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我輩

むすこ

作者: 紅蓮

 我輩は3月生まれの1歳児である。

 まだ歩く事は出来ない。

 その代わりに高速はいはいで家中を縦横無尽に駆け抜けている。


 たまに台所に入り込むと、危ないからと歩行器に乗せられる事がある。

 これはしめしめ。

 はいはいよりも更に高速移動が可能となるのである。


 前後左右ツイーッツイーとまるで自分の手足のようである。

 そして、並み居る大人達の足を轢きまくり…。


「痛いってば!」

「うぎゃー!」

「脛をヤられた!」

「踵を削られた!」


 大人達の足には青タンが満載である。

 にんまり。


 じぃじとばぁばからは毎日のように早く歩きなさいと急かされるのである。

 まま上とぱぱ上は自分で歩きたくなったら歩くと良いよと言われているのである。

 靴も買ってくれたが、いつになったら履いて外に行けるのか…。


 今の所、室内では高速はいはいと掴まり立ちとよじ登りで、外を移動する時はぱぱ上やまま上に抱っこされて運ばれているので問題はないのである。


 不自由は感じていないのである。


 ただ…あの、店とやらに行った時に乗せられるカートとやらは大嫌いである。

 我輩の柔らかくて小さな可愛い尻が痛いのである。

 ぱぱ上、我輩を抱っこする名誉を与えるぞ。

 我輩を抱っこせい!


「オレのガラスの肘が…!」

「まぁ、10キロちょっとあるしねぇ。私に長時間抱っこは無理だから、ガンバ☆」



 我輩はまだまま上から乳を頂戴している。

 この頃乳の出が悪くなり、イラっとして噛み付くとまま上の悲鳴が聞こえるのである。

 にやにや。

 

 我輩が所望しているのに乳を寄越さないまま上が悪いのである。


 その後、理不尽にも怒られるのが悔しいのである。

 うぇーん;o;




 我輩は動物が好きである。

 ぱぱ上が子猫の時から大事に育てている 虎太郎(こたろう)は我輩にとって良き遊び相手である。

 縞々の毛を毟り取り、その巨体を押し潰し、そのふかふかな腹に顔を埋め、噛み付く。

 うむ、楽しいのである。


 ぷにゃぁぁぁ…。

 

 しかし、虎太郎が苦しげな声を上げるとぱぱ上が止めに入るのである。

「こら息子、コタ君の方が嫌がってるぞ」

「いいこいいこしなさいね。コタ君は息子に噛み付いちゃだめだよ」

 そしてひょいっと抱っこされてしまうのである。

 もっと遊びたいぞ!

 ふぇーん;o;



 まま上の実家とやらには犬の小太郎がおる。

 胴長短足の黒い犬である。

 ヤツは我輩に決してその身を触れさせないのである。

 我輩の顔を見るなり、ワンワンキャンキャンとうるさいのである。

 たまに油断している所を触ろうものならグルグル言うのである。

 そうなるとまま上の鉄拳が小太郎の頭に炸裂するのである。


「ゴルァァーーー! コタ、ちょっと触っただけで怒るな! 好い加減に慣れなさい!」


 まま上に怒られるとシュンっとなるクセに、小太郎はまま上に抱っこされている我輩に近寄りはすれども触らせてくれないのである。

 しょんぼり。

 そのつるつるな毛並みに触りたいぞ…。


 我輩がまま上の膝から放たれると、早速まま上の膝の上で我が物顔で座るコタが憎らしいのである。

 うぬぅ…。

 まま上の膝は我輩のものだぞ!


 

 我輩が今気に入っている動物は、誕生日前に初めて連れて行かれた川にいた大きな白い鳥である。

 自分よりも大きな白い鳥に、我輩は大喜びであった。

 こんなに大きな鳥は見た事がなかったぞ。


 そして今、その大きな白い鳥は毎日朝方と夕方にクエックエと鳴きながら家の側を飛んで去年デントコーン畑であった畑にいくのである。

 一匹だけではない。

 沢山の大きな白い鳥が飛んで行くのである。

 我輩は眠い眼を擦りながら朝も早くからキャッキャ☆

 

 うむ、楽しいのである♪


 それも一度や二度ではないため窓から離れたくないのである。

 故に着替えが進まぬとまま上に叱られるのである。

 更にはご飯が進まないとも。


 しかし、その移動は精々9時頃まで。

 落ち着いた頃にパジャマを脱がされ、用意された食事を食べさせられるのである。

 それから散歩なのだが…大きな白い鳥がいる畑には歩いて行けないのである…。

 いや、我輩はまだあんよが出来ぬが故、まま上の背中に負ぶわれての移動なのだが…うぬぅ…まま上、気合を入れて歩いて行くと良いぞ。

 我輩は近くで見たいのだ。

 

「歩くには遠すぎるし、車で行ってもあずる(地面がぬかるんではまる事)から無理なんだよねぇ。牛で我慢しとけ」


 まぁ、我輩は牛も好きである。

 近寄るとあっちも興味を示して近寄って来るのである。

 初めて行った時は巨大な動物が沢山近寄って来て涙目になったが、慣れれば楽しいのである。

 触る事は出来ぬが…。


 


 我輩は1歳児である。

 これからどんな事を経験していくのか楽しみである。 

  

 

 


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