7/19
【2】星見の丘と秘密基地
【2】星見の丘と秘密基地
それから、二人はよく遊ぶようになった。
エリの家は古い煉瓦造りで、壁のあちこちに隙間があり、雨が降ると部屋中が濡れた。
母親は病床にあり、薬も買えず、食事は干し肉と芋が交互に並ぶ日々だった。
「……これ、お父さんの靴なの。大きいけど、まだ履けるの」
そう言って見せた靴は、底が剥がれかけていた。
だがエリは、それを恥じなかった。笑った。
「こっちのほうが速く走れる」と誇らしげにすら言った。
彼らには“秘密基地”があった。
王都外れの草地、小さな丘の上。壊れた祠の裏を抜けると現れる、星を見上げるだけの場所。
「ここは、ふたりの国だよ。名前、決めよう?」
「うーん……じゃあ、星の国」
「やだ、それじゃ普通。『アルセリア』ってどう? 星の言葉で“願い”って意味なんだって」
「じゃあ、オレが王で、エリが……」
「女王?」
「……いや、魔法使い」
「……ふふっ、いいね、それ」