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七話

翌日で毎日更新は終了して、闘技大会も終わりついでに人物まとめなどを投稿します。そこからは予告していたとおりエタリます。お付き合いいただきありがとうございました。

 

 


「”ハイジャンプ”」


 ジャンプを頻繁に使うことによってレベル上げ。ただ跳ねるだけでいいというのは簡単だ。吸血は相手はいないしやれる時間も少ない。そういう点ではスキルに格差があるともいえるが、吸血はその分強力。レベル上げをするのが難しいスキルほど強いという傾向? ならば次習得するスキルはそういうスキルにするべきか?


「時間です」


「分かりました」


 現在は修練場にいる、スキルのレベル上げを考えていたらここを知ったのだ。体感では、大群を相手にしたときなんかが一番上がりやすいと感じるが、そんな危険なことを日常にするわけにはいくまい。そういうときこそ仲間が欲しくなるのだから、そういうのは控えるべきだ。ここ修練場は一定の利用料を払うことで、どんな人間でもスキルを鍛錬ができる。安全かつある程度の広さがあり、スキルのレベル上げに適しているといえるだろう。一応レベルも上がり、初心者の頃はここで鍛えるという手もあったのだが、そのころは知らなかったのだ。

 そんなことを考えながら、初めてファンタジアをやったときを回想していた。だからだろうか、理由としては違うのだが私は人にぶつかった。思わず苦笑いしながら謝罪。


「ああ、すみません。考え事をしていたものでして。失礼―――」


「待ってください」


「?」


「いや、あの…………戦ってくれませんか?」


「私と? 君がか」


「いえ、その…………違います。マリオと、その」


「マリオ、という人物と戦ってほしいのかい?」


「いえ、そうなんですが、人物、いえ、人物といえば、その」


「立ち話も何だ、私もジャンプスキルを試して疲れた。あそこの喫茶店でゆっくり話そう、勿論私のおごりでだ」





「――――――なんです」


「そうか。つまり君はそんな奴だった……………………失礼、忘れてくれ」


 この少年、名をロウという彼が私に頼んだのは、自分の相棒を鍛えることだった。つまりマリオとは彼のゴーレムの名前。


「やってくれませんか?」


「報酬は?」


「え?」


「人にものを頼むのに報酬は無し。私としてはそれでも構わないが、双方にメリットがあるのが普通だ。そもそも君のゴーレムとやらを鍛えるのは私にとって難しい。私の戦闘スタイルは喧嘩殺法のようなものだし、参考にはならない」


「そうですか…………」


 彼は習得者が少ない召喚術の使い手だ。私も同じく習得者が少ない付与術の使い手である以上、多少の支援はするが無理なものは無理だ。見たところ彼は初心者、初心者を導くのも先輩の役目とはいえ、面倒だ。


「私は帰るよ。すいません、会計お願いします」






 「”ノックキック”」


 修練場に喫茶、思わぬ出費が重なったため地味に金欠である私。初心を取り戻すのも兼ねて、再び草原に。

 (ちなみに移動は転移陣を使っている。一度行った町に飛べる、よってあの護衛依頼を何回もこなす必要はないということだ)

 こうして戦うと、別ベクトルへ思考は飛んでいく。懐かしい感覚だ。やがて思考はスキルへと飛んでいく。合わせられないか? そう浮かんだ。片手剣と投擲スキルの融合、いけそうな気がする。


「”ニードル” ”ショット” ”ニードル” ”ショット”」


 あと一息!


「”ニードル” ”ショット” ”ニードルショット”」



 よし、出来た。とはいえスラッシュとショットを組み合わせるのは無理だな、モーションが違いすぎる。このスキル融合はあくまでモーションアシストが近いやつじゃないと不可能だと思うが、ニードルとショットはそう変わらなかったみたいだ。よって見た目もそう変わりはしないが、少し威力が上がっていると実感できる。ただ、二つのスキルを合わせている分、アシストが複雑で動きに逆らったりしないよう気を付ける必要があるだろう。二つ分のアシストがある分危険だ。

 


