1.異世界に転生したけど、世界観がまったくわかりません
【まえがき】
初めての投稿で不慣れなもので読みにくいかと思いますが、でも読んでいただけると嬉しいです!
感想・コメントお待ちしています!
目が覚めたら、目の前にメイド服を着た綺麗な女性がいました。
「アーネ様! ああ、良かった……」
ぱっちりとした目から涙がこぼれそうなぐらいウルウルしてます。
反射的に私は体を起こすが、体中が痛くてうめき声をあげてしまう。
「ああ! ケガをなさっているんですからお休みください」
メイド服の女性は私をゆっくりとベッドに寝かしつける。
「どうですか? ご気分の方はいかがですか?」
心配そうな顔を私に向ける。何歳ぐらいだろう? 20歳ぐらいかな? アイドルのようでモデルのようでもある顔。一言で言えばみんなが好きな綺麗な顔立ちをしている。
でも正直、私は困惑しています。
「あの……どなた様でしょうか?」
メイド服の女性は、ウルウルとした瞳から、大粒の涙をポロポロとこぼす。
「ああ、私の名前を忘れてしまったのですね。そうですよね。あんなことがあれば仕方がありません」
「いやあの、ごめんなさい」
また反射的にメイド服さんに近づこうとするが、体が痛んでベッドに倒れる。
「ああ、私が悲しんだばかりに。私のことなど構わず、今はお体の回復だけを考えてください」
ズレた掛け布団を直してくれる。
ふかふかのベッドに体を沈める。よく見ると掛け布団は豪華な刺繍、ベッドフレームは金細工がほどこされていて豪華だ。
「ゆっくり寝てくださいませ」
そういって私は寝かせようとするが、彼女は誰なのか、彼女の名前はなんていうのか気になる。
「ごめんなさい。あの、名前を教えていただけると……」
「私は『ウメ』と申します。あとアーネ様、私のようなメイドにそのような丁寧な言葉づかいなさらないでください」
なるほど。重要な情報がいっぱいあった。彼女の名前は「ウメ」。古風な名前だけど、それもまた可愛い。そして彼女は“本物のメイドさん”みたいだ。
なにより大切なのは私の名前は「アーネ」らしい。目が覚めたとき、アーネ様と声を掛けられたので誰のことだろうと思ったが、2回その名で呼ばれたということは、私の名前はアーネなのだろう。
どうやら私は転生したらしい。
前世の記憶はおぼろげだけど自分の名前「田口盛夏」だけははっきりと覚えている。8月夏真っ盛りに生まれたから「盛夏」という名前がつけられたらしい。
「アーネ様、骨とか折れてはいないようなのですが、体にダメージが残っていると思います。気分が悪くなったらすぐにお申し付けください」
「骨? なにがあったの?」
「アーネ様が外で散歩していたところ、野生の水牛に跳ね飛ばされて」
「水牛?!」
「まさか野生の水牛が学院に入ってくるなんて想定外でした。もし私がおそばにいたら全力で跳ね返しますのに」
ウメは悔しそうに拳を握る。水牛なんてみたことないけど、私をかばったらあなたも跳ねられちゃうと思うよ。
でも、そういう気持ちが嬉しかった。転生していきなり野っ原に放り出されるのではなく、私を思ってくれる人がいる。
孤独じゃない。
彼女が私のために握った拳を、私は両手で包んだ。
「ありがとうね、ウメちゃん」
ウメちゃんは驚いた顔をして、
「優しいお言葉もったいない! それにウメちゃんだなんて……そんな私とアーネ様は身分が違います!」
「あの、身分とかよくわからないけど、私、ウメちゃんと仲良くなりたいの。私のことはアーネって呼んで」
「そ、それはできません! でも!」
ウメちゃんは私の手を握り返して、
「その気持ち、本当に嬉しいです! ありがとうございます!」
手を握り合ったまま、ちょっと時間が止まった。
えっと、手をどうやったら離したらいいんだろう? タイミングがわからない。
私たちは、ゆっくり、なんとなーく力を抜いて手をほどいていく。
「しばらくお休みください。ご用がありましたら枕元のベルを鳴らしていただければ駆けつけますので」
「うん、ありがとう」
「では、失礼します」
ウメちゃんは扉の音を立てないようにして部屋を出て行った。
私はふかふかのベッドに体を任せる。窓から夕陽が差し、私の体を照らす。
水牛の記憶は無いが、体にダメージは残っている。
目を閉じる。だんだん“前世”の記憶が戻ってきた。体の痛みが前世を思い出させてくる。
私は6人家族の平凡の家に生まれ育った。主な交通機関はバスと単線の電車。正確に言えば電車はディーゼル車でなんか燃料を燃やして動かしているから電車じゃないらしい。なのでおばあちゃんはそれを「汽車」って呼んでる。
つまりそれぐらい田舎ってこと。そこで私たちは暮らしていた。
高校2年1学期の終業式。私たちきょうだいは珍しく3人で帰っていた。
3きょうだいが同じ高校に通っているのも珍しいし、きょうだい揃って帰るのも珍しい。終業式というのもあって、たまたま帰るタイミングが同じだったので一緒だっただけだ。
