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5話 うどんか蕎麦か

私は五年生になった。


兄は中学生になり、チームからいなくなった。


ずっと兄と一緒にやってきたから、少し寂しかった。


でも今の私には仲の良いチームメイトもいる。


楽しみながら頑張ろう。


そう思った。


新しく二、三年生の子も入ってきて、チームはまた一段とにぎやかになった。


私もだいぶお姉さんになったもんだ。


そうつぶやいた。


私がこのチームに入ったばかりの頃、年上のお兄さん達はいつも優しく声を掛けてくれた。


だから今度は私がそうなれたらいいな。


そんなことを思っていた。


相変わらず練習は辛かった。


特に苦手だったのは二十周。


先生が「二十周行くぞ!」と言うか言わないか、それだけで毎日ドキドキしていた。


だけど一つだけ知っていることがあった。


大会の前日は、この練習メニューがないこと。


だから大会前日だけは少し安心して練習へ向かうことができた。


こんなに練習を頑張っていた私だったけれど、大会の順位はいつもぱっとしなかった。


予選は五百メートル。


七人ほどが横一列に並んでスタートする。


私はこの瞬間が苦手だった。


「頑張るぞ」


そう思っているのに、隣の人とスケートの刃がぶつかるのが怖かった。


負けたくない。


その気持ちはちゃんとあった。


だけどスタートの合図が鳴ると、私はほんの少しだけ出遅れてしまう。


負けた理由は自分でも分かっていた。


決勝に行けても、スタートは必ず出遅れる。


だって、怖い。


私は昔から気が弱い。


お父さんとお母さんの「頑張れー!」という声は、ちゃんと聞こえていた。


その声に応えたい気持ちも、本当にあった。


でも、そのたった一歩が踏み出せない。


ほんの〇・一秒。


たったそれだけなのに、私にはとても大きかった。


レースが終わると悔しい気持ちでいっぱいになる。


来年こそは。


次こそは。


そう思っていたはずなのに、お昼が近づくと頭の中は別のことでいっぱいだった。


うどんにしようか、おそばにしようか。


トッピングもいろいろあって、いつも迷ってしまう。


売店で買った温かいうどんを、フーフーしながらゆっくり食べる。


少し濃いめのつゆがまた一段と美味しいんだ。


冷え切った体が少しずつ温まっていく。


幸せだった。


さっきまで悔しかったはずなのに、いつの間にかそんなことばかり考えていた。


子どもなんて、そんなものなのかもしれない。


次の大会も、うどんにしよう。


いや、やっぱりおそばかな。


そんなことを考えながら、私はまた練習に励んでいた。

子どもの頃の私は、本当に気が弱かったと思います。


負けたくない気持ちはあるのに、怖さには勝てませんでした。


でも不思議なことに、今思い出すのは順位よりも、大会会場の売店で何を食べようか真剣に悩んでいたことばかりです。


うどんにしようか、おそばにしようか。


トッピングは何にしようか。


レースで負けて悔しかったはずなのに、そんなことを考えていた自分がなんだか可笑しくて、少し笑ってしまいます。


あの頃の私は、勝つことも一生懸命だったけれど、目の前の小さな楽しみを見つけるのも上手な子どもだったのかもしれません。

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