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牢獄の箱庭  作者: MATCC
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第1話 牢獄の箱庭

 突然の大きな衝撃とともに、学生服の学生は目を覚ました。学生の名は、小里口将師。この物語に巻き込まれた不運な主人公である。

小里口:「いっつ。…ここは、どこだ?」

周囲を見渡すと、そこは旅客機の中のようだった。そして、今いるのは一番後部座席のほうだった。小里口は、立ち上がろうとしたが、できなかった。すぐに、足が痛み、姿勢を崩した。どうやら、衝撃の時に、足を打撲したようだった。それで、しばらく様子を見ることにした。周囲の乗客たちは互いに困惑していた。それもそのはずである。この旅客機はどこか傾いていたからだ。

乗客A:「おい。一体、どうなっているんだ?」

乗客B:「今、一体どこだ?」

乗客たちはわけがわからない状況に、ただただ慌てだした。それをCAたちが必死に落ち着かせた。

CA:「皆さん。落ち着いてください。」

そのときだった。突然、CAの首が吹っ飛んだ。その背後には、大きな鎌をもった黒装束の少女がいた。小里口は、恐怖を浮かべた。

小里口:(な…なんだ?あれは?)

鮮血が飛び散り、乗客たちは悲鳴を上げた。少女は、悪魔のような高笑いをした。乗客たちは混乱し、悲鳴を上げながら背を向けて逃げていった。その無防備な後ろをその少女は、何のためらいもなく鎌を振り上げた。その鎌は、驚くほど鋭利でなんでも切り裂いた。小里口は、ガタガタと震え、身をすくめた。

小里口:「ゆ…夢だ。これは、現実なんかじゃない。」

しかし、現実以外の何物でもなかった。惨劇の後、小里口はそっと顔を出した。そこには、血まみれの少女が満面の笑みを浮かべ、死体の中をくるくると回っていた。

少女:「みてみて。きれいな赤いお花畑。」

小里口:(………狂ってる。)

そのとき、少女はヒタッと小里口のほうへ視線を向けた。小里口はさっと身を隠した。

小里口:(まずい。)

少女:「あれれ~?まだ、誰かいるの?」

そして、少女はゆっくりと歩いてきた。

小里口:(死んだふり。とにかく、死んだふりだ。)

幸いにも、近くにはショック死した乗客が何人かいた。迷っている暇はなかった。もうすぐそこまで、少女は迫っていた。小里口は夢中になって、死亡した乗客たちの中にもぐりこんだ。そして、少女が小里口の手前までやってきた。うれしそうに口を開いた。

少女:「ここだ。」

小里口は目をつぶった。少女は思いっきり、鎌を振り上げた。鎌は小里口の上にある死んだ乗客の身体を貫通し、そのまま旅客機の床に突き刺さった。幸いにも、鎌は小里口の身体のギリギリ横を通り過ぎた。

少女:「あれれ?気のせいだったの?」

少女は、鎌を抜き、去っていった。小里口はしばらく動けなかった。ぶるぶると震え続けた。そのとき、また足音が聞こえてきた。

小里口:(また、あの少女か?)

そして、小里口の手前で止まったかと思うと、小里口の両足を引っ張って、死体の中から引きずり出した。

小里口:(見つかった。もうだめだ。殺される。)

しかし、そこにいたのはさっきの少女ではなかった。革製の服装をしたまるで戦闘機パイロットのような服装をしている軍人のような若者だった。その軍人は、小銃を構え、警戒していた。銃口は小里口を完全に捉えていた。

軍人:「動くな。」

小里口は、とっさに両手を上にあげた。

小里口:「待ってくれ。撃たないでくれ。」

軍人は、だいぶ警戒をしているようだった。

軍人:「この惨状は、お前の仕業か?」

その口調は、きついものだった。

小里口:「違う。俺じゃない。」

軍人は、それでも黙って、その冷徹な目で小里口を観察していたが、突如銃口を下ろし、息絶えた乗客たちのもとへしゃがみ込んだ。小里口は、それに気付いて両手をおろした。

小里口:「おい。何しているんだ?」

小里口が軍人の様子を見ると、軍人は乗客たちのポケットを探って、物色をしていた。

小里口:「おい。何やっているんだよ?」

小里口は、乗り出そうとしたが、軍人はさっと銃口を小里口に向けた。そして、ただ一言言った。

軍人:「俺から離れろ。近づくな。」

小里口:「わ…分かったよ。だから、撃たないでくれ。」

小里口は両手を挙げながら、ゆっくりと後ろ歩きを始めた。軍人は、一通り物色を終えた後、黙って外へと飛び出そうとした。

小里口:「ちょっと、待ってくれ。」

軍人は、足を止めた。

軍人:「何だ?」

小里口:「一体、何がどうなっているんだ?さっきの子といい。あんたといい。」

軍人は、眉を吊り上げた。

軍人:「さっきの子?」

小里口:「ああ。大きな鎌をもっていた黒装束の少女だった。」

軍人は、身を乗り出した。

軍人:「なに?奴がここに来たのか?」

小里口:「やつ?」

そして、冷静に周囲をみて、納得をした。

軍人:「なるほど。これは、奴の仕業か。どうりで。…まったく、とんだ死神だな。」

軍人は、唾を吐き捨てた。

小里口:「ちょっと待ってくれ。あの子が何者なのか知っているのか?」

軍人は、今まで小里口のことを忘れていたようだった。

軍人:「…冷酷な殺人鬼だ。」

小里口:「あの子の名前は?」

軍人は肩をすくめた。

軍人:「さあな。奴は、死神と呼ばれているらしい。」

小里口:「…死神?」

小里口は、少女が鎌を振って、人々を惨殺した様子を思い出し、震えた。

小里口:(確かに、あの光景を見たら、その名前がぴったり合うな。)

