約束
卒業式。相変わらずの地明かりと前明かりと演台サスに、ちょっと校旗アテとか生花タッチとか足してお茶を濁す年度最後のイベント。新歓ステージの追い込みがあるからそんなに凝ったこともできないし、式典でガチャガチャやるのも品がない。だいたいわたしは9月の文化祭で引退したんだから関係ない。けど、やっぱりちょっと気にはなる。だって他でもない先輩の卒業式なんだから。
って!なんで脚立登ってシュートしてるんですか!
「お、神崎じゃん」
「先輩! 自分の卒業式ぐらいお客さんでいてくださいよ!」
「え? 客じゃなくて主役じゃね? オレ」
「……どっちでもいいですけど」
「お前こそ、引退したんじゃなかったっけ? 文化祭で」
「そりゃそうですけど、雪ちゃんたちも初めての新歓ステージだから、準備とか大変かなぁって思って……、で様子見に来たんです!」
「見ての通り。きっちり仕事してますよ」
「だいたい先輩一人なんてどういうコトですか? 送りとかどうしてるんですか?」
「ほら、コレ」
先輩が制服のポケットからiPhoneを出すとDMXのアプリが走っている。
「Wi-Fiで調光卓に割り込んだ」
そこまでして一人でやりたいのか……。
「先輩。ついでにお話ししときたいことがあるんです」
「どうした?」
「わたし、これから一年間は勉強に集中しようと思うんです」
「おぉ、さすが大学目指してる奴は云うことも立派だわ」
「だから、もうバイトとか現場の連絡はしないでください」
「……そっか。そりゃそうだよな。わかった。今までありがとうな」
「それから、一年後にまた連絡貰ってもいいですか?」
「いちねんご? なんで?」
「……バイトとか現場じゃない連絡もらえます? いいかげん」
一年後。計画通りにいけば大学生だ。先輩は来月就職するから学歴的にはわたしのほうが先輩になる。こっちの世界じゃね、戦いは学歴で決まるのよ、先輩。
「JDか……賞味期限切れじゃね」
死ねよ高卒。




