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1 太子村

1 太子村たいしむら


KP「君たちは四人で群馬県太子村にあるオートキャンプ場を目指していた。運転しているのはダンだね」

ダン「判定は?」

KP「さすがに必要無い」

氷室「四人だと? あと一人は誰だ?」

KP「名前は須賀恵子すが けいこ。三十歳独身の大学研究員」

ヒカリ「……私たちどう言う関係なんだろう(笑)」

ダン「警備員に工大生にスーパーJKに大学研究員か。それがオートキャンプ場?」

ヒカリ「あ……怪しい。2ON2なのが特に」

氷室「迷惑をかけるバッドマナーなDQNにしか見えない」

KP「一応、サークル的な活動で知り合った、程度だと考えている。このイベントを企画したのは須賀だ。企画した、と言うか彼女はちょっとした調査の為に太子村県営オートキャンプ場に滞在しようとしたんだけど、彼女は運転免許を持っておらず、ボディガード的な存在としてダンに同行を頼んだ、と言うのが理由だね。それに二人が乗っかった。なお、旅費に関しては須賀が全面的に出している」

ヒカリ「タダはいいよね、タダは」

KP「ところで須賀はダンと恋人にする?」

ヒカリ「いきなり恋人設定きたー!」

ダン「……うーん。NPCを恋人にすると危うい気がするんだが……」

氷室「中身が宇宙人なんじゃないか? ダン的に」

ダン「クトゥルフだと冗談にならないんだよなあ」

ヒカリ「気になっているから了解したんだけど、二人っきりと言うのもアレなので私たちにも声をかけた、とか?」

ダン「……」

氷室「どのみち、須賀さんと知り合いなら、彼女が酷い目に遭うと俺たちも正気度を持っていかれるけどな」

ヒカリ「え、そうなの?」

KP「親しい人間や、よく知っている人が酷い状態になると、正気喪失には上乗せがある。でもメリットもあるからね」

ダン「じゃあヒカリの案で行こうか」

氷室「アンヌじゃないんだな」

ダン「そこまでするつもりは無い」

KP「了解。さて、君たちは群馬県太子村県営オートキャンプ場を目指している。が、実は直行できない」

ヒカリ「なんで?」

KP「県営オートキャンプ場と言う名前なんだが、現在は管理人に示す為の太子村役場発行の滞在許可証が必要なんだ。穴場と言うか、元々はバブル期にレジャー施設として県が作ったんだけど、結局利用客は落ち込んでしまった。その上、マナーの悪いDQNや、明らかに反社会的組織が人に言えないような事に利用する事件が起きて、管理徹底と言う感じになった」

ダン「ただでさえ人が来ないのに、それじゃあ寂れる一方なんじゃ」

KP「その通り。ちなみに許可証は有料で車一台につき二百円」

氷室「安ッ!」

KP「この許可証を示すと、BBQセットなんかも管理人から借りられるんだ。他にも水道の元栓は管理人が管理しているからね」

ヒカリ「水は買って来れるけどBBQセットをわざわざ車に乗せてくるのはちょっと大変ですよね。確かにそれは持ち歩きたくないよね」

ダン「利用の為にも手続きしないとダメって事か」

KP「そうだね。さて、時刻はお昼休みが終わったくらい。君たちは昼食はドライブインで適当に済ませたとしよう。ご飯代を出したのも須賀だね」

ヒカリ「須賀さんはイイ人」

KP「太子村役場は鉄筋コンクリートの平屋。村議会で使う会議室と事務室と資料室等があるけどそれほど大きくない。村長室も無いからね」

ダン「無いのか」

KP「手続きは須賀がやるが、車を運転しているダンも彼女に付き合っている。さて、氷室とヒカリは、〈図書館〉技能を使うと短い時間だけど太子村やキャンプ場についての情報を調べる事が可能だ。資料室には太子村に関する資料棚があるので、調べるのは難しくない。図書館技能二倍でいいよ」

氷室「パソコン、と言うかタブレットで調べるのは〈PC〉?」

KP「一倍」

氷室「じゃあ技能持ちの俺がタブレット。ヒカリが図書館担当で」

ヒカリ「図書館技能はそんなに高くないけど二倍ならなんとか……うん、OK」

KP「氷室も先にチェックね」

氷室「……技能持ちとは言え一倍だからな……よしギリギリ」

KP「ではまずヒカリからだ。時間は短かったが、ヒカリは的確に情報を整理する事ができた。その結果次のような事がわかる」


1 太子村は山間の集落が集まった村で、合併のリスクが大きく、大合併の際の交渉がもつれて現在に至る。

2 バブル期は自然を生かした施設を誘致する予定だったが頓挫。

3 現村長は画期的な政策を訴えて当選した。


ダン「典型的な出遅れた村だな」

氷室「リスクが大きいってのはどう言う事だ?」

KP「人口は数百。しかし医療機関などの施設は最低限であり、インフラ整備なども考えると合併は基本お荷物にしかならない。まあ市町村合併って大なり小なりそう言う感じだけど。目的地のオートキャンプ場も、元は大規模な森林レジャー施設になる予定だったんだ。しかしバブル崩壊で計画は立ち枯れ。維持はともかく、整備に手間の少ないオートキャンプ場だけが残ったんだよ。そして画期的な政策と言うのが、ネットの方で拾える」

