第2話「夢はいつも最後まで見ることができない」
私は恋をしている。
相手は白馬の王子様でもなければ幼馴染の男の子でもない。
そもそも男の子ではないのだ。
「おっはよー!昨日はごめんね~」
ポニーテイルを揺らし、一人の少女が私に話しかけてきた。
彼女の名前は黒田美紀。中学の頃からの親友で、そして私の好きな人の妹。
そう、私は親友の姉に恋をしたのだ。
「ねえ、美紀ちゃん。美紀ちゃんのお姉さんってなんかこう……素敵な人だね」
「え、そう?まあ確かに姉ちゃん外面いいからなぁ。でも家の中だと結構だらしないよ?私によく甘えてくるし」
なにそれ萌える。
これがギャップ萌えというやつか……。
「結衣、どしたの?なんか顔赤いよ?」
「え、いや全然大丈夫。うん」
どうも絵里先輩のことを考えるとボーっとしてしまう。
いけないいけない。
私と美紀ちゃんはそんな会話をしつつ、校門をくぐった。
ふえぇ……授業やだよぉ……。
時は流れ再び放課後である。
私は再び数々の困難(授業)を乗りこえたわけだ。
私まじ勇者。勇者すぎて勝手に人様のタンスとかのぞいても怒られなさそう。いや、怒られるか。
「美紀ちゃん、帰ろ~?」
「うん、いいよ~」
今日は一緒に帰れるらしい。
ということはあの素敵なお姉さまに今日は会えないということで、少しさびしいような気もするが、まあ仕方あるまい。
ていうか二日連続ぼっち下校なんぞしたら、「うわ~、あの子今日も一人で帰ってるぅ~!かわいそぉ~!」なんて思われちゃいそうでやだ。
空は夕日で赤く染まり、私たちを照らす。
私たちはいつもの帰り道をいつものように並んで歩く。そして、いつものようにくだらない話で盛り上がる。
でも、なにかが違う。
なにかはわからない。でもなにかが確かに違うのだ。
結局、その違和感の正体に気づかぬまま、私は家についた。
扉を開けると、なにやら美味しそうな香りが漂ってきた。
おそらく母が夕食を作っているのだろう。
この匂いはカレーかな?
とりあえず、カレーができるまでの間、私は自分の部屋にいることにした。
鞄を下ろし、ブレザーをハンガーにかけると、私はベットにダイブする。
そして、使いすぎてだいぶくたびれてきた枕に顔をうずめると、静かに目をつぶった。
私の前に一人の少女が立っている。
艶のある長い黒髪と透き通るような白い肌。言わずもがな、我が思い人・黒田絵里である。
彼女は頬を赤らめ、恥ずかしそうにモジモジしている。それもそのはず、なんと彼女は一糸纏わぬ、生まれたままの姿なのだ。
そして彼女は私に近づくとこう言った。
「ねえ、私のこと……メチャクチャにして?」
はい、喜んで!
まさか先輩がそんなこと言なんて!まるで夢のよう……。
まあ、夢なんですけどね。
「結衣、寝てるの?ごはんよ~!」
「はぁ~い」
もうちょい先まで見せてほしかった……。
まあ、気を取り直してカレー食べますか……。
あ、ちなみに私は福神漬けよりもらっきょう派です。