軍人:「じゃあ、俺は行くからな。」

小里口:「ちょっと、待ってくれ。あんたの名前は?」

軍人:「…東倭帝国軍、特務軍所属浅賀少尉だ。」

小里口は、首をかしげた。

小里口:(うん?東倭帝国?どこかで聞いたような?)

浅賀は、それだけ言うと、さっさと前の席のほうへと向かっていった。

小里口:「あっ。待ってくれよ。」

小里口は慌てて後を追った。そして、カーテンを開けて前のほうへと着た途端、そこには驚くべき光景が広がっていた。操縦席があるはずの部分がまるでやぶられたかのようになくなっていた。先には、木々が広がっていた。どうやら、この旅客機は森の中に突っ込んだようだった。

小里口:「これは?」

浅賀は、ポケットからワイヤーを取り出し、近くの座席に固定して、降りようとしていた。

小里口:(いっ…一体、なんなんだ?この光景は?さっきの子といい…この浅賀という軍人といい。ここは、一体どこなんだ?確か、俺は西都へ留学に向かっていたはずだ。なのに…なんで、目の前に木があるんだ?)

浅賀は、慣れた手つきでワイヤーで旅客機から外へ降りていった。

小里口:「とりあえず、追おう。」

そして、外へと飛び出した。そこは、森林の中だった。日はもう落ちており、あたりは暗かった。浅賀がもくもくと歩いていく中、小里口は必死に追った。

小里口:「待ってくれ。ここは、どこなんだ?」

浅賀は何も答えなかった。不意に、小里口は誰からからの視線を感じた。

小里口:(なんだ?誰かに、みられているような気がする。)

周囲を見渡したが、誰もいなかった。浅賀を追うと、海辺にでた。そして、視線の原因に気付いた。上空いっぱいに、巨大な顔があった。小里口は、唖然とした。

小里口:「あっ…あれは?」

巨大な顔は楽しそうな表情を浮かべていた。

浅賀:「見るな。」

浅賀は、近くの洞穴に近付いた。入り口は周囲とは見分けがつかないようにカムフラージュされていた。浅賀はそれをとって、しゃがみ込み、仕掛けた罠を解除していった。

小里口:「どうして、罠なんかを?」

浅賀:「…襲撃されるからに決まっている。」

小里口:「襲撃?」

浅賀が罠を解いて、奥へと進んだ。小里口も慌てて中へと入った。奥には、巧妙に隠された大量の備蓄と古びたソファーがあった。そして、備蓄の中には武器もあった。浅賀は乗客からとったものをそこに加えた。そして、ソファーに腰掛けた。近くに木箱があり、そこに手製の地図らしきものがあった。

