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放送委員会のススメ  作者: 飯田橋 ネコ
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夏の終わりに

 たくさんの日章旗を並べる街宣車も、滝のような汗を流しながら立哨する機動隊員も、自分の言いたいことを言いたいように騒ぎ立てる大人達も、頭がイタくなって逡巡してる時のかき氷みたいにいなくなり、境内のアブラゼミがヒグラシにC.F.するキッカケが日に日に早くなっていく時節。


 あたしたちは走り回っていた。


 一学年6クラス。全校で18クラス。模擬店やテキ屋みたいな可愛気のある出し物をしてくださる奇特なクラスはほぼ皆無。お芝居、ミュージカル、ダンスパフォーマンスにディナーショー(……なによそれ)。最低でも凸とフレネルが二台ずつにカラーホイールやらトライダックやらが必須なイベントが校内各所で繰り広げられ、ホットプレートでクレープ焼きたいの、なんて云った日には、てめぇに喰わすACはねぇって山岳部のピークワンが飛んでくる。


 教室ごとの照明・音響機材の借用願いのとりまとめ、電源使用量ならびに使用時間の把握と割り振り、各イベントで乱れ飛ぶシーバーとB帯ワイヤレスマイクなどなどの周波数割り当てが一段落したら、今度は運動部さんの親善試合。


 校庭や柔道場や剣道場では、都内や国内や海外の様々な高校から同好の士が三々五々集まって蹴り合ったり倒し合ったり叩き合ったりするので、それぞれの会場に簡易PAを設置してあとはPersonalService.(さすがにオペレートとか無理、だって音響一人しかいねぇし!! byだっち先輩)


 水泳部恒例のシンクロショー“赤褌と黄帯の狂乱の宴”なんて地下温水プールの明かり採りの窓全部塞いで照明仕込まなきゃだし、だっち先輩お手製の水中スピーカーいっぱい放り込んで水の中でも音楽聞こえるようにしなきゃなんない。


 五階の理系研究室横丁では怪しさ満点の化学部物理部合同実験コーナー“(キタ)ではできない核融合あり〼”と、ロマンとモノローグあふれる天文部ミニプラネタリウム“彗星が落ちる日”が覇を競い合い、工芸部のアーケードゲーム“実寸大ポケ○ンGoリアルジム(位置○装で世界のレアモンスターGetだぜ!)”の巨大筐体がうなりを上げている。


 どいつもこいつも電気バカ食いしてくださるから、同じフロアにある音楽室バンドの皆様には分電盤から単相三線で仮設電源(オレできる男だけど無免許だぜ by加瀬)ひいてあげなきゃならない。で、この音楽室には学校中から“高校生でバンドやってるオレTueee”的な方や“軽音女子だったらなんとかなるはず”的な方々が大挙して押し寄せて分刻みのライブを繰り広げるから、PARとミニブルとストロボでそれっぽくしてあげなきゃならない。


 そもそもこうした事態に歯止めをかけてくれそうな体育科研究室がゴリゴリのメタルバンド組んで参戦してくるし、国語科研究室・茶華道部共同開催の“第35回 茶室で格闘かるた選手権”とか、英語科研究室の英語劇“正しい悪態の付き方 〜成金オヤジとメール熟女のトークバトル編〜(日本語字幕付き)”とか、数学科研究室の“ポアンカレ予想を使って来場者数を証明しなさい201☓(正解者には三年分の単位進呈)”とか、先生こそ自重して下さいなレベル。


 と、ここまではあくまで前座。演劇部や吹奏楽部に軽音楽部、ダンス同好会に日舞同好会、落研に歌舞伎研といった実演系の団体の公演や演奏やパフォーマンスが、3F体育館と4F多目的ホールで二時間ごとに行われるから、それぞれの照明・音響の仕込みと本番とバラシに勤しむのがあたしたちの本業。ね、たった五行で済む簡単なお仕事でしょ♡




 始業式(地明かりと前明かりをつけて、演台にサス合わせて、ワイヤレスマイク2本準備して、体放で内職するだけの簡単なお仕事)が終わると、上記一式の準備が怒涛のごとく押し寄せてくる。9月16・17日の文化祭まで、約二週間制限なしの一本勝負。


 地元千代田の公民館のライフをゼロにして、近隣の貸し会議スペースまで侵食し始めた各団体から、公演の台本がpdfで、パフォーマンスの稽古がYoutubeで、バンドのデモテープがmp3で上がってくるから、それをもとに照明プランの検討とレンタル業者への機材発注。呼び出しなんかの通常業務も当社比3・5倍で、内線電話は輻輳状態。


 これ誤発注だよね! 桁とか間違えたんだよね! って思わず祈るぐらいに大量の編集依頼が積み上がり、独り言すら出なくなっただっち先輩の珈琲は、翌日にはインスタント、そのまた翌日には白湯に商品替え。


 いつもは優雅な空気の漂う3F生徒会室も、式実の皆様が実質占拠の状態で、校内の案内板やサイネージの制作・設営、正門やロビーの巨大装飾建立、全てのイベントを網羅する完全版パンフレット(出版委員会共同発行 見開きA3フルカラー50P)制作、校内備品の管理と運用(長机とか椅子とかの員数を調べて参加団体に割り振るだけの地味だけど大事な仕事)、政治力と裏工作が飛び交う予算管理でいっぱいいっぱい。


 校舎北側の日の当たらない部屋の住人は獅子奮迅。衛生委員会隷下の突撃給食班、通称“あぱむ屋”謹製の戦闘配食I型(ゆかりご飯おにぎりと梅の香ご飯おにぎりのセット→地味に至高の逸品!)でかろうじて生き永らえてる有様なのです。


 え? 授業? それって睡眠時間でしょ。ほら、先生も教壇につっぷしてるし……。

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