表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

ある日の指輪

 僕は三十一歳で、相変わらず絵を描いていた。絵は不思議だとよく思う。色を塗っていて、ここはこうしようと思う時もある。それが上手くいかなかったり上手くいったり·····結局上手くいかないから面白いのだ。最初から上手くいくのだったら小説も詩も何もかもつまらない。



 何かが上手くいくときは、長年の熟慮や、経験の末の研鑽された英知に裏打ちされることになる。



 僕は、天才についてよく考える。天才は、時代を照らす一瞬の光····光は世の中を明るくする。明るくなるので、救われる。




 ある日、僕は外の公園で、辺りをスケッチしていた。と、ある女の子が目に付く。

  



 その子は、髪を短めにしていた。短い髪の先が、そろえてあって、僕は、彼女をなんとなく両義式のように思った。




 けれど、彼女は、おとなしそうに見える。僕はその子のことをこっそりデッサンし、式と名付けた。けれども話すことは、はばかれた。




 僕はその後も時々こっそり、その子のことを描くようになっていった。式は着物なんて着ていない。夏らしい白い、それが空の輝かしい雲のような真っ白なワンピースをよく着ていた。




 その真っ白なワンピースは、描くのが少し難しかった。





 ある日、とうとう僕は思い切ってその子に話しかけることにした。けれどなんて言おうか?




 色々と考えた。そのワンピースはどこで買ったの?とか僕は将来絵を描きたいと思っているんだとか。



 結局、僕は話しかけじまいだった。しょうがない。僕には絵の心得はあっても、度胸がないのだ·····



 家で僕は悩んだ。『直樹は、後悔ってしないの?』そんな父の言葉を思い出した。(ちなみに父は生きている)



 確かに僕はどちらかと言うとのほほんと生きていた。独自の価値観だったし家も僕に緩かった。



 僕にはトゥと名付けた指輪があった。彼女は、僕の相棒で、いつもこの指輪をして僕は外に出ていた。絵の時も一緒だった。




 一度この指輪を外して、絵を描いたことがあるが、妙にノリが悪かった。




 それ以来僕はこの指輪を大事にしていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