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雨の日は、心は晴れ模様―お守り―


よしっ、と私は自室のカーテンを開けながら小さくガッツポーズをした。雨なのだ。


私は制服に着替えて、口笛をしながら一階にあるリビングへ向かう。朝食は簡単に済ませて、いつもより時間をかけて身だしなみチェックを洗面台の前で行う。


最後に制服にしわがないことを確認する。


鞄を持ち、両親に「いってきます」と言って、傘を持って外に出る。弟はまだ寝ているらしいので、返事が返ってこない。


私は気にせず外に出ると、雨はどしゃ降りとまではいかず、自転車で行くのは無理そうだ。まぁ、私はいつもバスでいくけどね。


少しスキップ気味てバス停へと向かう。五分もしない内に、屋根つきのバス停が見えてくる。早く来たので、人はあまりいないが、私の目当てというのはおかしいが、好きな人がいる。いつものように本を片手に読んでいる。


私はそっと、気づかれないように隣に立つ。既に、顔が赤くなっているかもしれない。


「ん?おぉ、今日も同じ時間だな」


いつも皆に見せている暖かい笑顔で声をかけてくれる。私はうつむいたまま、首を小さく縦に降ることしかできなかった。


と、言っても、雨が降ると君はいつもこの時間に来るのは知っている。でも、ストーカーはしてないよ。


なにも会話をしないまま、どんどん人がならび始める。押されるようにして私は君と肩があたる。


君は一言「悪いな」と言った。なんでかな?謝る必要はないはずなのに、というか私はとっても嬉しい。危ない危ない、涎が垂れそうだった。


バスがやってくる。やはり、中には人がたくさんいた。バスが私の前で止まり、私と君が一緒にバスの中に押し込まれるように入っていく。すると、やはり私と君は密着してしまい、君の背中から良い匂いが鼻の中に入ってくる。


しかし、そんな間に入ってきたのは若手のサラリーマンと言った方がしっくりきそうな、スーツを着た男が押し込まれるように私と君の間に入ってくる。


当然、君との距離が離れていく。


そして、私と君の間には二人が入り込み、私の身長は小さいので、君が見えなくなってしまった。


私は一つため息を漏らす。


いつもの私なら、ここで諦めているが今回は違う。昨日の日曜日に友達から教えてもらった恋が成就するといわれるお守りを買ってきたのだ。


そのお守りというのは、ハートの形をしている黒い石なのだ。友達はピンク色と言っていたが、これしかなくて、せっかく来たから買っていこうと思って買っていたのだ。


そして、そのハートの形をしている黒い石は鞄につけている。


不思議なものだ、ただの石と思っているのだが、不思議と力がわいてくるような気がする。


いつもの、私を変えたい。


バスは赤信号で止まった。


君に会いたい。その一心で前の人の間をすり抜けようとすると、意外にあっさりと行けた。次は若手のサラリーマンの男だ。体格は無駄のない筋肉を持ち、どっしりとした佇まいだ。


「すみませーん」


若手のサラリーマンの男に向かって言ってみるが、よく見るとイヤホンをしていた。こっちにも少し聴こえるぐらいの大音量でロック音楽を流していた。わざわざイヤホンを取って、言うのはわずらわしい。


私は深呼吸をして、隙間がないか確認をする。しかし、満員なので確認しづらい。


こうなりゃ、やけだ!


私は人と若手のサラリーマンの間に手を少しいれて無理矢理、横に押す。やはり私の力は弱いのか若手のサラリーマンは動かない。しかし、もう一人の方が少しだけ動いた。その隙間を私は逃さず入る。


またも、無理矢理前に進み出す。


鞄を抱えたまま前に進むが、やはりきつい。両脇の人は私より全然背が高く、息がしづらい。


その時、私の手を誰かが握り、引っ張ってくれる。君だ。


プチッ。


私はすぐさま鞄を確認するが、すでにどっかに引っ掛かかり、お守りと鞄を繋げる赤糸は切れていた。


コン。


地面にお守りが落ちてしまう。私が屈んで取ろうとすると、バスが急発進する。私はよろめいてしまうが、君が支えてくれた。


そのまま、私のお守りは後ろに転がっていってしまった。


「大丈夫だった?」


君が私に笑顔で言ってくる。私は「うん」と一言言った。


お守りはあとで回収すればいいか。


私は君の隣に、立つことができた。間にはなにもなく、君の後ろでもない。君と同じ立場の隣にいるのだ。


私は少しだけ君の袖を掴む。


「袖だけじゃ、危ないよ」


君はそう言いながら、私の手を握ってくれる。心臓が張り裂けてしまいそうだ。


「あ、ありが、とう」


私はその後、緊張がマックスで何を喋っているのか分からなかった。



∇▲∇▲∇



学校近くのバス停についてしまった。この時間が終わる。とても悲しい。外はまだ雨が降り続けていた。


一旦君と外に出た後、全員が降りるのを私は待ってから、バスの中で転がってしまったお守りを探すために運転手さんに許可を貰って、探した。が、どこにも見つからなかった。


これ以上運転手さんに迷惑をかけたくないので「ありました」という嘘をついてバスから降りる。


金額は百円だったし、諦めるか。私は少しブルーな気持ちでバスを降りた。


すると、傘をさしている君がいた。


「一緒に行こうぜ」


君は笑顔で私に言ってくれる。


とても眩しくて、太陽のような笑顔だ。




こんな雨の日でも、




君の笑顔を見ると、




心が晴れ模様になる。




「うん!」




一話目の後のお話です。


お守りは持っているだけで勇気が沸いてきます。まるで、誰かに応援されているような気分に。


最後となりました。見てくれた読者様に感謝感謝です。


それでは!また違う小説で会えたら嬉しいです。

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