あと、なぜ3人が一緒に帰らないのかというと“目立つ”からだ。
私たちは「三つ子」なのだ。
長女が私、田口盛夏。長男が田口一郎。次女が田口夕凪。
私と夕凪が一卵生で、一郎は別。「二卵性三つ子」っていうらしい。
で、私が最初に生まれて、次が一郎、最後が夕凪が生まれた。
3人で一緒に帰っていたが、ほとんど会話がなかった。
私が話しかけるんだけど、2人とも「まあ」とか「うん」みたいな返事ばかり。夕凪はちょっと陰キャ入ってるし、一郎は私を突き放してくる。学校で「一郎―!」と声をかけても無視する。可愛がろうとしたら、スッとどこかへ行ってしまう。
友達は「ブラコンだね」っていうけど、弟を可愛がるのは普通でしょ? 妹には……うーん、弟みたいな感じじゃないけど一緒に出かけようとか言ったりする。でも勉強やゲームするからって乗ってくれないけど。
赤信号なので足を止めるが、おのおの別の方を向いている。いつも以上に暑さがこたえる。
その時、小学生たちが私たちの横を走り抜ける。鬼ごっこをしているみたいだ。
その勢いは止まらず、赤信号の横断歩道を渡る。左からトラックが走ってくる。一瞬の出来事だったけど、一気にアドレナリンが出ていたのか全部が把握できた。
次の瞬間、右の影が動いた。
一郎がダッシュして、飛び出した男の子を追いかけ、突き飛ばす。その子は向かいの歩道まで飛んで行った。
男の子は助かった。
でも一郎は助からない。すぐそばまでトラックが来ている。ブレーキも間に合わない。
そう思っている時にはもう私は道路に飛び出していた。剣道で鍛えられた反射神経と瞬発力だ。
そして鍛えられた動体視力。トラックの運転手の驚いている顔が見える。
もうすぐトラックが一郎を轢く。
そんなの嫌だ! 私の可愛い弟がそんなことになるなんて!
体中がシビれるほどのアドレナリンが出るのが分かる。時が止まっているように感じる。
一郎はバランスを崩してこけそうになっている。突き飛ばすだけじゃ間に合わない。
私はトラックと一郎の間にダイブした。
次の瞬間、急激に時間が動き出した。
「姉ちゃ……」
一郎が苦しそうな顔をしながら私を見る。
そこで意識は飛んだ。
そして目を開けたら、うるうる瞳のウメちゃんがいたというわけだ。
その後、また眠りに落ちてどれぐらい時間がたったのだろう? ふと今目覚めた。
私、生きてはいるのかな? 前世の記憶があるから転生したということだと思うんだけど、どこに転生したんだろう?
ベッドや部屋の調度品、私が着ているドレスのようなパジャマからして中世ヨーロッパっぽいけど、ファンタジーの世界みたいだ。
痛む体をゆっくり起こしてぐるっと見まわす。前世の子ども部屋の3倍はある。しかも前世は夕凪と同じ部屋だったから開放感がある。
部屋を探索することにする。前世のトラックの痛みなのか転生先の水牛アタックのせいなのか分からないけど、ちょっと移動するだけでも大変だ。
ダイニングテーブルとして使われそうな大きめのテーブルと、その横に大きな化粧台がある。なんとか化粧台まで行き、椅子に座る。鏡を見て確認したいことがあったからだ。
鏡には、前世の私とはまったく違う顔があった。ちょっとつり目で切れ長。瞳は青く、主張はしないが鼻筋がすらっと綺麗に伸びている鼻。くちびるは薄いが、それが顔のバランスに合っている。なにより胸元まで伸びた青い髪。光の当たり具合でダークになったりライトになったり美しく輝いている。
……すごい! 私の理想の顔だ! そんなことってある?!
前世は、よく言ってタヌキ顔だった。しかもかなり愛嬌のないタヌキ顔。あと剣道部なのにしょっちゅうグラウンドを走らされて肌も焼けていた。
そして左目のまわりにホクロがあるのが嫌だった。左目を真ん中にして三角形の頂点にホクロがあった。それが陰謀論によく出てくるフリーメイソンとか1ドル札に描かれている目のように見えて、よくイジられていた。
そうそう、この左目。プロビデンスの目っていうんだよね。「呪いの目だ!」としょっちゅう言われてたから覚えちゃった。
……え? 鏡に映っている顔、前世の私になってる! よく見たら映っている部屋も、前世の私の部屋だ。夢だったの?
慌てて振り返る。しかしそこは転生先の部屋だった。あ、あのタンスかわいい。
そうじゃなくて。
ゆっくりと鏡を見返す。そこは、前世の私がいた。
――どういうこと?
日は落ち、月明かりが部屋の中に忍び込んでいる。
暗くなって、燭台に火が灯っていることにも気づく。
ええっと。前世と転生が混乱してる? バグってる? 三途の川に行こうと思ったら、私、迷子になっちゃってるとか?
「せ、盛夏?!」
鏡の中の私が、私の名前を呼んだ。私は何も言っていないのに。この鏡は、呪われた鏡?
左目のまわりを触る。呪いってあるのかもしれない。
読んでいただきありがとうございます。
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