・ブラックウルフ


草原の黒狼。推奨レベルは6以上、攻撃手段として噛みつき、咆哮は攻撃力上昇小の効果をもたらす。出現する時間帯は18時~6時


 しばらくはこの融合を試す必要がある。よって、試験体になってもらおうかブラックウルフ君。





 投擲を組み合わせていたからか。検証の途中で”ブーメラン”というアクションスキルを覚えた。これをスラッシュと組み合わせる検証をする羽目になり、この日はそれだけで時間が終わってしまったのだ。






 そうして現実世界での朝。ログインしようと欠伸をしながらいつものように手順を踏んでいると、妹から声が掛かった。


「兄さん、今日はアップデートだから休みだよ」


「そうなのか」


 そう、今日はアップデートの日。特に新マップが追加されるとかそういう話は聞いていないが、第二期プレイヤーが来るわけだ。調べてみた結果、ハーフヴァンパイアに続くハーフ系、ハーフエルフやダンピールなどの種族が追加。さらに第一期プレイヤーはプレイ時間の増加が可能、この二つが今回の目玉だろうか。

 だが困るのは吸血鬼、プレイ時間の増加即ち昼でも活動できるということだが、私にとってあまり旨味がない。せっかくの時間増加が上手く活かせないという難点、一度今後のことも兼ねて妹と情報交換をするか。


「何?」


「いや、今日は暇だろ? だったら今後を見据えて話し合おうじゃないか。私から伝えるのはまず、マッドドクターが参入してくることだな」


「あの? めちゃくちゃ怪しい? このゲームに何かあるの?」


「ないとは言い切れない。次にスキル融合、あんまり話して欲しくないが、アクションスキルの融合に成功した」


「ヒュー。どんな風に?」


「ニードル+ショット➡ニードルショット・スラッシュ+ブーメラン➡スラッシュブーメラン」


「また投擲スキル? 多分それ、開発者も斜め上の発想だよ」


「そうだったらプレイヤー冥利につきるが、妹は何かあるか?」


「何かと言われても、ね。一応兄さんが知らなそうなことと言えば、闘技大会が開かれることとか」


「闘技大会? それ、昼じゃあないだろうな」


「一応屋内だから。それと、ペア制なの」


「じゃあ私と妹で、ということか?」


「それがね…………もう組んじゃったの」


「おい」


「だから、兄さんも他の候補を探して欲しい」




 闘技大会か。しかし、ペア制となるとパートナー、妹が組んでくれなかったのは痛いがしょうがない。そもそも、私と妹の相性は可も不可もなく。私の頭の中に浮かぶのはまずライル、だが同じ片手剣のうえおそらくは無理だ。ライルたちは除外するとゲイルか? あいつなら一匹オオカミ的なノリで誰とも組んではなさそうだな。








翌日 

 壮大なテーマが流れる、映像は黒から一気に空へ。視点は空からゆっくりと地上に降りて行き、音楽も少しゆったりとしたものに変わる。しかしスケールの大きさは変わらず、草原へと風が吹きながらモンスターたちの様子に移る。そこに現れるプレイヤーたち、スライムやウルフ相手に集団で相手している姿が至近距離で映し出される。そこから映像は加速し、ボス戦。おそらくライルたちのパーティによる戦闘の様子だろう。そこから視点は再び空、雲は流れ時は夜に。金管から木管に変わっている楽器は弦楽器へ、静かにヴァイオリンたちが奏でられる。ん? これは私か、昼とは一転した夜の戦いはブラックスライムと戦う私で幕を閉じ、打楽器が盛大に鳴り響く。シンバル、ドラム、大太鼓、トランペットたちも加わって一大フィナーレ。そして朝を迎えプロモーションビデオは終了した。


「まさか出演しているとはな」


「まさか、じゃなくてやっぱりでしょ。あと、これともう一本ある方にも出演しているから」


 ちなみにもう一本の方は街の様子をメインとしている、確か始まりと終わりの町だったっけ。



「ゲイルへ、闘技大会でのパートナーは決まっていますか? もしいないのなら私と組みませんか?」


 疑問形が多いがこれでいいか。けど、すぐに返事は帰って来た。


『PVは見たぜ、ブラックスライムってあれかよ。闘技大会についてはパートナーが既にいるので断る』


 意外だ、居たのか。しかしこうなると困るな。ペアを組むだけなら適当な人間と組めばいいが、相性の問題云々を考えると適任者はそういない。

  




