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放送委員会のススメ  作者: 飯田橋 ネコ
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委員長職

 あっという間に曜日が一周りして、各イベントのスケジュールやら机の行き先やら会場の振り分けやらが、紳士的な話し合いや友好的な殴り合いなどの結果、おさまるべきところへおさまり、あとは突っ走るだけ(もうとっくに全力疾走だけど)になるこの時期。先輩も早瀬も雪ちゃんたちも、みんなほんとによく頑張ってくれてる。


 忙しいのはお互い様の出版委員会さんの部室に顔を出すわたし。B2Fにあるこのお部屋。実は数年前に衛生委員会さんの突撃年末大掃除で“発見”された地下空間。30年くらい前の新校舎建設の時、非常用ディーゼルを設置するために作られたんだけど、翌年度の概算要求で発電機自体の調達が通らなかったとかでうやむやになって、長らく閉鎖されていたんだって。

 今では発電機のかわりに不二ゼロックスの最新鋭プロダクションプリンターが轟然と唸り、文化祭のパンフレットを陸続と吐き出している。さすがに月刊誌を発行しているだけあって、委員さん達の動きに無駄がない。記事の内容はちょっとアレだけど、さすが餅は餅屋よね。〆切二日前に余裕で納品ってステキだわ。

 でも、ちょっと不思議なのは、委員総勢20名を抱える有力委員会だけあって年間30万円(ウチの3倍よ!)の予算を掠め取っていく出版さんの規模を考えても、こんなオンデマンド印刷機器を揃えられる道理がないってこと。聞けば、豊洲で(つち)運ぶトラックが要らなくなって余った予算が、都庁のなかでまわりまわってここに来たとかなんとか。


「ここなら人目につきにくいし、吸排気も完璧だからね」

って、出版の委員長さん(2年4組の鶴巻祥子嬢)は云うけど、まぁ、うまくやったものよね。


 できたてのパンフレットを数部いただいて放送室に戻るわたし。団体名とか会場とか最終的に確認して当日の案内放送の原稿とすり合わせしとかなきゃいけないの。地味だけど大事な仕事。ヘッドホンつけて“こっからソプラノとテノールだけ無くすとかスゲー無理……”なんて唸ってる早瀬の肩をポンって叩いて元気づける。片手がよろよろってあがって一応返事が返ってくる。うん、まだ大丈夫ね。

 奥の部屋では雪ちゃんと中島がフォロープランの打ち合わせ中。加瀬先輩から渡されたキューシートとiPhone見ながら“こっちの人は下手(しもて)ピンがフォローして、Bメロで色替えて……”とかいろいろ相談してる。ほんとマジメな子たちで助かる。

 そのとなり、いつもの隅で加瀬先輩が珍しく書類仕事。全ての団体からあがった照明機材の借用願いと、式実からおりてきた機材費とを天秤にかけて、諸事折り合いつけた後に発注するだけの簡単なお仕事。去年みたいに借りられた機材に偏りがあって、参加団体から“不公平だ! やってらんねえ!”みたいな声が上がらなきゃいいけど……って、のっそり立ち上がって窓際で電話かける先輩。

「いつもお世話になっております。加瀬です。昨日お話しました件、今からメールでお送りしますので、ご確認よろしくお願い致します……」

いつになくまともな日本語で電話してる先輩。こんな話し方もできるんだこの人。


 わたし抜きで仕事が進んでるこの感じ。やっぱり委員長ならではの感触よね。これでもう安心して任せておける……。実はわたし、文化祭が終わったら引退しようと思ってる。長いと思ってた三年間も半分が過ぎちゃって、そろそろ……、


「なによこれ! 前夜祭とか聞いてないわよ!!」






 神崎の奴が開いたばかりのパンフレット握り締めて、猛然と放送室から出て行く。そんな形相じゃせっかくの美人が台無しだっての……。おおかたスケジュールの変更とかで、式実に怒鳴りこみに行くとか、そんな感じだろ。ナニもそんなに慌てて……っていうか、


「ぜ、前夜祭!? いつそんなイベントやることになったんだよ!!」

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