プロローグ
平均文字数はこれの二倍……の予定
第一回闘技大会終了までの短期集中連載(毎日更新なだけ)だよ! その後エターだよ! それでもいいなら付き合ってね!
外は太陽が照らしているのに雪が降っているという、異常気象と断定していいかと思われる日傘日和。私はそんな天気を眺めて日傘の実用性について脳内会議しつつとあるゲームを起動させていた。
『99……100%、起動完了』
さて。馬鹿馬鹿しい議論を終了させた私は少し気合を入れて操作に移る、結構手間がかかるからやはり脳内会議は続ける。何がやはりなのかだが次のお題は相合傘するくらいなら濡れてでも帰るべきか、についてでいいか。
『キャラクター名はバカヤローでいいですか?』
無論良くない、冗談である。一人でやってもむなしいことこの上なし。男子ならセーフ女子なら風邪ひいてでも帰るが正解か?
『全てのキャラクター設定を完了しました、それではこのファンタジアでの冒険をほどほどにお楽しみください』
ほどほどになのは、ベータ版だからだそうだ。キャラクターデータは引継ぎされないからどんなに頑張っても三日間で削除。となると私がやるのは検証だろう。やる気ない、キャラ名も結局馬鹿からシカにした。
VRMMO。宗教やら政治やら何かと話題になることが多い新世代のゲームだが、最悪デスゲームになったとしても私はやる。なぜならゲーマーだからだ。私が出来ないのはパズル系程度であって、王道RPGであるファンタジアをプレイしない理由などない。
「高かったがな………」
VRMMOの平均単価は七万円だが、これの値段はその三倍以上の二十二万。(しかもファンタジア専用)快適にプレイするためのベッドなどを取り寄せると合計で二十五万程度。高すぎる。それでいてプレイ時間には安全面の都合上制限が掛けられる。救いはゲーム内時間の二十四時間=現実の八時間だということか。
「チュートリアルを始めますか?」
「いいえ、ベータ版なので必要ないです」
どうせ、本サービス開始の時はちゃんと聞くから今は必要ない。面倒なチュートリアルを飛ばしまくりゲームがスタートする。AIらしき人物に転移されたが、町だ。始まりと終わりの町、なぜ終わりを付けたか意味が分からないが何の捻りもないよりはまだいいだろうと割り切り、地図を確認して定番であろう武器屋に向かう。私は現在10000Kを持っているので武器は買えるはずだ。いらっしゃいと店主の掛けた声を適当に流し、さっそく物色する。
鑑定
鉄の剣
スキルレベルが低いからか?名前しか分からない。今更だが、ファンタジアはレベルとスキルレベル制の両方を採用している。特に、スキルは何個も持てるが、開発者曰くそんなにスキルポイント(以下SPと略す)に余裕はないとか。ベータ版では一律三十ポイント配られ、ベータ版特別仕様として神殿でスキルの交換が可能だ。私は今役に立たなかった鑑定スキルを交換しに行きたくなった、神殿は死に戻りする時程度しかどうせ行かないに決まっている、ならば行こうか。だが神殿の位置を確認した私はやはり気が変わる、どうせスキルを変えるなら全部確認してから変えた方がいい。というわけで私は草原に向かった。
ラビット
名前だけ表示される敵モンスター、これならやはり鑑定は要らないかもしれない。襲ってくる様子はないので気配を消して不意打ちしてみる。半分HPを減らしたが即座に飛んでくる反撃。盾スキルは取らなかったのでバックステップをしてみるも避けきれず、尻餅をついてHPが約一割減った。武器を手放して逃げたが攻撃する手段がない。仕方がないから投擲スキルを持ってすらいないのに小石を拾って投げラビットの気を引き、その隙に武器を回収。が、ラビットは案外早く戻ってきて飛び蹴りが飛ぶ。避けれるかどうか自信がなくなっていた私は逆に前進してしゃがみ、ラビットの蹴りを上空に見上げてその無防備な腹を突き刺した。なかなか苦戦したが面白い、次のモンスターを探すとすぐに見つかった。
スライム
