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放送委員会のススメ  作者: 飯田橋 ネコ
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仕込むぜ!!

 あっという間に48時間が過ぎて、前夜祭の日。朝一番で集合かけた総勢50名の男子生徒を引き連れて、都営新宿線で新宿三丁目駅へと急ぐあたし。一般教室&音楽室バンド&軽音学部&水泳部&そのほかいろいろの男子たち。行く先は新宿御苑新宿門の目の前、加瀬先輩のバイト先、㈱新宿舞台照明のレンタル事業部だ。


「おはようございまーす。飯田橋高校でーす。お世話になりまーす」

「お、加瀬んトコの! いらっしゃい、待ってたよ〜」

白髪交じりのおじさまが雑居ビルB1Fの倉庫に案内してくださる。

“加瀬の奴元気か?”

まぁ、息災ってとこです。

“文化祭なんてアソビやってねえで、現場入ってほしいンだけどなぁ……”

まぁ、おじさまから見たら高校生(ガキ)のおアソビよね、確かに。


 今回借用する機材は、スモークマシンにストロボ、ACL、PAR、ランプピン、軽量スタンド、カラーホイール、スクローラー、スピナー、ボーダーケーブル、変換、調光器などなど。普通に云えば11tトラック半分くらいの物量なんだけど、式実の機材費がシブ過ぎて、運送費が出せなかったのさ。じゃぁどうやって運ぶのかって? そりゃ人の手で運ぶのよ!!


「マジでこんな重いの運ぶのかよ〜!?」

「これ持って電車乗るのとか、無理ゲー!」

「こんなん聞いてねえぞ! 責任者ダレだよ!」


 ……アンタたちがやりたいっていったんでしょ。EX○LEとかサマ○ニとかみたくしたいって。どんだけ大変かとかまったく考えずに!!


 まぁ、云うても仕方がないので、はとバスの添乗員よろしく皆様引き連れて再び都営新宿線へ。黒光りする怪しげな機材とプラダン箱いっぱい抱えた男子高校生の集団が、金曜朝のラッシュの気配残る10-300形に強制乗車。ごめんね、世間さま。


 学校に戻ると、機材の使い方説明して振り分けして一般教室の皆様はその場で解散。お昼食べる暇もなく、体育館と多目と音楽室に機材あげて、絶賛仕込中の各現場のお手伝い。っていっても放送委員総勢6名しかいないから、なかなか捗らないのよ、これが。なのでとりあえず暇そうな軽音男子を延長雇用。


「オレたちはいつまで拘束されんだよ〜」

「飯も食わしてくれないとか、スゲーブラックなんすけど」


 あたしだって腹減ったの! いいからボーダーケーブル引くの手伝いなさい!! 


 まずは音楽室の仕込み。仮設電源にディムパック繋いで、スタンド立てのPARと床置きのミニブルとスピナーがとりあえずピカピカグルグルできるようにしておいて、ストロボのリモコンとフットペダル直結して、あとはPersonalService. 


「スゲー! 超スゲー! オレ天才じゃね!!」

「オレにもやらせろよ!!」

一生やってなさい。


 お次は多目的ホール。まぁホールとは名ばかりのただの大きな会議室なので、照明機材も音響機材もオール仮設。ここは吹奏楽部とか弦楽部とかクラシック系の部活が演奏するので、地明かりと前明かりを仕込んで全体的に明るく仕上げる。神崎先輩と白山が朝から手際よく仕込んでたので、プラス小一時間の作業で仕込み完了。客席側ではだっち先輩がいーっぱいマイク用意して録音の準備してる。横で葛西さんがオケの配置図みながら、“ここが1stでこっち側がVcですね”なんて話してる。こりゃ適材適所なんてレベルじゃないわ。


 で、今度は地下一階のプール。水泳部の屈強な男子たちが明かり採りの窓に段ボールで目張りして暗くしてる。やっぱり屈強な女の子達とランプピンを仕込む。

“いいですか? 絶対に濡れた手で触らないように! 感電しますからね”

“はーい♡”

云ってるそばから水着姿でランプピンの自主練始める部員たち。

“わー、フィギアのエキシビジョンみたい!!”

まぁ……そのとおりよね。


 ようやく多目から下りてきてサランラップでぐるぐる巻きにした怪しげなスピーカーをプールに放り込み始めただっち先輩をおきざりにして、いよいよ体育館へ。ここは落研や日舞研といった和物系の方々と、ダンス同好会や軽音楽部といった色物系の方々、そして演劇部や英語科研究室といった芝居系の方々が入り乱れて、好き放題やってくださるというステキ空間。


「おー、中島! 割りに早かったな!」

汗まみれの加瀬先輩が、脚立の上から声をかけてくる。

「吊り込みは終わったから、送り頼むわ!」

体育館放送室から客席に移設した調光卓を操作して、先輩がシュートする灯体を一灯ずつつける作業“送り”。同じフォーカスでも色違いの灯体があるから、組み合わせでつけたり、片方弱めで送ったりする地味だけど大切な仕事。神崎先輩と白山はギャラリーに上がって常設のフロントの周りに追加の灯体を仕込んでる。


 シュートが半ばまで終わったあたりで、だっち先輩が機材台車ひきずりながら現れる。“うわー! もう一時半かよ!!”なんて云いながら、ステージにスピーカー組み始める。葛西さんはいつもの達筆図面みながら卓周りを組んでる。たった二日間の即席授業でよくここまでできるものだ。


「スタジオとかでよく見てはいたんですけど、いままで全然意味がわからなくて……先輩に教えてもらってやっとわかるようになりました!」

そう、それはよかったね。でもちょっとなんかムカつく。あんなアキバ系にこんな可愛らしいおさげお嬢様が“せんぱい!”モードだなんて、ちょっとばかし不公平なんぢゃない?


「中島、何怒ってんの?」

「ひもじいんですっ!」


 委員全員、飲まず食わずの突貫作業で15:00。この騒動の責任者、山本隆次生徒会会長氏が下手(しもて)大扉より登場。


「おーい、神崎くん、まだ終わんないの? 3時半にはHouseOpenしたいんだけど大丈夫?」


 “放送委員一同の殺意がバールのような鈍器になって山本某をぶちのめせれば重畳極まりないのにぃ♡”なんて妄想を胸のうちにしまいながら、神崎先輩はにこやかに答える。


「大丈夫です。間に合わせますから」

そう、あたしたちは放送委員。間に合わせるのが仕事なの。


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