 細かいことを気にしていたらどうしようもない、闘技大会までまだ時間はある。なら、洞窟にでも挑むか。



・ツラララ


 鍾乳洞に擬態したモンスター、生息区域が限られる。


 ん、なんだこれ。入り口から押し寄せるバットとブラックバットの集団は、ある程度倒されたのかすんなりと入ることが出来た。なので洞窟の奥に進んでみた結果がこれだ、念のため上にも鑑定を使ってみたら案の定いた。見たところ攻撃方法は上から落ちてくるだけなので盾があれば問題ないが、そんなものはない。


「”ブーメラン”」


 よって、ブーメランを使うことになる。ちなみに片手剣ではなく本当にブーメラン、何事にも適材適所があるので。


・ゴーレム


石によって作られたモンスター、人に使役されることもままある。


 ああ、そういや誰だったか。マリオの方は思いだせても他が思い出せない。だがピンチ、ゴーレムのような固い相手は苦手だ。基本、私のスタイルは回避基本、投擲で牽制、付与で強化してニードルで突いていく。さまざまな絡めて、小技を使って戦ってきたが、これといった大技、つまり必殺技とでも置き換えればいいか。要するに、私には必殺の威力を持つ技がない、起点を見つけてコンボで繋いでいるため一発一発のダメージが微妙。だから逃げる?


「付与、筋力 付与、生命 付与、敏捷 付与、器用 ”ニードルショット”」


 んなわけはない、ありえない。一時撤退ならともかく、逃げるのは許せない。固いのなら足から狙おう、間接部分を狙え。腕によって弾かれるが、すかさずもう一投。膝あたりに命中、ゴレームは駆けだしてくる。


「”スラッシュブーメラン”」


 二本、投擲して私もじりじりと後退。ゴレームの巨腕が揺れる。私は迫ってくるだろう拳に注意を払うが、それは私ではなく地面を叩いた。ゴオオン!! 視界が揺れる、思わず体勢を崩してしまった私に再びゴーレムの拳、避けられそうにない。私の危機を救ったのはスラッシュブーメラン、間一髪のところでゴーレムを急襲した。だがしかし、首筋に当たったはずなのにさほどゴーレムのHPは削られていない。


「”ジャンプ” ”ジャンプ” ”ジャンプ”」


 思い出すのはゲイル、相手が地面を揺らすのなら空中に滞在すればいい。狙うは投擲を交えたヒットアンドアウェイだ。跳躍しながら投擲をするのは至難の業、上手く当たったのは三分の一程度だったが上出来だと思おう。 

 投擲した片手剣諸々を回収していると、再びゴーレム。しかも三体、とてもじゃないが戦う気にはなれない。ゴーレムが三体ということは地ならしが三倍、地面に着地した隙に揺れること間違いなしだ。仕方がないため、回収できるだけ回収してすぐに逃げようと思った矢先、ゴーレムが倒れた。


「あ、伯爵さん」


「轟?」


 出会ったのは鬼人の轟。得物であるハンマーでゴーレムたちをぶっ潰していた。ここで出会ったのも何かの縁、一縷の望みをかけて聞いてみた。


「すみません、戦闘中に逃がしちゃって」


「いえ、問題ないです。ところで、闘技大会は知っていますよね」


「ええ、妹さんから聞いてます」


「実は、私のパートナーが決まっていなくて。もし、轟さんの都合がよければ一緒に参加して欲しいのですが」


「勿論! 私は今フリーなので問題ないです」





 次のログインは、轟と二人で作戦会議することに充てられた。


「覚えているアクションスキルは?」


「ジャンプより、ジャンプ・ハイジャンプ・ダブルジャンプ。投擲より、ショット・チャージ。斧より、スラッシュ・スマッシュ・スタンプです」


 轟の構成は完全物理特化、ガンガンイケイケということだ。私も防御するようなタイプではないので、基本は速攻で行くことになる。


「付与二、敏捷」


 当然轟にも付与をすることになるだろうから、敏捷で感覚が変わるのをマスターしてもらう。それと同時に私は斧の攻撃を受ける、攻撃範囲をしっかりと把握して、巻き添えを受けないようにするためだ。