小里口:「ここは、浅賀さんが作ったのですか?」

浅賀は、何も答えなかった。

小里口は、質問を変えた。

小里口:「じゃあ、さっきの空の上にあった顔は?あれは、一体何なんですか?」

浅賀は、少し迷った挙句、口を開いた。

浅賀:「…あれは、俺たちをこの箱庭に閉じ込めた奴だ。」

小里口:「箱庭?」

浅賀:「奴の詳しい名前は、俺も知らない。ただ、反逆者と呼ばれているらしい。」

小里口:「反逆?一体、誰から反逆を?」

浅賀:「さあな。」

小里口:「じゃあ、さっき言った箱庭っていうのは?」

浅賀:「ここのことだ。」

小里口は何を言っているのか分からなかった。

小里口:「ここ?…ここの緯度はどの辺ですか?」

浅賀:「ここは、緯度とかがない。…簡単にいえば、この島も含めて周辺はすべて地球上とは別の場所にある。それをまとめて、箱庭と呼称している。」

あまりにも、突拍子もない話だが、小里口は上空いっぱいに広がった反逆者の顔を思い出し、とりあえず信じることにした。

小里口:「それで、ここから抜け出すには?」

浅賀:「ポイントを稼ぐことだ。」

小里口:「ポイント?」

浅賀:「ポイントの合計が10000までたまれば、この島から抜け出せるらしい。」

小里口:「らしい?」

浅賀:「まだ、ポイントをためて、この島から抜け出せたものは少数だけのようだ。」

小里口:「今のポイントを確かめるには?」

浅賀は自分の左手首を見えるように、袖をめくった。そこには、肌に直接、2000という数字が刻印されていた。

浅賀:「ポイントを稼げば、自動的に刻印は変化する。お前にもある。見てみろ。」

小里口も手首を確認すると、そこには0という数字が刻印されていた。

小里口:「それで、ポイントを稼ぐには?」

浅賀:「…稼ぐ方法の一つは、同じようにこの牢獄に閉じ込められた人を殺してポイントを奪う方法だ。」

小里口は、聞き間違いかと思った。しかし、聞き間違いではなかった。

小里口:「殺すって…俺に、人殺しになれっていうことか?」

浅賀:「殺した相手のポイントは自動的に自分のポイントに足される。」

小里口は浅賀を警戒した。

小里口:「ひょっとして、俺を殺すつもりなのか?」

浅賀は、苦笑した。

浅賀:「そんなつもりがあったら、俺はとっくのとうにお前を殺している。大体、ポイントがまだ0のお前を殺して何のメリットがある?」

小里口:「でも、さっきの少女は大量殺りくをしていたぞ。」

浅賀:「奴は、ただの狂った殺人鬼さ。一緒にするな。」

小里口:「…そうか。でも、俺にはそんなことできない。」

浅賀:「やるかやらないかは好きにしろ。別に、お前がここでのこのこと生活しようが、何をしようが知ったことではない。ただ、相手が待ってくれるといいな。」

小里口:「待ってくれる?」

浅賀:「この箱庭に来て待っていても、何のルール説明もされない。お前は、今ポイントの稼ぎ方を知った。これで、最近ここに来たやつよりかは有利になったはずだ。しかし、時間がたてば当然他の奴らもこのルールを知ることになる。そうなれば、不利になるだけだ。」

小里口:「だとしても。…こんな方法なんてとれるわけがない。だったら、俺は泳いででもこの島から抜け出してやる。」

浅賀はため息をついた。

浅賀:「やめといたほうがいいぞ。さっきも言ったが、ここは地球上とは別の場所にある。泳いでも、帰れる保証はどこにもない。」

小里口:「じゃあ、他のポイントの稼ぎ方は?」

浅賀:「知らないな。」

浅賀は、何かを隠しているようだが、それ以上は語らなかった。

小里口:「大体、分かった。」

小里口は、そとに出ようとしたが、浅賀に忠告された。

浅賀:「今、出ないほうがいいぞ。今の時間帯は反逆者が腹をすかせている。広いところに出たら、つまみ食いされるぞ。」

小里口:「つまみ食い?」

浅賀:「ああ。なんなら、入り口付近から上空を見上げると良い。たぶん、だれか食わるだろうからな。」

小里口は入り口で待つことにした。すると、突如上空から大きな手が伸びてきて、地面にいる何かを掴んだ。小里口が目を凝らして見ると、それは人だった。その手はじたばたする人を無視して、上空に広がる顔の口に入れた。反逆者は顎を動かして、口の中に入れた人を食った。反逆者の口からは血が滴っていた。そして、手はまだ動いていた。次々と、人を捕まえてその口に入れていた。小里口は目を背けた。

小里口:「なんなんだ?あれは?」

浅賀は、まったく平然としていた。

浅賀:「つまみ食いだ。」

小里口:「あいつは、人をなんだと思っているんだ?」

浅賀:「さあな。家畜程度にしか思っていないかもしれないな。」

小里口:「家畜だって?…なんで、あんたはあんなものをみて、平気なんだ?」

浅賀:「なんでも見てきたからな。あれを見るのも、一回や二回だけじゃない。」

小里口:(どうやら、ただの軍人じゃないようだ。)

小里口:「あんたは、どうしてここに来たんだ?」

浅賀:「戦闘機乗りでな。敵に撃たれて、墜落していたらいつの間にか反逆者の手によってここに連れてこられていた。」

そのとき、上空で大きな音が響いた。

小里口:「なんだ?今のは?」

浅賀:「反逆者が満腹になったんだろう。」

上空を見上げると、いつのまにか反逆者の顔が消えていた。ただ、そこには星空が広がっていた。小里口は、ふとあることに気付いた。地球で見えるべき星座がその星空にはなかった。

小里口:「つまり、ここはやっぱり地球上じゃないのか。」



尚、本作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、一切関係がありません。予め、ご了承ください。

解説

 虫籠に入れた虫を上から見下ろす。まさに、本作品における反逆者はそんな役柄だ。そして、気まぐれのまま、動く。

 さてさて、ヒロインの役柄が「地下迷宮」のヒロインと似ているぞと読者から聞こえそうな気がしますが、全くその通りです。いちいち、役柄を考えるのは大変面倒極まりありません。でも、名前は変えてあるから大丈夫。

 そうそう。著者はいままであることを勘違いしていた。それは、最大文字制限。著者は本文は4000字までと勘違いしていたが、そうではなかった。なぜ、ひとけた読み間違えていたのだろう。おかげで、今までの作品「地下迷宮」なんかは各話は4000字以内で収めるようにしてしまった。まあ、大した問題ではないけど。

 そうだ。読者のみなさん、これから寒くなるので、体調にはお互いに気をつけましょう。著者も、半袖ではやっていけそうもないので、上着を着ることにしました。



尚、本作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、一切関係がありません。予め、ご了承ください。

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