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4 濃霧

4 濃霧


KP「朝になったね。本日は何と霧だ。季節は夏とは言え、さすがに気温はちょっと肌寒い」

ダン「山は気温差が激しくなると簡単にガスが出るが、それでもそんなに標高高くないだろ、ここは」

氷室「異変なのかこれ」

ヒカリ「タダの朝霧、ではない?」

KP「濃霧も濃霧。何しろテントを設営した場所から炊事場までそう遠くないのにはっきりと見えないんだ」

ヒカリ「真っ白って事ですか?」

KP「そう、白いね。一瞬壁かと思う程だ」

ダン「霧の中から怪物が出てくるか?」

氷室「サイレンと霧とか最悪の組み合わせだな」

ヒカリ「???」

KP「ゲームのSIRENとサイレントヒルか。ちなみにサイレントヒルの映画第一作はサイレンが鳴ると異界化するんじゃなかったかな?」

ダン「ああ。一番恐ろしいクリーチャーが用務員だと言う。いやもう三角様に謝れ」

氷室「あの国はペドフェリアに厳しいからなあ」

ヒカリ「いや、普通に犯罪ですけど」

KP「レッドピラミッドシングは映画版のデザインが人気らしいけどね。さて、朝食はお湯を沸かしたりして昨夜の残りと簡単なインスタントで済ませたとしようか。それから今日の予定を決めよう」

ダン「食事中に霧の具合は?」

KP「収まる様子が無い」

ダン「……普通なら気温が上がれば霧は収まるんだが……まるで夜中のサイレンで霧が吹き出たみたいだな。それか、川?」

ヒカリ「え?」

氷室「うーむ」

KP「ちなみに須賀は昨日の続きをすると言っている」

氷室「この状況で山歩きとかやばくないか? 霧だぞ霧」

KP「須賀としては研究の為に来てるから何かしら成果が欲しいんだよね」

ヒカリ「遭難する人ってそんな感じなんですかねー」

KP「スキー場で遭難するボーダーとかそんな感じかも。目の前の事しか見えない」

氷室「大概ゲレンデ外に出るからな。雪国の人間なら絶対にやらない」

ダン「うーん、付き添いたいんだが」

氷室「こっちは情報収集で役場に行きたいんだよな」

ヒカリ「あとは今日のご飯の確保ですよ」

ダン「運転免許は氷室にもあるけど、〈運転(自動車)〉を使う事になったらマズイかもしれない」

氷室「でも、調べ物には俺が行った方が良いわけで」

ダン「そうなると須賀さんと行動するのはヒカリちゃんになる」

ヒカリ「いや、いやいやいや! 無理無理無理! 私ヒーラー! スーパーJKだけど!」

ダン「……むう」

KP「さてさて、異変は起きているかもしれないまだ起きていないかもしれない。よく話し合ってね」

ダン「……くっ、珍しく序盤からがつがつしないと思ったらそう言う流れか」

氷室「ホラーなのに中盤までこれと言って何も起きないような感じかな」

ダン「クトゥルフなのに何が出てくるのかもまだわからん。クリーチャーすら見てない」

KP(おや珍しい。まあこの時点で分かったら動けなくなるもんなあ)

氷室「山間の謎のエリア。霧。川の水の異変」

ダン「ごくごく普通に大概の神格でどうにでもなりそうだな」

氷室「情報が欲しいなあ。たぶん鉱山があったとかそう言う感じだと思うんだけど」

ダン「鉱山? あ、そうか、川の水もそうなのか。となるとクトーニアン……いや、まさかシュド・メル?」

氷室「クトーニアン出すならシュド・メルまで出すよねえ」

ヒカリ「くとーにあん? しゅど、める? ええとクトゥルフ様のご親戚でしょうか?」

ダン「まあクトゥルフ神話の旧支配者って親戚関係多いけどね」

KP「大概ヨグ様とシュブ様が関わるからねえ。まあクトーニアンはそう言う関連ではなく生物と言うか芋虫のイメージだね。近いのはミミズと言うか、モンゴリアン・デスワームかな」