 こうして時間は過ぎ、やがて闘技大会当日が訪れる。





「ハーイ!今回この闘技大会の司会を務めさせていただくのはさすらいの記者ことフーと、始まりと終わりの町で警備隊長を務めていらっしゃるジョンさん! ちなみにレベルは30越え確実っ!」


「若人たちの熱き戦いに期待している」


 ブーか。レベル30には到底届かない、NPCとはいえ逆らうのはありえないな。


「ではでは一回戦、注目の初試合は【魔王】伯爵と【修羅】轟の優勝候補!! 対するはハーフヴァンパイアの女性コンビ、ミーシャとアイスだっ!! 一回戦から白熱っ!!!」


「二つ名持ちの実力を是非とも確かめたいな」





「――――二つ名?」


「ああ、今回のアップデートで追加されたらしいですよ。決め方は運営がプレイヤーの評判をリサーチしたとか」


 で、魔王。なるほど魔王、魔王ですか。私、魔王の割には火魔法すら使っていません。付与魔法オンリーで補助的な使い方しかしていませんが? 



「納得いかない! 私たちが負ける雰囲気、いかにも噛ませ犬じゃん。戦うからには本気で勝つつもりで行きたいの!」


「まあそうなんだけど…………ほら、二人とも伯爵さんに負けたし」


 確かに戦った、そしてミーシャの言うことにも共感できる。


「その通りだ、君たちが勝てば番狂わせだろう。全力でかかってこいっ!!!」


 だから、魔王らしく堂々と迎え撃ってやろうではないか。


「伯爵さん、行きましょう」


「付与二、筋力 付与二、生命 付与二、精神 付与二、敏捷 付与二、器用 『狂化』」


「”ウインドステップ”」


「アイスワールド!」


 少しは怯ませたと思ったのに、全然屈してないのは驚き。やはり、ゲイルの咆哮並でないとダメか。

 相手方はウインドステップ発動後にフィールドを凍らせた。私は付与術でMPを8割消費しているが、あっちは全部使う勢い。つまり、それだけこの策に賭けているのか。凍ったフィールドでは動きづらい、


「”スケーティング”」


 それを難なく、それどころか加速して迫るのはステップのスキルか。私は今までステップをあまり使えないスキルだと判断していたが、これにより評価を改めた。対策スキルが無いと詰みかねないが、運よく対抗策はあった。


「”スマッシュ”」


「”ショット”」


 相手が自分たちに有利なフィールドを作るのなら、それをぶっ壊せばいいのだ。ついでに氷塊を投げつけてみるが躱される。


「”ターンジャンプ” ”ニードル”」


「”ジャンプ” ”ダブルジャンプ” ”ハイジャンプ” ”スラッシュ”」


 回転しながら適確に急所を狙うのは、さすがといえるだろう。しかし私は一回戦なんぞで負けるわけにはいかない。再びゲイルのを参考にしてジャンプして同じ土俵に立ち、ダブルジャンプからのハイジャンプで急加速。そして同じニードル使いとして分かるのはニードルは横方面からの攻撃には非常に弱い。槍が弾き飛ぶ、


「”ノックキック”」


「”チャージキック” ”ランス”」


 奇妙なことにあの時と同じシチュエーション、だが両者あの時とは違う。私がノックキックで蹴り飛ばすことを予期したのか分からないが、ミーシャはチャージキックを選択した。地面に倒れるはずの瞬間、チャージキックが発動して再び空へ。都合が悪いことに狂化も切れて無防備な姿勢――――ランス! とっさの判断で体を捻らせるが、地面に激突した。


「”ダッシュ” ”チャージランス”」


 これで終わりだ、と言わんばかりの一撃。仕方がないから切り札を解禁することにしよう。


「二重付与、筋力 ”スパイラルニードル”」


 私とミーシャは激突した。

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