氷室「なに?」

KP「現村長は原子力施設の誘致を公約に掲げた」

ダン「なん……だと?」

ヒカリ「今時~?」

KP「確かに反原発と言うご時世だけど、原発マネー目当ての自治体も多いんだよ」

ダン「しかし、原発には大量の水が必要だぞ? 山間部でそんな水源確保できるのか?」

氷室「原発ってゴジラだとほとんど海岸にあるもんな」

KP「その通り。有名な茨城県東海村は海岸があるね。とにかく原発は冷却水が大量に必要だから、日本ではその大半が沿岸部に存在する。海外だと河川に沿う事も多いね。そして福島第一原発の悲劇はまさにそこだった。大量の水を必要とする必然性から海岸部に設置されたけど、沿岸部における最大の災害に対応できなかった。こう言う手落ちを考えると、原発側の調査や対応がずさんと言うのは間違いないね。なので、内陸部で原発誘致を訴えてもまあ通らないね。しかし、原発関連施設なら十分可能性はある」

ダン「確かにな」

KP「原発マネーの投資に、当然のインフラ整備も実質の国持ち。従業員も入るから色々利便性向上の可能性は広がる。ただし」

氷室「住人が安心して住めなくなったらおしまいなんじゃないのか?」

KP「そうだね。なので村議会では現状微妙なラインにある。とは言ったものの、現職が公約に掲げて当選したので、いずれ推進派が多数になる可能性が高い。しかし、当然と言うか県や周辺市町村では反対の声が上がっている。特に原発関連施設誘致の決定権は基本的には都道府県知事にある。村が幾ら誘致の声を上げても県知事が賛成しなければ普通はアウトだね」

氷室「原発は関連が面倒くさいからなあ」

ヒカリ「なんでこんな事になってるんだろう?」

ダン「もちろん誰も責任を取りたくないからな。実際原子力推進委員会とか意見は強いけど、原発事故に対して責任を取ると言う要素は皆無だからな」

氷室「電力会社が一応矢面に立つわけだが、会社が責任取るって言っても結局電気料金として国民生活に跳ね返るからなあ」

ダン「しかし、事は原子力関連だ。国政が乗り込んでくれば話はわからなくなる」

KP「原子力関連は日本のトップ企業も基本推進の立場で、県がそう言ったメーカーに依存していると絡め手も出てくるだろうしね。まあ今はまさにその前段階と言ったところだね」

氷室「村としてはそこに駆け引きを持ち込もうと言うのかな」

ヒカリ「……なんだろう、どこか似た様な国が存在する気がする」

ダン「北朝鮮だな」

KP「さて、一方ダンの方だが、手続きは恙無く終了する。さて、ここで全員〈聞き耳〉十倍をどうぞ」

ダン「……いやそれ絶対失敗以外は通るだろ」

氷室「全員大丈夫だな」

KP「絶対失敗の時はたまたま耳をほじって聞こえなかったことにするつもりだった」

ヒカリ「えー、私も? 女子なんですけど? 耳ほじとかやるの?」

KP「もちろん。さて、君たちはボーンボーンと言う音を聴いたね」

氷室「ボーン?」

ダン「時計か?」

KP「うん。村役場では結構年代物の柱時計を使っているみたいだ。チッチッチと言う音も微かに聞こえる」

ダン「最近だと珍しいな」

氷室「常に音を出す時計だと事務仕事に気が散るかもしれないよな」

KP「時計は二時を打ったね。シーズンとは言え山の落陽は早い。そろそろ移動して準備に入りたいところだ」

ダン「手続きも終わったし、移動しようか。おっと、テントとかは持って来てるでいいんだよな」

KP「うん。手間の少ないタイプを二組用意してきたね。あ、そうそう。役場の事務員さんは、食料を買えるお店を教えてくれる。飲み物や野菜なんかはそこで買ってもいいね」

氷室「BBQに必要な肉とかは持って来ているよな?」

KP「そうだね。朝食用も含めて、まあ判定は要らない。一通り必要な物は準備できている。教えて貰えた場所はいわゆる産地直売で、新鮮な野菜の他にも肉や魚、アルコールなんかも手に入れる事ができる。ただし営業時間は夕方までだ」

氷室「……クレカ使えないんじゃ?」

KP「JA直属なので使えます」

ダン「滞在日数は一泊二日で良いのか?」

KP「須賀は二泊三日を予定している。このままだと調査時間がほとんど無いからね」

氷室「JKが二連泊とか大丈夫なのか?」

ヒカリ「その辺はスルーで。でもお風呂とか大丈夫なの?」

KP「さすがにお風呂は無いが、管理人棟でシャワーの貸し出しがある。有料だけどね」

ダン「……なぜだ。殺人鬼が出てくるしかない状況になりそうだ」

ヒカリ「近くに湖とかあったりする? 水晶湖とかそんな名前の」

KP「湖や池は無いけど川がある。須賀の調査場所にも入ってるね」

ダン「……今更だが、何の調査で来てるんだ?」

氷室「近場に温泉とか無いのか?」

KP「無いね。あったらまだ何とかできたんだろうけど」

ダン「そうだったな。取り敢えず産直は食料調達に使えると言う事か。何か必要な物ができたら向かえば良いな」

氷室「……運転できるのってダンだけか」

ヒカリ「どうしたの?」

氷室「いや、ダンが狂気に入ったら、俺たちここで身動き取れなくなる」

ダン「機械系なのに運転技能無いのか?」

KP「運転するだけなら免許は持っていてもOK。ただし、何らかの場合で判定する時は覚悟してね」

ダン「カーチェイスはできないか」

KP「じゃあオートキャンプ場に直行でOK?」

ALL「「「OK」」」

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