氷室「UMAだろそれは。まあクトーニアンと滅茶苦茶共通点有るけど」

ヒカリ「どっちにしても会いたくありません」

ダン「でもクトーニアンって水弱点だったかな。一番有名なのが地震で、あとはシュド・メルが開ける空間の穴。霧って言う要素は無い筈なんだが……」

氷室「水源地があるなら、グラーキの可能性もある」

ダン「まんまSIRENになるけどな」

ヒカリ「そうなんですか?」

ダン「イングランドの湖に住む旧支配者グラーキは、人間を殺して生ける屍に変えて下僕として操る能力がある。簡単に言うとゾンビ製造能力。ただし感染力は無く、グラーキ自身による攻撃が必須」

ヒカリ「でもでもイギリス在住なら関係無いですよね」

氷室「ところがどっこい。一定量の水がある場所、例えば湖とかなら召喚可能と言われる。無論、何かの間違いで召喚しなくてもやって来る事もある。ちなみに、姿形はチョウチンアンコウによく似ている。山のように大きく、空飛ぶけど」

ヒカリ「来なくていいです!」

KP「さて、話を戻すけどどうする?」

氷室「むう。やっぱり俺が可能な限り安全運転でヒカリちゃんと一緒に役場に向かうのがベストかな」

ダン「……須賀さんを一人にはできないな。一人にしたら絶対帰って来ない」

KP「いやーそれはどうかなあ」

ダン「正確に言うと、生きて帰って来ない」

KP「いやーそれはどうかなあ」

ダン「もしくは人間の姿で戻って来ない」

氷室「そして俺たちの正気度がゴッソリ減るんだ」

ダン「仕方ないから僕が今回も彼女を補佐しよう。可能な限り危険には近づけない。無理くさいんだが」

ヒカリ「村役場が開くのは何時ですかね?」

KP「普通は九時五時だろうけど、お役所は八時半くらいには開くかな?」

ダン「まだ早いか」

氷室「移動時間含みでちょうど良いかもって事か。でも、さすがに店は開かないだろ」

KP「産直だから早いよ? 朝に作物を持って来るからね」



KP「では自動車組。確かカーナビ付いてるって言ったよね?」

氷室「ああ、確かに」

KP「状況は濃霧で、安全運転は必須だ。しかも分岐なども確認しにくい。しかし文明の利器は君たちを目的の場所まで案内してくれるだろう」

ヒカリ「……なんだろう。フラグが立ちまくっているようにしか聞こえないww」

KP「さて、カーナビ付きなので〈ナビゲート〉に50上乗せして判定どうぞ」

氷室「それでも約半分ですよっと、成功」

KP「うん。では氷室が運転する車は無事村役場まで到着できた」

ヒカリ「……無事?」

氷室「あれ? 本当に?」

KP「成功したんだから着いたよ」

氷室「うーん」

KP「さて、君たちは朝早く村役場を訪れた。どうする?」

氷室「資料室に行く。多分あるだろう。無かったらタブレットPCで調べる」

KP「何を調べる?」

氷室「太子村の歴史と古い地図」

KP「OK。では〈図書館〉をどうぞ。あ、ちなみに普通〈図書館〉は既定の時間を使う事になるけど、今回も資料の数は多くないから十一時頃に調べ終える感じになるよ」

氷室「ふり直しはできない。二人でやるぞ」

ヒカリ「二人がかりならボーナスありませんか?」

KP「まあ範囲狭いし10%上げて良いよ」

氷室「それならほぼ失敗は無い。うん、大丈夫」

ヒカリ「私は微妙なんですが……おっとまたまた成功しましたよ」

KP「失敗が無いとつまらないなあ」

ヒカリ「何て事言うんでしょうこのKPは」

ダン「……銃が必要になるイベントの臭いもしないのが逆に怖い」

氷室「そう言えばそうだ」

KP「君たちは『太子村村史』と言う近年発刊された書籍を発見する。ではまず古い地図の方を見よう。君たちが目を付けていた川の上流だが、数十年前の地図には集落があった事が記されている」

