番外編 意外と気づいてないものよね
またかかと踏まれた。地味にお気に入りのローファーだから、かかと死亡はほんとにヤ。だいたい昨日のアレは何よ! おんぶにだっこしたまま風呂とトイレ掃除してやったようなもんじゃないの全く!! で、今日も性懲りもなく6:45九段下着(←したぎ、じゃないんだからね!!)の都営地下鉄に揺られて地下なんじゅうメートルだかわけわかんないとこ走らされてんのよ! あぁ、思い出しただけでも脇腹かゆいレベル。
まぁ、でも。明日で全部終わっちゃうのよね。明後日から本気モード、か。自分で選んだ道とはいえ、なかなかキツイわよね。あぁあ。こんなに若くてこんなにかわいくてこんなに性格イケてるのに女クラとかいう意味不明な制度のおかげで独身貴族なわたし涙目。
ちょっと! 押さないでよ! ……へんなとこ、え? ヤバイの来た??
「お、神崎じゃん! っていうかそれダレだよ……」
そそくさと離れていく実にテンプレ的な痴漢中年(かろうじて未遂)。まるでト書きにそう書いてあるかのように現れる先輩。
「……! せんぱい!!」
「……お前さぁ、いろいろ考えすぎてるからあーいうの寄って来ちゃうってわかったりしてる?」
「……ありがとう、ございました」
もー、なんなのよ、このテンプレ的展開。こんな感じになっちゃってからのわたしに何しろって言うのよ。
「……神崎ってこの電車だったんだ」
「……まぁ、普段はこんなに早くないんですけどね」
普段はNA○ITIMEと先輩の性格からあたりつけて同じ車両で偶然あったフリ装ってからの神展開狙ってるなんて口が裂けても云えるはずがないものね。
「明日で文化祭終わりですね……」
「あぁ、なんかあっけないよな……」
いつもの曲がり角のところでいつもの曲がり方をする電車。なのにつり革つかみそこねて意図せずな体で先輩の方によろけてみるわたし。
「おまえ、だいじょうぶ? いろいろと」
「……すいません」
などというわたしは策士。
“くだんした、くだんした”なんてまるで発声と滑舌がなってない上に無情極まりないアナウンスが流れてドアに向かって降りようとするヒトの動きのなかで先輩から離されそうになるわたし。これは、もしかして手を繋いでしまうなどというアレなパターンなの? そうなの?
「……おまえさ、何で降りようとする努力をしてくれないの?」
……まぁ、そうよね。普通に降りて普通に改札抜けて普通に地上に出て普通に九段坂ちょっと登ってあとは裏校門(靖国側が寂れてるとか、なんて失礼な設計なのって思ったりしない?)って流れ。長い天然の上り坂、なんて贅沢に恵まれた飯田橋勢と違って、こっちじゃ“二人で待ち合わせて登校”とかいうステキイベントは成立しないのよ……、
って、このタイミングでかかと脱げるとかってありえなくない!! からの先輩に手ぱしって掴んでもらって地面神回避とかって!! あるんだこういうの……申し訳ないけど生きてて良かったレベル。
「あぶねーなぁ、おい。……っていうかおまえ、さっきからなに考えてんだよほんとに」
まぁ、文化祭一日目のスタートにしては上出来よね。




