二ヶ月あればいろいろと変わる
土曜の夜。LINE待ちなのはもはやデフォ。引退したあとも、相変わらず先輩からバイトとか現場の連絡が来てたけど、急に途切れてもう二ヶ月。学校でも見なくなったし、引退って中退なの?? って思ってたら、なんか来た。参考書の山の下に埋もれたスマホが身悶えしてる23:45。
“11/20 8:30 新宿 正装 とっぱらい1万 印鑑イラネ よろ”
もう少しないのかな、近況報告とか謝罪とか言い訳とか……。こっちは本気モードの受験生なのに一応毎週日曜空けて待ってたのよ。まぁ先輩は知らないんだろうけど。
駅から飛ばすタクシーの運ちゃんに、今まで名前くらいしか聞いたことがないこの街の様子を教えてもらい、宿と会館の位置関係、今日のスケジュール、各セクションの人数などを考慮しつつ、地元のウマい料理を食べられて、地酒と焼酎がきっちり揃ってて、それなりに繁盛してるけど、10人単位でまとまって入れるくらいの座敷が空いてて、深夜までヤな顔せずに営業してくれるって、そんなナイスな飲み屋を、外観と雰囲気だけで探し当てる特殊能力を武器になんとかやってきたこの二ヶ月。さすがのオレも何回か辞めようと思ったワケよこの仕事。
ツアーメンバーで地味に最年少だったオレは、まぁ良く云っても奴隷扱いなわけで、照明以外にもいろんな雑用こなさなきゃなんねえ。次の会館の搬入口の場所・条件を考えた混載4tの積み込みを、“カセ!!”とか怒鳴られながら手際よく段取ったり、“私物ないすか〜 トラック閉めますよ〜”って楽屋中声かけてまわったり。
で、三箇所目くらいから体が自動的に動くようになって、ちょっとずつ余裕も出てきて、“え……、カセって高校生なの!?”なんて絶句してる音響姐さんに、“そうすよ”って云いながら焼酎ロックささっと出したり、“お前もすこしはアイツを見習えっ!”って手下小突いてる舞監さんの空いたグラスを回収して薄めの水割り作ったりしてるうちに、コレはコレでアリだなって思えるようになった。
二ヶ月間。スゲー濃い時間を一緒に過ごしたオトナ達に、“おつかれ! またどっかの現場で会おうぜ!!”って最高の褒め言葉を頂戴して、帰ってきた下宿は、うっすら埃が積もった上に、何もかもが小さく見えた。背、伸びたかな、オレ。
8:15。新宿駅中央西口改札の前で待ち構える。いつものダークスーツが颯爽と自動改札抜けてくる。って、先輩おっきくなってないですか? 目付きもなんか鋭いし。なんか……かわった。
「おはようございます……」
わたしの頬が火照ってるのは曇り空から降りてくるひんやりとした空気のせい。たぶん。
8:15。柄にもなくドキドキしてる。考えてみたらアイツに会うのは久しぶり。改札の向こうにいつものポニテを探す。って、なんだ? あの前下りショートボブは?
「おはよ、じゃ、行くか……」
にしても何もかもがドストライク過ぎてオレ困惑。