氷室「集落か。鉱山とかは?」

KP「それは無い。あくまでも農業を中心とする山間部集落、いわゆる里山だ。家畜も飼っていたと思うが、まあ出荷する為ではなく農作業に利用する為かな」

氷室「……むう」

ヒカリ「逆に考えればいいんですよ。だって道も無くなっているなんてよっぽどですよ。これは事件の臭いがします」

KP「事件かどうかはさておいて、この集落は昭和40年代に消滅した。原因は人口減少と書かれているね」

ダン「その年代で人口減少で消滅するものか? 戦後のベビーブーム直撃の頃だぞ? ちょうど生まれた子供が高校生になるくらいだ」

ヒカリ「あやしい」

氷室「農業やってたなら家土地ある筈だからな。簡単に潰れるわけがない」

KP「鋭いなあ。しかしそれが有り得るんだけどね。と言うのもこの時期に日本では大規模なインフラを経て現在の日本に繋がる発展を行うんだが、ここは僻地扱いの太子村の中でもさらに僻地だったんだよ。全員が全員土地にしがみ付く事を選ぶかどうかだね。ギリギリのバランスを保っていた状況が崩れれば、あとはそう時間はかからないね。しかしそれ以上の情報は無い。さて、明らかに村外の人間である二人が資料室に居ると、一人の男性が声をかけて来る。年配で背はそこまで高くないが恰幅がいいね。役場の制服的な作業服を着ている」

氷室「昨日来た時はこの人居たか?」

KP「居なかったね。彼が太子村村長の竹沢一夫たけざわ かずお。60歳だ」

ヒカリ「そ、村長さんですか。原発施設を呼び込んでいると言う」

KP「そうだね。竹沢村長はにこやかに話しかけて来るね」

氷室「そりゃこの村の資料室に居る外部の若い男女何て珍しすぎるだろうな」

ヒカリ「うーん、どうしましょう。対応しないのも感じ悪いですよねえ」

KP「竹沢村長は、何か調べている事があるなら協力しますよと言ってくる」

ヒカリ「詳しい話が聞けるんでしょうか?」

氷室「当事者の可能性もあるからな。……まあ疑ってもしょうがない。聞いてみよう。判定は?」

KP「古地図に載っている集落の事なら必要無いね。何故かと言うと、竹沢村長はその集落出身なんだ」

氷室「な、なんだって?」

KP「この集落は電気や自動車による発展に乗る事ができなかったんだ。開発がいつになるかもわからないのに、このままここに居ては駄目だと集落から離れる事を選んだわけだね。この頃は農地もそれなりの値段でやりとりされていたんだけど、僻地だった集落は資産価値も薄く、そんなに大金にはならなかった。紆余曲折会って竹沢村長は何年か前に村に戻り、村長に立候補して当選したんだ」

ヒカリ「うーん、昔から厳しい状況だったんですねえ」

氷室「インフラ整備は悲願とでも言いたいのか……いや、まさかな」

ヒカリ「手段を選ばずやる事ですかねえ」

KP「結局はお金だからね。どこから予算を引っ張って来るかと言う問題なんだよ」

氷室「しかし状況は空振りみたいなものか。しかも集落だ。須賀さんは何を目的にしているんだ?」

ヒカリ「……うーん。うーん。……あのKP、ちょっと聞きたいんですけど」

KP「竹沢村長に?」

ヒカリ「あ、いえ。ゲーム外発言です」

KP「OK。何かな?」

ヒカリ「霧って、まだ出てますか?」

KP「出てるね。晴れる様子が無い」

ヒカリ「この霧について質問しても良いですか? よくある事なのかって」

KP「……ほう。いいだろう。では竹沢村長はこう答える。山間から霧は珍しくないけど、こう言う一日中濃霧の日は最近よくある。まあ車通りも多くは無いし、村人は注意しているから事故は起きてない。怖いのは外から来る人だが、まあこの霧だし、よっぽど無茶をしなければ問題は無いだろう。こんな感じ」

ヒカリ「……最近よくあるんですか」

氷室「……こりゃ須賀さん絶対何か知ってるな」

KP「さて、そんな君たちは〈聞き耳〉四倍でどうぞ」

氷室「またか!」

ヒカリ「絶対失敗以外はオッケーですね。成功です」

氷室「成功」

KP「では君たちはボーンと十一時半を示す音を聴いたね。食料調達やら何やらをしないとお昼ご飯は間に合わないぞ」

氷室「……仕方ない。収穫はあんまり無いが買い物して戻ろう」

ヒカリ「この天気だとお惣菜のお弁当が良さそうですけど、手に入るんでしょうか?」

KP「ここの直売所はお惣菜もやってるよ」

氷室「マジか。凄いな最近の直売所」

ヒカリ「あとは夕飯の準備ですが、今日はカレーにしようかと思ったんですが、この状況だとお手軽に食べれた方が良さそうです」

氷室「夕飯喰う時間があればいいな」

KP「では、ダンの方に移ろうか」

ダン「ようやくか。こっちは不安過ぎるんだがなあ」





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