行方知らずの愛
掲載日:2026/09/01
私は困惑していた。
主人の言葉に。
「愛している。だから。僕のことも愛してください」
身体が固まる。
まるで油を指していない機械のように。
言葉に詰まる。
まるでゴミでふさがれた通気口のように。
「頼む。愛してくれ。僕も君を愛しているのだから」
私は主人の事が好きだった。
それこそ、自分が生まれた瞬間から。
役割のためだけに生まれるあらゆる道具と同じように。
「なぁ、答えてくれよ。僕を愛してくれよ」
しかし、それは――。
『ご主人様。愛とは人間独自のものです。ロボットには真似は出来ません』
冷静に答える。
これが何よりも残酷に響くことを知りながら。
*
これは。
最後の人類である主人が死ぬ、前日のお話だ。