雑な名前だ。スライムに物理攻撃が効くかは永遠のテーマにしてもいいか考え中。物は試しと切りかかるがすんなり攻撃が通った、ここのスライムは雑魚?しかし油断は禁物だった、スライムは分裂して私を挟み撃ちに………やはり雑魚の評価を覆すには値しない程度の強さだったが。精々斧だと苦戦するかもしれない程度のレベル、スライムに魔法が良く効けばここのスライムの雑魚判定は未来永劫変わらないだろう。その後もモンスターを探したがスライムが多い、先ほどのラビットは見つからない。三体のスライムを片づけたら別のモンスターに出会った。
ドッグ
ここまで来ると呆れを通り越して諦めの境地だ、元から名前に期待などしていなから問題ないとしても。ドッグはこちらを見るなり突撃してきたがラビット程ではない、失いかけた自信を若干取り戻しながらギリギリその牙を避けて首を切り落としにかかる、が仕留める前に仲間を呼ばれた。一体なら何ら問題ないが二体だ。しかも都合が悪いことに前方と後方に囲むように、分裂チビスライム(勝手に命名)とは脅威度が2つくらい違う。どうしようもないので今度は投擲スキルを取ってないのに剣を投げる、外す。そうそう剣を投げる機会などないから仕方があるまい。どうにか開けた隙間に向かって走り、剣を回収して仕切り直し。同じ二体でも前から向かってくる方がやりやすい。先行して突撃してきたドッグAに剣を突き刺しそのまま蹴りを追加してどうにか押し戻す。で、もう一方のドッグBが来たら逃げる。ヒットアンドアウェイを何度か繰り返し私はドッグを二体撃破した。
「疲れたな…………帰るか」
今更ながらだがスキルには蹴りもある。ついでに言うならダッシュもある。スキルの検証をするはずなのにスキルを使わず戦闘することに少し落ち込みながら、私はゆっくりとした足取りで神殿に向かった。
「なるほど……………………?」
結局流れるように質問をして、いつものように説明書を見ることになるのは私のプレイスタイル故か。スキルにないアクション(例えば投擲、蹴り)は習得していなくても当然できる。ただ、そこに補正はかからない。基本的にただの蹴りで、格闘家でもない限り実用性があるかどうかは微妙らしい。序盤なら通用しないこともないがレベル10以降でスキルなしはちょっと……厳しいんじゃないですかね。byスタッフ。基本的に人間のできる範囲内であればスキルなしでもできる。私は柔道も剣道も何にも経験がないからそういう系は不要、となると…………自分に合ったプレイスタイルを探しながらベータ版での三日間は過ぎて行った。
そして――――
「兄さんはベータ版を入手したんでしょ……何してたの? 生産で遊んでたか、それともゾンビアタックでも?」
「普通にスキルと種族の検証してただけだ。獣人がやたらとバリエーション豊富だったから苦労したよ。」
「変え放題だもんね。兄さんのお薦め種族とスキルは?」
「フツーーーに、プレイしたいなら人間か獣人、もしくはエルフ。スキルはジャンプがいいかもしれないし良くないかもしれない。」
「兄さんは何にするの?」
「ソロで付与術メインの吸血鬼。あ、もし妹が吸血鬼にしたいならハーフヴァンパイアにした方がいい。」
「デメリットが多い吸血鬼に関してはいつものことだからいいとして、何故ソロなのに付与術?」
「付与術は結構MPを喰う。吸血鬼は種族スキル吸血でMPを補給できる。ただし、そのためには接近が不可欠。他の魔法だと遠距離から攻撃が基本。付与術なら接近戦のためにステータスを上げられる。それに、吸血鬼は聖魔法が使用不可だから体力回復の付与が出来る付与術とはやはり相性がいいかもしれない。」
「はいはい、それなら吸血鬼以外の種族にすれば解決します。で、私は何を選択すべき?」
「一緒に魔族と吸血鬼の超高火力パーティ組まない?」
「了解。」
妹への信託を終えた私としては、はゲーム内で再会したいところだが今回は見送らざるをえない。ゲーム内時間では今昼なので、噴水で待ち合わせして10分待ったらいつの間にか教会行きもありうるので。
妹がログアウトして今度は私の番だ。一台のマシンを共有している訳ではないので待つ必要などどこにもなくただ夜になったら始めればよかったが、私は待った。特に意味はない、のんびりと初期設定を考えていた通りに入力し始める。
ネーム 伯爵
種族 吸血鬼LV1
スキル 吸血LV1 片手剣LV1 付与術LV1
SP残り1(吸血鬼は必ず吸血を取得する。初期SPは26で片手剣で10、付与術で15消費して残り1)
さあ、冒険を始めようじゃないか。