雨の日は、心は晴れ模様。
君と私は雨で繋がってる。
今日はいい天気だな。
私は自室のベッドを降りて、ピンクの水玉模様のカーテンを両手であけながら思った。
「早くおきなさーい」
下の階からお母さんの声が聞こえる。ベッドの横にある目覚まし時計を見てみると、時刻は七時になろうとしていた。
私はお母さんに「今すぐいく」と言って、自室をあとにした。
階段をおりていると、窓からぽつぽつと音楽が流れてくる。その音楽は私を鼓舞しているように聞こえた。
「おはよう、お母さん」
リビングに入ると、お父さんは朝食を食べており弟はソファーで寝ている。きっと、テレビを見ながら寝てしまったんだろう。お父さんにも「おはよう」と言って、私も席につく。
「ごめんね、今日は弁当を作れそうにないわ」
お母さんはそう言いながら、パートにいくための用意をしている。私はうなずいた後、テーブルにある自分の朝食を食べ始めた。
自室に戻り、ハンガーにかけてある高校の制服に着替え終わる。鞄を持ちながら洗面台へと向かった。
洗面台で歯磨きをしていると弟が寝ぼけながら、顔を洗いにきた。私は弟の横で歯磨きをつづけて、弟がリビングに向かうと私は口をゆすいだ。短めの髪をくしでとかして、ヘアピンで前髪をとめた。
「いってくるね」
私は玄関にあるピンクの傘を持ってでると、外はぽつぽつと雨が降っていた。
傘をさしながらいつものバス停に向かう。高鳴る鼓動をおさえつつ、バス停につくと、やはり雨であるせいか人が多い。屋根つきのバス停にはもうたくさんの人がいた。
雨があたるバス停のとなりで、私は本を読んでいる君を見る。
しかし、私は近くにいかず、君を遠くから見ている。
私はこれでいいのだ。君を見てるだけでいい、告白して玉砕して、この気持ちを忘れたくないの。
君は私のクラスでは静かで、本をよく読んでるよね。だけど、人一倍友達思いで、とても優しい。
君は私のことをどう思ってくれてるのかな?
他の男子には普通に話せるのに、君と話すときだけはよく噛んじゃうんだ。変な子って思ってる?私はただ君が好きなんだ。
少しでも近くに、少しでも君の近くに、少しでも君と話したい。
私はいつもそう思ってるけど、君は気づかないよね。
私は少しだけため息をつく、雨の音が私耳に鳴り響く。朝とは違い、どしゃ降りになってきた。
これでいい。君はいつも自転車で高校に通っているけど、雨のときはバスなんだよね。バスの中で近くに立てたら嬉しいし、遠くに立ったら悔しいんだ。
「よしっ」
私は手を握って、小さく呟いた。
「おはよう」
隣から声が聞こえてきた。君だ。
「お、おおはよう」
うまく話せない。喉になにかがつまったような感じだ。舌もうまくまわらない。
「そんなとこじゃ濡れるから、ここいいよ」
そう言って、君は私にさっきまでいたところを譲ってきた。
「だだ、大丈夫だよ」
「僕は濡れても気にしないから」
君は私の手を握って、君がいたところに連れて行ってくれた。手が熱くなり、伝導するように体も熱くなってくる。今にも頭から湯気がでそうだよ。
「どうぞ」
微笑みながら言ってくる君を見てると、より一層好きになってしまう。
でも、君は私のいたところに戻っていこうとする。
「…ん?どうかした?」
私はいつのまにか君の裾を掴んでいた。私にも何をしているのか整理ができない。
「悪いよ…」
私は君の裾を掴みながら下を向いて、言った。君の顔が見れないほど恥ずかしい。
「気にしないで」
君は私の頭をぽんぽんと優しく叩いた。できれば撫でてほしかったな。
バスがやってくる。私はバスに乗り込むと、できるだけ押されないようにして、後ろにいかないようにした。君を待っているんだよ。
君がバスに入ってくると、私は体にいれてる力を緩めた。少し、後ろに流されてしまうが、君のことはよく見える。
これが、いつもの距離だ。君を見るときはなにかフィルターが無いと、眩しくて見えないのだ。
ガコンッ
「きゃっ」
バスが石を蹴ってしまったのか、バスが揺れた。
「すみません、大丈夫でしたか?」
私は前にぶつかった人に頭を下げると、私の前で君が笑っていた。
「大丈夫だよ」
そう言って、君はつり革を掴んで、前を向いた。
次のバス停につくと、人が入ってくる。運転手に「詰めてお入りください」とアナウンスが流れる。
私は君の背中に顔をうずくめてしまう。とても優しくていいにおいがする。でも、息がきつくなるので、背中合わせになると、君の体温が背中を伝って私に届いてくる 。
続いてほしい。
私は心のなかで願ったが、無理なのは承知。そして、バスは高校の近くにきてしまった。背中が寒くなる、君が離れていくからだ。
私はバスを降りて、周りを見渡すと、いつもの景色が広がっていた。
雨がやんでいる。きっと、集中豪雨だったんだろう。
でも、その集中豪雨は私と君を近づけさせてくれた。
私はいつもの道を歩くいていく。
青空になりかかっている雲の隙間から虹ができていた。私は携帯をとりだし、君と話せたから、記念として撮っておくよ。
「綺麗だな」
君が私の携帯を覗きながら言った。君の顔が近すぎるよ。
「あ、あ、あありがとう」
いつものように噛んでしまう私でも、君のことが大好きです。
雨の日は、心は晴れ模様。