に拡がり、数百の線を見せる中、私は長い降下用被膜から圧縮空気を出しながら、それらと速度を合わせながら落ちていく。
煌めくチャフが埋め尽くす大空を、ゆっくりと落下する私の周囲に時々掠める大出力の放射ビーム。あんなの直撃したら一瞬で脳ミソが沸騰しちまうわ~。
他人事みたいに思いながら、でも頭は冷静に情報処理を続ける、クールな自分を自覚する度に、あぁ、私ったら戦闘サイボーグに成りきってるのかぁ、と実感してる訳で。
やっとこ目標の巨大な穴が見えてきた。
あの中に、先に降下した先発の7機が居るのかもしれないんかぁ。あーしんどい。
「マリ、ステルス迷彩の効果は有効みたいだね。でなきゃあのイソギンチャク共はワシャワシャ迎撃してきてる筈だかんね?」
そのワシャワシャしてる筈の機械なイソギンチャク達は静かに蠢くだけ。
一体どんだけのイソギンチャクがぐちゃぐちゃわさわさしてるんだか……。
さて、随分と降下も続いているけれど、ほんと活きているみたいだな。
金属で出来た生き物、ねぇ。
私と変わらないって訳か。もしかしたら、ステルス解いても問題ないかも?
仲間だったら排他的な行動にならない可能性も……
「マリ、なーんか、変なこと、考えてない?」
ラミ、あんた勘良すぎ。ほーんと他人の気がしないってか、ほぼコピーみたいなもんだし。
さて、殺し合いになることもなく、緩やかに降下し続けるけど、いつまでこーなんだろ。
ビーム出して落下する全てを破壊し続けてきたコイツらも、きっと何か考えてこーしてるんよねぇ…
と、あれ?
なんか、イソギンチャク達、なんか、少しだけ、見た目が生き物っぽくなってきたような……?
「マリ、油断しないで……、何か、おかしい感じ、する。」
ラミが今までと違い、やけに低い声で話す。
判んないけど、確かに見た目が変わってきてる気も、する。
「マリ!注意して!下方に高エネルギー反応……、え、おかしい…これは、まるで……、」
ラミが戸惑うのは、判るよ……だって、下が明るいもん。
「これ、これ……、ビック、バン…」
光に包まれたまま、吸い込まれて……
「え?マリ!私達空に居る!!!」
私はいつの間にか、頭を下にして、真っ逆さまに落下していた。
異常事態に反応し、身体の上下を修正して周囲を確認する。
ついさっきまで地底の穴に落ちていたのに、今は青空の下、緩やかに地上へと降りていって……、
「ウソ……ここ、どこなの!?」
GPSは沈黙し、現在位置も現在時刻も表示されない。
はぁあ……。こりゃ、困ったね。
取り敢えず、私の仕事をまず始めますか。
なんたって、長距離偵察任務が仕事なんだから。