特別編 おかあさんだっこ
また、この台詞聞かされんのかよ……。まだ朝の6時だよ。図面とMac片付けて寝たのが4時だから、アタシの睡眠時間2時間で終了のお知らせかよ! だいたいこんなちっさいガキおいて海外に取材旅行でヘリ事故死なんて、セレブの無駄遣いもいいトコだよ、あん夫婦も。せっかくいい大学出てキャリア積んで絵に描いたような出会いからのゴールインでこんな可愛いやつ出てきたってのにさ……。
真希は可愛い。それに一生懸命やってると思う。オムツだってだいたいとれたし、たまに夜中布団濡らしちゃって、申し訳ないけどお怒りモードのアタシの顔色伺う時なんて、若干いじらしくていろんな涙がでてきちゃってもうなんだか。ご飯だってアタシのコンビニ飯+@(@に命かけてるんだよ! アタシだって)だまって食べてるし、保育園じゃおかわり余裕って毎日日記に書かれてる。出来た子だと思う。実際のトコ。
この子と暮らすようになって、心の振れ幅ってのがすごく大きくなった。ちょっとした出来事で頭に血が登ったり、ありえないくらい笑ったり。美大出て仕事一本やりで突っ走ってきたアタシに、人間の感情の起伏ってこんなに豊かでこんなにスゲーんだよって教えてくれた。
で、それが最近描いてる奴の出来栄えにもそれなりに響いてるってんだからホント面白いよね。アリーナの図面とか一歩引いたトコから目くじら立てないで描くと、収まるトコに収まる感がまぁスゴイ。実際んとこアタシがスゴイんだけど、多分今までのアタシには描けなかったこんなの。
まぁ、そういうわけだからギューしてやる。日に日に重くなるけどまだまだちっこくてあったかいふんわりとしたかたまり。半分寝ぼけながら両手を精一杯伸ばしてアタシにまとわりつこうとする真希。
「……ようこ、さん」
おかあさんでいいよ。真希ちゃん。




